10月の新刊/『田舎のミューズ 他:バルザック芸術狂気選集3』

2010年 10月 15日

e38390e383abe382b6e38383e382afefbc93e69bb8e5bdb1026バルザック芸術/狂気小説選集3
【文学と狂気】

田舎のミューズ 他

加藤尚宏・芳川泰久訳

四六判上製392頁/定価3500円+税
ISBN978-4-89176-793-8 C0397 10月25日頃発売!


すべて新訳となる新シリーズ第3弾!

愛ゆえに真実を捏造する女=作家たち。
吝嗇家の夫との田舎暮らしの虚しさを埋めるため、
詩を書きはじめたディナ。それが話題となり、
批評家ルーストーの愛人となった彼女は、
とうとう夫を捨て、パリへと出てくるが……。
ジョルジュ・サンドを彷彿させるような
女性作家を主人公とした表題作など、
「文学」と「狂気」が交錯する2篇を収録。

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目次
—–
田舎のミューズ(加藤尚宏訳)
ド・カディニャン公妃の秘密(芳川泰久訳)

解説:言語の使用価値を超えて——〈女性=作家〉の誕生

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既刊2冊 も大好評発売中!

 

編集部通信/パリの読書界の話題をさらった「手紙」、まもなく刊行!

2010年 10月 9日

君はもうすぐ82歳になる。身長は6センチも縮み、
体重は45キロしかない。それでも変わらず美しく、優雅で、
いとおしい。僕たちは一緒に暮らし始めて58年になる、
しかし今ほど君を愛したことはない。僕の胸のここには
ぽっかりと穴が空いていて、僕に寄り添ってくれる
君の温かい身体だけがそれを埋めてくれる——。

_

gorz日本ではあまり知られていませんが、
ジャン=ポール・サルトルが
「ヨーロッパで最も鋭い知性」と
評した哲学者/経済ジャーナリスト/
エコロジストのアンドレ・ゴルツが、
2007年9月22日、パリ近郊の
ヴォスノン村の自宅で、長年連れ添った
不治の病の妻とともに自ら人生の幕を閉じました。

ふたりは手を取り合って亡くなっていたのですが、
スキャンダル扱いされることはなく、
その一年前に刊行された
話題作 Lettre à D.(Dへの手紙)が
俄然また注目を浴びることになったのです。

小社刊行予定の『また君に恋をした』はその邦訳版で、
83歳の哲学者アンドレ・ゴルツが、人生を共に歩んだ妻への
オマージュ、感謝の気持ちをこめて書き上げた
「最後のラブレター」であり、「究極の愛の物語」です。

冒頭に引用した美しい文章ではじまり、「僕たちは二人とも、
どちらかが先に死んだら、その先を生き延びたくはない……」という言葉で
締めくくられる本書は、妻への愛惜の情に満ちた語りと
哲学的モノローグが交錯する、きわめて短い作品ですが、
二人の58年間にわたる愛の歴史がずしんと胸に迫ってきて、
読後の余韻がなかなか消えませんでした。

今から18年前にパリ近郊の田舎の家にゴルツ夫妻を
訪れたことのある杉村裕史氏が、
追悼の想いをこめて翻訳した『また君に恋をした』は、
10月下旬に発売予定。四六判変形上製/144頁という、
ちょっと小さめの瀟洒な本で、定価も1500円(税抜)と
お求めやすくなっていますので、
ぜひ本屋さんでご覧になってみてください。(編集部So)

写真: 若き日のゴルツ夫妻、セーヌ河畔にて。(c)éditions Galilée

 

編集部通信/『絵本の子どもたち』その後

2010年 10月 5日

今年4月に『絵本の子どもたち』を刊行してから約半年、
地道ながらも確実に読者が増え、評判をきいて
買い求めるひとが後を絶ちません。
そのようななか、関西の大学生協のかたが本を読んで感動し、
「『絵本の子どもたち』と14人の絵本作家」フェアを企画、
来月あたりから大阪教育大学の生協店舗を皮切りに
展開していくという話も入ってきています。

9月28日発売の『ユリイカ』10月号では、
「子どもをめぐる冒険」と題した、
『絵本の子どもたち』についての著者自身による短いエッセイが、
巻末の「われ発見せり」というコーナーに掲載されました。

そして、九州の『西日本新聞』10月3日付朝刊に、
「ページをめくれば楽しい王国」という見出しで、
歌人の松村由利子氏による素晴らしい書評が載りました。
「電子書籍元年」に『絵本の子どもたち』が出たことの
意義についてふれておられますので、
ぜひご覧になってみてください。こちら→ (編集部 So)


ehon_cover寺村摩耶子著

『絵本の子どもたち 14人の絵本作家の世界』

ISBN 978-4-89176-779-2  C0095
A5判上製320頁+カラー口絵8頁 定価3500円+税
全国書店絵本・芸術書コーナーほかで好評発売中!





子どもの本を舞台に、
美しい作品を作りつづけている絵本作家たち。
14人のクリエイターたちの魅力あふれる世界を
200点以上の絵本をとおしてみつめた
注目の絵本作家論集!
貴重な資料であると同時に、
驚きと楽しさにみちた生のドキュメント。
カラー口絵8頁ほか図版多数収録。

——絵本の森への招待。14の入口——
片山健/長新太/スズキコージ/井上洋介/
荒井良二/飯野和好/たむらしげる/
宇野亜喜良/酒井駒子/沢田としき/
谷川晃一/島田ゆか/南椌椌/木葉井悦子

 

《小島信夫批評集成》全8巻、10月下旬より刊行開始!

