7月2014のアーカイヴ

3月の新刊:《水声文庫》『贈与としての美術』

2014年 7月 30日

贈与としての美術=カバー贈与としての美術

白川昌生

46判上製/224頁/定価2500円+税

978−4−8010−0036−0 C0070 好評発売中

装幀=宗利淳一

「市場」とともにうまれ、ともに成長し、いまや商品として貨幣と交換されるものとして流通している美術作品が、美術作品と認められる判断基準は何なのか。芸術作品、芸術活動においてはいわゆる「名品」、「有名なもの」だけが価値をもつのか。またその価値はどのように形成されるのか。
美術作品が商品であるとともに贈与でもあることを、未開社会のクラ交換、モースの「贈与論」、シュタイナーの経済理論等によりながら解き明かし、現在の腐朽した美術、美術界のあり方を根底から問い直す。

【著者】
白川昌生(しらかわよしお) 1948年北九州市戸畑にうまれる。国立デュッセルドルフ美術大学卒業(マイスター)。美術作家。群馬県立女子大学、前橋工科大学等講師。主な著書には『日本のダダ1920-1970』『美術、市場、地域通貨をめぐって』『美術館・動物園・精神科施設』『西洋美術史を解体する』などがある。

【白川昌生の本】
西洋美術史を解体する 1800円+税
美術館・動物園・精神科施設 2800円+税
美術・記憶・生 2500円+税
美術、市場、地域通貨をめぐって 2800円+税
白川昌生 ダダ、ダダ、ダ  2500円+税
美術・マイノリティ・実践 2500円+税
日本のダダ 1920-1970(編著) 3800円+税
フィールド・キャラバン計画へ(共著) 2500円+税
村山知義とクルト・シュヴィッタース(共著) 2500円+税

 

2月の新刊:『ベケットのアイルランド』

2014年 7月 30日

ベケットのアイルランド

川島健

A5判上製/272頁/定価=4000円+税

ISBN978-4-8010-0014-8 C0098 好評発売中

装幀=齋藤久美子

《ベケットにとってアイルランドは常に戦いの場であった》

ベケット作品において繰り返し描かれる果てなき彷徨、そして逡巡。その原点は故郷アイルランドにあった。様々な信条とイデオロギーが交錯する場、誰のものでもなく、したがって誰のものにもなりえる空間=「無人地帯」をキーワードに、初期作品群に刻まれたアイルランドの相貌の変化を追う。

《本書の目的はベケットのテクストを、アイルランドをめぐる様々な言説の中に位置づけ分析することである。青年から中年へと歳を重ねるベケットの軌跡と20世紀前半のアイルランドの歴史を交錯させるとき、そこに浮かび上がるアイルランドは確固たる対象としては現れない。時と場所の変化が同じものの異なる側面を提示するように、ベケットの描くアイルランドも刻々と変化する。ベケットのアイルランドの相貌の変化を写しとり、現実のアイルランドの変化に重ねあわせることが本書の方法である》(序章より)

【目次】
序章
はじめに
アイルランド英語のポリティックス
イェイツの民族主義批判
無人地帯

第一部 ダブリン
第一章 境界線の女たち
ベケットの女たち
娼婦たちのダブリン
膿だらけの街――「愁嘆の詩 Ⅰ」
都市という身体――「血膿 Ⅰ」と「夕べの歌 Ⅲ」
公的空間と私的空間

第二章 越境するクーフリン
『マーフィー』のアイルランド
ダブリンのパブリックアート
クーフリン像とイェイツ
ダブリン中央郵便局
四肢硬直のクーフリン
ロイヤルパークの夜
国家を語る擬人法

第二部 言葉の場所
第三章 ダンテ、ジョイスについて語るということ
モダニズムの言葉
ダンテの「高貴な俗語」
「わたしたち」の言葉
文語としての俗語
言葉の帰属
ジョイスを語るということ
詩的言語の場所

第四章 翻訳の不協和音
翻訳されなかった言葉
言