2010年 10月 1日

《批評家》小島信夫の誕生——

kojima_collection近年、著しく再評価が進む
稀代の作家・小島信夫(1915 – 2006)。

ほとんどの既刊本が入手困難でありながら、
「小説以上に小説的」と評され、
いまなお熱烈な読者を持つ
彼の《文芸評論/批評活動》に
スポットライトをあて、
その文業を全8巻に集成する画期的な新シリーズ。
小社創立30周年記念出版。


第1回配本は、長らく絶版で復刊が待望されていた
晩年の大著『漱石を読む——日本文学の未来』(初版=1993年)。
詳細な年譜および著作目録を併載し、10月下旬、全国書店で発売予定。

ISBN978-4-89176-818-8 C0395 A5判上製680頁 予価8000円+税

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全8巻ご購読者には、もれなく『小島信夫読本』
(仮題、非売品、50〜60頁予定)をプレゼント!
単行本未収録作品などを収録した必携本です。
詳細は内容見本をごらんください。

*ご希望の方は、80円切手を同封のうえ、
下記の宛先までお申し込みください。
(10月中旬より全国の書店でも配布予定です)

112-0002  東京都文京区小石川 2-10-1-202
水声社営業部・小島信夫係


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小島信夫批評集成 全8巻

編集委員——千石英世、中村邦生、山崎勉(五十音順)


【本集成の特色】


・既刊単行本を定本に、小島信夫の評論・批評を集成する初めての試み。
これによって、批評家、文学理論家としての小島信夫を再発見することが
ようやく可能になります。

・1960年代から晩年にいたるまで、しばしば
「小説以上に小説的」と評された、小島信夫ならではの
文学観・文学論を時系列で俯瞰できる構成です。

・新しい読者の便宜を考慮して、新字新かなを採用します。

・各巻に充実した解説を付し、小島文学への理解を深めます。

・付録月報には各界第一人者によるエッセイを収載。
作家の人間像を浮かびあがらせます。


【体裁】

A5判上製/各巻400〜700頁/予価4,000〜8,000円(+税)

第1回配本=第8巻『漱石を読む』2010年10月下旬刊。
以後、毎月1冊配本、2011年5月に全巻完結予定。


【各巻の内容】


第1巻 現代文学の進退 *第6回配本(2011年3月)


『小島信夫文学論集』(晶文社、1966)
『現代文学の進退』(河出書房新社、1970)
*解説=中村邦生(小説家、大東文化大学教授)


第2巻 変幻自在の人間 *第7回配本(2011年4月)


『小説家の日々』(冬樹社、1971)
『変幻自在の人間』(冬樹社、1971)
『文学断章』(冬樹社、1972)
*解説=都甲幸治(アメリカ文学者、早稲田大学准教授)


第3巻 私の作家評伝(全) *第5回配本(2011年2月)

『私の作家評伝 I』(新潮社、1972)
『私の作家評伝 II』(新潮社、1972)
『私の作家評伝 III』(新潮社、1975)
*解説=千石英世(批評家、立教大学教授)


第4巻 私の作家遍歴 I/黄金の女達 *第2回配本(2010年11月)

『私の作家遍歴 I /黄金の女達』(潮出版、1980)
*解説=保坂和志(小説家)


第5巻 私の作家遍歴 II /最後の講義 *第3回配本(2010年12月)


『私の作家遍歴 II /最後の講義』(潮出版、1980)
*解説=宇野邦一(哲学者、立教大学教授)


第6巻 私の作家遍歴 III /奴隷の寓話 *第4回配本(2011年1月)


『私の作家遍歴 III /奴隷の寓話』(潮出版、1981)
*解説=阿部公彦(英文学者、東京大学准教授)


第7巻 そんなに沢山のトランクを *第8回配本(2011年5月)


『そんなに沢山のトランクを』(創樹社、1982)
『原石鼎』(河出書房新社、1990。増補新版、1992)
『X氏との対話』(立風書房、1997)
*解説=堀江敏幸(小説家、早稲田大学教授)


第8巻 漱石を読む *第1回配本(2010年10月)


『漱石を読む』(福武書店、1993)
+書誌・年譜=柿谷浩一(近代日本文学、早稲田大学助手)
*解説=千野帽子(文筆家)

 

9月の新刊『わが先行者たち』

2010年 9月 21日

senkosha001栗原幸夫

わが先行者たち——文学的肖像

四六判上製/466頁/定価4500円+税
ISBN978-4-89176-803-4 C0095  9月24日ごろ発売!


危機の瞬間にひらめく回想——。
自在な《精神の運動》による戦後文学/思想史の軌跡



編集者として、批評家として、あるいは
べ平連やAA作家会議のアクティヴィストとして。
埴谷雄高、中野重治、堀田善衞ら《戦後》という時代を協働した、
こよなき《先行者たち》への批評/オマージュを集成する。
【附・著者による自筆略年譜】


[本書で描かれる先行者たち]——埴谷雄高,  中野重治,  本多秋五,
堀田善衞, 平野謙,  竹内好,  竹中労,  小田切秀雄,  内村剛介,
田木繁,  久野収,  野間宏,  小田実,  国分一太郎,  由井誓,  好村冨士彦,
貝原浩,  小山清,  高見順,  三島由紀夫,  深沢七郎……



栗原幸夫(くりはらゆきお)  1927年、東京生まれ。
編集者として週刊読書人、日本読書新聞、三一書房などを舞台に活躍し、
本多秋五『物語戦後文学史』(読売文学賞)、旧版『堀田善衞全集』など
数々の名著を企画編集。運動家としても、べ平連の脱走兵支援運動(JATEC)や、
アジア・アフリカ作家会議などの中軸をになう。また、
批評家/研究者として『プロレタリア文学とその時代』『肩書きのない仕事』
『歴史の道標から』など、多くのすぐれた著作を刊行している。

 

編集部通信:短歌×偽アメリカ文学

2010年 9月 21日

img_2340去る9月19日、日曜日の早朝午前6時から放送された
『NHK短歌』にアメリカ文学者で早稲田大学准教授、
都甲幸治さんがゲスト出演されました。
選者は歌人で小説家の東直子さん。
おふたりを中心に、投稿歌をめぐってあれこれ語りあったり、
都甲さんの好きな一首(寺山修司!)について紹介したりと、
なんともバラエティに富んだ内容でした。
じつはこの番組、はじめて観ましたが、とても落ち着いた、それでいてユニークな番組でした……
不勉強おゆるしを!

img_2342そして、昨年弊社から刊行された都甲さんの初の単著
『偽アメリカ文学の誕生』も、濱中博久アナウンサーが、
がっつり紹介してくださったのでした。
(さすがNHK、弊社の名前は出ませんでした。ははは)
来る22日(水曜)午後2時半から再放送もあるそうです。
見逃した方はぜひテレビの前にかじりつくか、録画の準備を!

なお、6月からはじまった都甲さんのブログはこちら(→)。
都甲さんのますますの活躍に乞うご期待です!(編集部 Naovalis)

 

『水の音の記憶』書評

2010年 9月 7日

去る6月に刊行された結城正美さんの初の評論集、
『水の音の記憶—-エコクリティシズムの試み』が、
9月5日づけ読売新聞の書評欄「本よみうり堂」で
紹介されました。評者は文化人類学者の今福龍太さんです。
「エコクリティシズム」というアメリカ発の批評の方法論について
詳細にその意味を語りながら、

「未知の言語論であり、あらたな政治活動(アクティヴィズム)へも
結びつく可能性を持った、静かだが、戦闘的な文学批評宣言の書である」


と本書を高く評価していただきました(全文はこちらから→)。
今福さん、ありがとうございました。

田口ランディ、石牟礼道子、森崎和江、T・T・ウィリアムス、
G・アーリックたちの表現をとおして、自然や動物といった《環境》と
人間は、いかにして語り合えるのか、《共生》しうるのか。
その文学的な実践を試みた、いま、もっとも重要なテーマを論じた
1冊ともいえそうです。

小社では、今後もエコクリティシズムの関連書を刊行していく予定です。
ぜひご声援を! (編集部 Naovalis)


mizuno_cover結城正美

水の音の記憶——エコクリティシズムの試み

四六判上製/272頁+別丁図版1葉/定価3000円+税
ISBN978-4-89176-790-7  C0095  好評発売中!


エコクリティシズム宣言!



文学表現は、はたして《環境》と共生しうるのか?
田口ランディ、石牟礼道子、森崎和江、T・T・ウィリアムスらの
再読を通して検証される、《人 – 自然》の新たな結びつき。
瑞々しい感性が放つ、鮮烈な環境文学論の誕生。

 

夏期休暇のお知らせ

2010年 8月 6日

いつも弊社刊行物にご注目くださり、誠にありがとうございます。

勝手ながら弊社では、8月11日(水)から15日(日)までのあいだ、
夏期休暇をいただき、16日(月)から通常営業とさせていただきます。

下半期もがんばって良書を刊行して参りますので、
なにとぞご理解賜りますよう、お願い申しあげます。



ことしは、日本から四季の移ろいというものが、
失われていくのではないか—-というような毎日がつづき、
この夏も連日、全国各地で酷暑の表情が伝えられていますが、
みなさま、なにとぞご自愛ください!(N)

 

編集部通信:8月7日はバナナの日

2010年 8月 5日

banana_cover4月末の刊行以来、各紙誌で好評をいただいている、
黒木夏美さんの『バナナの皮はなぜすべるのか?』
このかんお知らせしてきましたように、
まず共同通信で全国の各地方紙に配信されたのですが、
その後も日経新聞、読売新聞()、朝日新聞()、
公明新聞(作家の久間十義さんによる評)、
『アエラ』『週刊朝日』等々と各紙誌の書評面を席巻し、
話題をさらって参りました。

さらに、来たる8月7日土曜日は記念すべき「バナナの日」
ということで、TBS系列で毎週土曜日放送の大人気情報番組、
『王様のブランチ』の雑学コーナー「ジャックと豆知識」でも
本書をご紹介していただけることになりました。

書評コーナーではないところが、これまたなんとも、
本書の持ち味を発揮しているといえますねー f(^_^;

この本を読んでもダイエットは期待できませんが、
この世知辛い現代社会で《笑い》の大切さに気がつくこと請け合いです。
8月7日土曜、午後の部(12〜14時)で放映予定。
ぜひともご覧になってみてください!(編集部 Naovalis)

 

書評『〈殺し〉の短歌史』

2010年 7月 29日

koroshi_cover-2単なる「死」ではなく、
単なる「事件」でもない。
もっぱら「殺し」という「事件」にこだわり、
「殺し」をキーワードとして
近現代の短歌や歌人を読み解く
異色の論集が、現代短歌研究会編の
『〈殺し〉の短歌史』
です。


編者名義の現代短歌研究会とは、戦後の短歌批評を
その尖端で担った故菱川善夫氏が中心となり、
結社を越えて若手の歌人や研究者が結集した研究会です。
そのかれらの活動の成果の総決算である本書について、
さっそく各紙で続々と書評・紹介が掲載されて、
歌壇・短詩の世界を確実に席巻しつつあります。

◎毎日新聞(7月11日付)歌壇「詩歌の森へ」
「〔本書における短歌とは〕つねに時代の最先端の空気を敏感に
感受するべきものという考えで、刺激的な事件である〈殺人〉をはらむ
社会との関係を問うという斬新な試みである」(酒井佐忠さん)


◎朝日新聞(7月19日付)歌壇「短歌時評」
「引用されている短歌を読んでいるだけで、歌人がどれくらい
〈殺し〉好きかがわかる。執筆陣も〔……〕多彩で比較的若い世代に
及んでいることを特筆しておくべきだろう」(田中槐さん)


◎北海道新聞(7月18日付)歌壇「書棚から歌を」
「〔本書所収の秋本進也論文は〕南満州鉄道(満鉄)設立に
関与したといわれる〔夢野久作の父・杉山〕茂丸の裏面を、
久作が注視した歌群だという仮説を提示した。
新鮮で、鋭利な猟奇歌論の登場と思う」(田中綾さん)



現代短歌研究会 編

〈殺し〉の短歌史

A5判上製280頁/定価2800円+税
ISBN978-4-89176-787-7  C0095  好評発売中!

殺すくらゐ 何でもない
と思ひつゝ人ごみの中を
濶歩して行く
——————(夢野久作)

短歌というメディアは、いかに《時代》と切り結んできたのか?


1910年の大逆事件から、第2次世界大戦、前衛短歌、
戦後の政治運動を経て、21世紀の無差別連続殺人事件に
いたるまで、この100年におよぶ〈殺し〉の近現代を、
短歌という《方法》によって剔抉する。
《短詩型新時代》の旗手たちによる稀有な成果。

執筆:田中綾、谷岡亜紀、松澤俊二、森本平、
中西亮太、福島久男、秋元進也、田中拓也、森井マスミ、
大野道夫、川本千栄、黒瀬珂瀾、三井修

 

イベント情報『美術館・動物園・精神科施設』刊行記念

2010年 7月 28日

museum美術家にして批評家の白川昌生さんによる最新刊、
『美術館・動物園・精神科施設』刊行を記念して、
新宿にある 模索舎 さん主催のイベントが開催されます。
現代アートの病理を容赦なく剔抉し、
酷暑に冷気を呼び込むことが予測される
ユニークなセッションとなることまちがいなし。
日曜夕方からではありますが、ふるって足をお運びください!



対談 《帝国》の時代のアート

白川昌生さん(美術家)×イルコモンズさん(元美術家)

日時:8月1日(日曜) 18時〜

場所:Cafe★Lavanderia
(東京都新宿区新宿2-19-9広洋舎ビル1階)
◎ワンドリンク制

主催:模索舎(03-3352-3557)

 

7月のイベント/トークセッション

2010年 7月 5日

以下の2つは、いずれもジュンク堂書店池袋本店でおこなわれます。
くわしいインフォメーションはこちら(→)。
いずれも白熱のセッションが期待されます。ふるって足をお運びください!

*  *  *

(1)白川昌生『美術・動物園・精神科施設』刊行記念イベント

生きるための/治療としての/批判としての芸術


日時:2010年7月10日(土)19:00〜
講師:白川昌生(美術家)×毛利嘉孝(社会学者)

概要:グローバル化した現代世界のなかで、芸術も市場主義の舞台から
おりることは不可能になっている。近代芸術が市場・投機と共犯する形で
形成されてきた歴史のなかで、今日、芸術に何が可能か、
人は芸術に何を求めるのか? 社会的動物としての
人間の存在理由そのものを問い直しつつ、人間のサバイバルの可能性、
危機意識のなかの芸術の可能性を熱くかたる。

プロフィール:
白川昌生(しらかわよしお)
1948年生まれ。美術家。群馬県立女子大学講師。
主な著書に『美術、市場、地域通貨をめぐって』、『美術・記憶・生』、
『美術・マイノリティ・実践』(すべて水声社)などがある。

毛利嘉孝(もうりよしたか)
1963年生まれ。東京芸術大学音楽学部音楽環境創造科准教授。
社会学(カルチュラルスタディーズ)専攻。
主な著書に『ポピュラー音楽と資本主義』(せりか書房)、
『ストリートの思想』(NHK出版)などがある。

会場——4階喫茶にて。入場料1,000円(ドリンクつき)
定員——40名(残席わずか!)
ジュンク堂書店 池袋本店
TEL.03-5956-6111



(2)『クリスチャン・ボルタンスキーの可能な人生』刊行記念イベント

ボルタンスキーは語る  生、死、記憶、喪失そして芸術について

日時:2010年7月16日(金)19:00〜
講師:クリスチャン・ボルタンスキー×松浦寿夫

瀬戸内国際芸術祭での「心臓音のアーカイヴ」のために
来日するクリスチャン・ボルタンスキー。
今月中旬には弊社から自伝が刊行されるのを記念して、
幼年時代、家族のこと、1960年代から今日までの
彼の芸術的軌跡、そしてこれからの活動について、
世界のアートの動向にてらしながら、存分に語り尽くします。
対話者には、美術批評家として、画家として、
多方面で活躍中の松浦寿夫さんをお招きします。

プロフィール:
クリスチャン・ボルタンスキー
1944年パリに生まれる。芸術家。

松浦寿夫
1954年東京に生まれる。東京外国語大学外国語学部教授。
美術批評家。主な著書に『村山知義とクルト・シュビッタース』(共著)、
主な訳書に『クリムトとピカソ、1907年』(すべて水声社)などがある。

会場——4階喫茶にて。入場料1,000円(ドリンクつき)
定員——40名(満員御礼!)
ジュンク堂書店 池袋本店
TEL.03-5956-6111


クリスチャン・ボルタンスキ—+カトリーヌ・グルニエ
佐藤京子 訳

ボルタンスキ—の可能な人生

A5判上製/320頁/定価4500円
ISBN978-89176-789-1   C0070 7月中旬発売!

 

書評『第二の手』

2010年 7月 5日

三月に刊行されました『第二の手、または引用の作業』
(アントワーヌ・コンパニョン著/今井勉訳)の書評が
相次いで掲載されました。各媒体のみなさま、
どうもありがとうございます!(編集部 ka)

→今福龍太氏(7月4日付『読売新聞』)
「引用という行為を手がかりに『書くこと』の意味と歴史に
迫ろうとした刺戟的な論考である」


→土田知則氏(7月10日付『図書新聞』)
「誰かがやり遂げなければならなかった作業。〔……〕
『引用』という複雑なプロセスを精査する際、この書物は間違いなく、
類例なき指針として役立ち続けることになるだろう」



secondhandアントワーヌ・コンパニョン 今井勉訳

第二の手、または引用の作業

四六判上製/576頁/定価8000円+税
ISBN978-4-89176-774-7 c0098 絶賛発売中

 

6月は新刊ラッシュ!

2010年 6月 21日

今月の水声社は新刊ラッシュです。
すでに刊行されていながらブログでご紹介するのが
遅れていたものも含めて、計10冊!

ついに全10巻が完結した《ヘンリー・ミラー・コレクション》や、
待望の《シュルレアリスムの25時》第3回配本などシリーズものをはじめ、
文学批評から短歌論まで、以下にずらっと取り揃えましたので、
お目にとまった《この1冊》がございましたら、ぜひぜひ、
おなじみの書店/ネット書店でお買い求めください。(編集部 Naovalis)

 

編集部通信:バナナの本はまだすべるのか?

2010年 6月 16日

banana_coverバナナというフルーツに
関心のある読者はもちろん、
お笑い関係者や映画関係者のみならず、
古今東西の文献からの圧倒的
かつ豊富な引用の実例によって、
ブッキッシュな読者をも驚愕のズンドコに……
もとい、ドン底におとしこんだのが、
黒木夏美『バナナの皮はなぜすべるのか?』

な、なんと、おかげさまでよもやの重版決定!
(とはいえ、最小ロットではありますが)。
担当編集者も目と耳と心を疑っております。

これまでご紹介の労をとってくださった各紙誌、
そしてブログやツィッター等ウェブで広めていただいた
みなさまのおかげです。ありがとうございます。。。
すでにご注文いただいていたお客様のお手許にも、
もうすぐ届きますので、いましばらくお待ちください。
まだお買い求めいただいていないかたは、
ぜひともお気に入りの書店/ネット書店へ、
じゃんじゃんと注文をお寄せください。

……とアップしたら、今週末(20日付)
朝日新聞の書評欄でも紹介されるとの報が!
お楽しみに!




さて、このかんも6月7日発売の『アエラ』誌に
小さいながらとてもユニークな 書評 が掲載され、
また、8日付の静岡新聞朝刊の名物コラム「大自在」では、
本書にことよせて、菅政権の趨勢(!?)が論じられました。
(リンク切れながらその一部はこちら→

banana_hokkaiそして去る13日には、
北海道新聞文芸面のコラムで、
北海学園大学准教授で
歌人の田中綾さんが、本書を
紹介してくださりました
左の画像をクリック)。

著者の黒木さんが俳人でもあるせいか、
本書には、バナナの皮をめぐる短歌や俳句も
ふんだんに引用されているのですが、
田中さんが着目したのは、会津八一のもの。

わがすてしバナナのかはをながしゆくしほのうねりをしばしながむる


田中さんはこの歌を「瀬戸内海のうねる潮が、
小さな黄色い皮をダイナミックにのみこんでいった光景への
感嘆だろう」と解釈していますが、その色と音が聞こえてくるような、
じつに色彩感あふれる名評ですね。田中さん、ありがとうございました。



ちなみに、その田中綾さんも主要な執筆者のひとりである、
『〈殺し〉の短歌史』(現代短歌研究会編)も、
今月末、6月25日ころの配本予定で現在印刷・製本中です。
この本は、100年前の大逆事件から、第2次世界大戦、
60/70年安保、前衛歌人、そして21世紀のアキバ事件まで、
日本の近現代史のさまざまな〈殺し〉を詠んだ短歌をめぐって、
《短詩型新時代》の旗手として活躍中の歌人や研究者たちが、
縦横に論じまくった1冊です。

詳細は近日中にこのブログでご紹介いたしますが、
こちらも『バナナの皮〜』に負けず劣らずの奇書(!?)として、
ぜひともご注目ください。(編集部:Naovalis)

 

編集部通信/不況でも みんなですべれば こわくない 5・30は バナナ記念日

2010年 6月 4日

banana_cover去る5月30日、日曜。

すでにお読みになったかたも多いとは存じますが、
はからずも全国紙2紙の書評面を飾ってしまったのが、
「バナナの皮ですべるギャグ」だけで250ページを埋め尽くした
世界初の本、黒木夏美さん(web「本の中のキートン」管理人)
『バナナの皮はなぜすべるのか?』です。


読売新聞(本よみうり堂)には、左ページ上段にどかんと書評が。
評者は既成の文学史を積極的に読み直している黒岩比佐子さん
タイトルからイロモノ的に見なされがちではあるけれども、
じつは硬派な本書の魅力を、あますところなく伝えてくださいました
黒岩さん、ありがとうございました!

「本よみうり堂」ウェブ版はこちら(→
黒岩さんのブログ(→



nikkei001いっぽう、日本経済新聞 の読書面。
「あとがきのあと」というインタビュー欄に、
著者の黒木さんが近影入りで登場しました。
本書のモティーフはもちろん、
「救いようもなく暗い一面がある人間社会には、
一隅を照らすような愉快なギャグが必要だ」

という持論を展開しています。
「書評より取材を〜」と言って、
著者の在住する中国地方まで足を運んでくださった、
文化部のTu さん、ありがとうございました!



さらに、ほかのメディアに先駈けて、
いち早く本書の紹介記事を全国に配信してくださったのが、
共同通信 の Ta さん。おかげさまで日本全国津々浦々の地方紙に
順次掲載されています。弊社に届いている紙面を列挙すると……

【共同通信配信分】
5月15日付 岩手日報
16日付 中国新聞
22日付 沖縄タイムス
23日付 神奈川新聞
〃  福井新聞
〃  河北新報
〃  上毛新聞
〃  秋田魁新報
〃  山陰中央新報
〃  宮崎日日新聞
〃  新潟日報
30日付 東奥日報
〃  岐阜新聞
〃  山形新聞
〃  南日本新聞  (以上、順不同)


ほかにもあるのかも? Taさん、ありがとうございました!



おかげさまで現在は品薄状態が続いており、
各書店さまにはご迷惑をおかけしていますが、
まだ一部書店・ネット書店には店頭在庫がありますので、
ぜひともお買い求めいただければ幸いです。

巷では「すべらない話」がもてはやされている昨今、
そんな風潮に叛旗をひるがえさんとして(?)、
帯にも麗々しく「絶対、すべる」と謳ってみたのですが、
「すべらない本」、いえいえ、「すべりしらずの本」となりますよう、
なにとぞお力添えをお願いいたします!(編集部 Naovalis)


黒木夏美

バナナの皮はなぜすべるのか?

A5判並製252頁/定価2000円+税
ISBN978-4-89176-777-8  C0095 大好評発売中!

——–
もくじ
——–
夜の終わりに
バナナの皮で笑うわけ
バナナの皮は誰かの手製
バナナの涙
世界に冠たるバナナの皮
お笑いに王道あり
永遠のお約束
バナナの皮の文学史
戦前日本のバナナの皮
アメリカ喜劇映画の神々
バナナの皮がギャグになるまで
バナナの皮の罪と罰
ストップ・ザ・スリップ
バナナの皮のモラル
踏み出す一歩
あとがき

 

編集部通信/世界も認める すべりっぷり

2010年 5月 21日

banana_cover一部の好事家の頬をニヤリとゆるませる本として、
密やかに話題を呼びつつある〈奇書〉が、
4月末に満を持して刊行された、
黒木夏美著『バナナの皮はなぜすべるのか?』です。

このタイトルのためにしばしば誤解されるのですが、
本書は、バナナにかこつけて処世術を解いたノウハウ本でも、
はたまたバナナの皮でのすべりかたを、
科学的物理的に検証した本でもありません。

ある日、本当にバナナの皮が道端に落ちているのをみた著者が、
古今東西の映画、コミック、文学作品、インターネットをくまなく検索、
有史以来、最も有名かつ普遍的な「バナナの皮ですべる」という
ギャグの由来と現在をひたすら調べまくった労作なのです。
徹頭徹尾、バナナの皮とそのギャグだけで、
250ページになんなんとする誌面を埋めた、
世界ではじめての本!
——と言うことができましょう。

banana_0515_iwateこのような著者の営為を広く世に知らしめるため、
まず共同通信さまが「気になるこの本」として配信してくださり、
すでに『岩手日報』(5/15日付=左の画像=クリック)、
『中国新聞』(5/16付)などなどに掲載されました。

さらに今月末には、いわゆる4大紙の1紙に
著者インタビューが掲載される予定
になっています。
*さらに 5月30日付読売新聞の書評が追加になりました!
思わぬところから取材や書評掲載のオファーが舞い込んできており、
バナナの皮の中毒患者は、確実に、じわりじわりと増えつつある情勢です。

たとえ2日分の夕飯をバナナにしてでも
いちどは手にしてみたくなる本、『バナナの皮はなぜすべるのか』
ちなみにカバーはあのロックの名盤のパロディです。

まだ未読のかたがいらっしゃったら、
ぜひお買い求めいただければ幸いです。(編集部 Naovalis)


黒木夏美

バナナの皮はなぜすべるのか?

A5判並製252頁/定価2000円+税
ISBN978-4-89176-777-8  C0095 大好評発売中!


もくじ
夜の終わりに
バナナの皮で笑うわけ
バナナの皮は誰かの手製
バナナの涙
世界に冠たるバナナの皮
お笑いに王道あり
永遠のお約束
バナナの皮の文学史
戦前日本のバナナの皮
アメリカ喜劇映画の神々
バナナの皮がギャグになるまで
バナナの皮の罪と罰
ストップ・ザ・スリップ
バナナの皮のモラル
踏み出す一歩
あとがき

 

編集部通信/『暗闇の楽器』の反響その1(編集部 So)

2010年 5月 10日

libro1今年は寒い春が続いていたのに、
このところ急に初夏の陽気。
天候に恵まれたGWを戸外で
ゆったりと過ごされた方も多いのでは。
私も久々に原稿やゲラと格闘する世界から離れ、
数日間、自転車で都内散策に出かけました。
ついでに書店も行けるだけ覗いてきましたが、
最新刊の『暗闇の楽器』が大型店では
目立つところに平積み・山積みされていました!
(左上の写真は池袋リブロの新刊台のコーナー、
その下のポップ付きは青山ブックセンター本店です)

少し驚いたのは、「フランス文学」なのに、
「アメリカ文学」に分類している書店が多かったこと。
書店員さんも忙しくて、「ナンシー・ヒューストン」という
著者名に惑わされ勘違いしたのかも。
これと逆のケースが昨秋刊行したアナイス・ニンの『人工の冬』で、
アメリカ文学なのに「フランス文学」と分類している書店が結構ありました。
これも早稲田大学の都甲幸治さん式に言うならば、
ナンシー・ヒューストンは「偽フランス文学」で、アナイス・ニンは
「偽アメリカ文学」だからこそ起こる勘違い現象なのかもしれません。

aoyamabc それはともかく、刊行後間もないのに、
連休が明けると『暗闇の楽器』を
さっそく読んだという方々から
次々と感想が寄せられてきました。
みなさん、担当者の私も驚くほど、
すごく核心をついた読み方をされているので、
ここに一部紹介させていただくと——




「……物語の凄さに圧倒されています。本当にこの著者は、
言葉を選び抜き、音楽や光の使い方が卓越していますよね。
ナダの名前の由来など、小さなエピソードがとにかく魅力的。
読みはじめから物語にからめとられました。
『時のかさなり』もすばらしかったですが、この『暗闇の楽器』も、
今年のベスト1になりそうな勢いです」
(東京在住YMさん)

「連休初日に『暗闇の楽器』を本屋さんで見つけて、
ちょうど連休中に読み終えました! とても面白かったです。
小説内に複数の声がわんわんと響いていて、でもそれは
すべて一人の作家(ナンシー・ヒューストンまたはナディア)のものであり。
……となにか気の利いた感想を書こうとしたのですが、
とてもたくさんのものを抱え込んでいる小説で、
一回ではとても読み切れなかった気がします。
時間と空間を超えて一人に収斂する複数の声、という意味で
『時のかさなり』と似たものを感じ、私にとってはそこが面白いポイントでした。
とにかくこういう、内容以前に、「小説」という器を意識した作品はすごく好きです。
今さらフィクションを書くならこういうふうにしてもらわないとって思います。
でもそれを変な実験的作品にせず、小説としての見事な完成度でもって仕上げてしまう
ナンシー・ヒューストンはますます気になる作家になりました。
以前に出た『天使の記憶』も読んでみようと思います。
でも翻訳するのはすごく難しい小説のように思いました。特にナディアのパート。
西洋人の女の人の独り言は日本語にしてしまうと
どうもエキセントリックで現実ばなれしてしまう。
「復活のソナタ」のパートは情景が強烈に残ります。
特にバルブが子どもを産み落とす章は迫真の筆致ですごい。
ここだけもう一回読み返してしまいました。
それにしてもこれが高校生に支持されるって、
フランスの高校生はレベル高いですね……。
どういうことなんでしょう?」
(東京在住AYさん)

「女性が直面する生きづらさという重いテーマを扱っているにもかかわらず、
物語性の豊かさと確かな筆力によって手に汗にぎる思いで読了し、
(帯の「絶望そして希望の物語」そのものの)見事なラストに感嘆しました
(訳文もこなれていて読みやすかった)。
この本に巡り会えて本当に良かったと心から感謝しています。
まず、作家の「わたし」(ナディア)の日常と、
「わたし」が執筆中の小説「復活のソナタ」が
交互に配置されるという構成が素晴しい。
次に三人のヒロイン(小説での17世紀のバルブ、
ハンガリー系のヴァイオリニストで「わたし」の母エリザ、
そして「わたし」)を通して、女性だけが背負う諸問題
(妊娠と出産、レイプ、中絶、避妊、魔女裁判など女性への偏見、
結婚して放棄せざるをえないキャリア、家事労働の空しさ、
夫の浮気と暴力 etc.)と真正面から向き合う見事な覚悟に胸打たれます
(その意味で、角田光代〔『対岸の彼女』『八日目の蝉』など〕の先達といえる)。
母語ではない仏語で書く作家で、双子が登場する小説というと、
やはりアゴタ・クリストフ(『悪童日記』三部作)を想起しますが、
天才型のクリストフに対し、こちらは秀才型か。
また、明快で率直な描写や物語性の豊かさから、
ジョン・アーヴィングなどのアメリカ文学の系譜を感じました」
(鎌倉在住YS氏)

「『暗闇の楽器』、読み終えました。
緊密な構成の作品ですね。「おんな」の肉体と精神と心の
激しいぶつかりのせいで、床が地震のように大きくゆれ
(実際は、自分自身がゆれているのですが)、めまいを感じました。
否定的な意味合いをもつNではじまる名前のNadiaが、
自分には「わたし」がないということで、
Nada(無)と自分自身のことを呼びかえる記述には、
どきりとしました。最後には主体をとりもどして、
Nadiaという名前に戻るのですが、
そこに関与しているのは母親の存在を意識したことでした。
この結末は、身につまされてよくわかる箇所でした。
ナンシー・ヒューストンも否定的なNではじまる名前です。
この世のあらゆるネガティヴなものを集結させた結果、
作家の心に転化が生じたようです。
女性が創作すると、男性が創作するよりも、
自然な転化がおこるということを
目の当たりにしました。ヒューストンには無理がありません。
彼女は今後もいい作品を多く書いていくことでしょう」
(大阪在住MKさん)

 

編集部通信/偽アメリカ文学の実践 その3

2010年 4月 23日

すでに4月16日から開催されている、紀伊國屋書店新宿南店のフェア、
《村上春樹をめぐる冒険》(→)には、もう足をお運びいただいたでしょうか?

imageもちろん、村上春樹の新作、
『1Q84』第3巻がメインなわけですが、
弊社刊『偽アメリカ文学の誕生』
著者であり、最近は読売新聞の書評委員としても
活躍中の早稲田大学准教授、
都甲幸治さんが選書した棚も併設中なのです。
そこでさっそくフェア初日にお邪魔したのですが……。

その『偽アメリカ文学の誕生』も、
者サイン入り、フェア特製手書き帯つきで並んでますね。

そしてさらに、

image2おおっ、すごいことになってます。

「村上春樹 × 都甲幸治」!!

今回のフェアは、村上春樹の本を通して、
1984年の時代背景に迫ったり、
ハルキ文学の源泉ともいうべき
内外の作品もふんだんに揃えているところが
ユニークなのですが、もうひとつの大きな特長、
それは海外文学の原書、つまり洋書と邦訳の併売でしょう。

たとえばサリンジャーの『ライ麦畑』。
いろんな翻訳で親しんできましたが、
原書にまで手を伸ばすことがあまりなかったかも?
今回のフェアでは、都甲さんがチョイスした
すぐれた翻訳とその原書が一緒にならべて販売されています

6階の広い売り場面積を擁した洋書に強みをもつ、
新宿南店さんならではのこの大胆な試みも、
洋書ご担当の舟木さん、仕入れ担当の桐生さん、
おふたりの非常に熱心なお力添えとバックアップがあってのこと。
都内近郊にお住まいのみなさん、
ぜひともこのフェアに足を運んでみてください!
ほんと、本好きにはたまらない売り場になってますよ。

ちなみに、新宿南店さんのサイトでは
都甲さんのひと言コメント付きでブックリストを掲出中です(→)。
(編集部 Naovalis)

 

編集部通信/『暗闇の楽器』続報

2010年 4月 19日

e69bb8e5bdb1先月6日に速報でお伝えした、
ナンシー・ヒューストンの話題作『暗闇の楽器』の発売日が
いよいよ迫ってきました。なかには待ちきれないでいる
読者のかたもいらっしゃるのでは?
著者についてはご存じのかたも多いと思いますが、
ここでもう一度紹介し、さらに、『暗闇の楽器』の原著が
フランスで刊行されたときに各紙誌に掲載された
書評/讃辞の数々を抜粋してみることにします。(編集部So)




ナンシー・ヒューストンは、1953年、カナダのアルバータ州カルガリーに
生まれる。英語を母語としてカナダやアメリカ合衆国で教育を受け、
20歳のときにパリに留学、ロラン・バルトに師事する。
以後フランスに住み、79年にはツヴェタン・トドロフと結婚、
フランス語と英語の双方で活発な執筆活動を続けている。
81年に長篇『ゴルトベルク変奏曲』でデビューして以来、
93年の『草原讃歌』(カナダ総督大賞受賞)、96年の『暗闇の楽器』
(高校生が選ぶゴンクール賞受賞)など、これまで十一の小説を発表、
それ以外にも数多くのエッセイ・評論、子供向けの作品等を書いている。
そのうちすでに邦訳があるのは、『愛と創造の日記』(晶文社、1997年)、
『天使の記憶』(新潮社、2000年)、『時のかさなり』(新潮社、2008年)
の三作で、2008年秋には来日講演をおこない、話題をよんだ。


この独創性あふれる小説は、読む人の心をおののかせ、揺さぶる。
読者は、数世紀もの時の隔たりを超えて収斂するふたつの運命を
ともに生きる。果たして、双子のバルブとバルナベは、
ナディアの心の悪魔を祓うことができるのか?
この素晴らしい作品を読了後、その答えが明らかになる。
——Lire(リール誌)

ナンシー・ヒューストンが奏でる魂を貫くような哀しみに満ちた音色が、
きらめく愛情によって癒されてゆく。明晰で才能あふれる名演奏は、
聴く人の琴線をかき鳴らし、その心を捉えて離さない。
——L’Express(レクスプレス誌)

闇に覆われた冒頭と光に満ちたラストのあいだで、
ふたつの人生が火打ち石のようにぶつかり合い、火花を放つ。
ここに、彼女の小説の美しさがある。
——Magazine Littéraire(マガジン・リテレール誌)

読者は、あたかも小説家の創造の現場に入り込んだかのように、
ふたつの楽譜のあいだにある秘められた結びつきを目の当たりにして、
感嘆の念を禁じえない。本書で、ナンシー・ヒューストンは
巧妙な驚くべき錬金術を披露する。バルブとナダは
相手を根本から変えてしまうほどの影響力を発揮するが、
そのときふたりの女性は読者の想像を超える姿で立ち現れるのだ。
——Télérama(テレラマ誌)

小説家は魔女。非現実的なものを実在させる魔法の力を持っている。
人生は虚構によって、より現実になる。
(インタヴューに対する著者自身の言葉)
——Centre France Dimanche(サントル・フランス・ディマンシュ紙)

ナンシー・ヒューストンは、人が楽器で聴かせてくれるものを言葉で表す。
この小説でいえば、ひとりの女がつぶやくと、その哀しい繰り言が
もうひとりの女の胸に木霊(こだま)する。
反抗と怒りの歌、だが同時にそれは愛の歌でもある。
ささやかな瞬間を積み重ねることによって、
私たちは暗闇のただ中を前進することができるのだ。
——Elle(エル誌)

双子と魔法を描き、怒りに満ちた明晰な内省を連ねたこの本は、
何よりも文学的創造の秘密を解き明かしてみせる。
そして書くことは、現実を意味あるものにし、
書き手の落胆、怒り、疑念を癒す唯一の方法であると結論づける。
——Les Echos(レ・ゼコー紙)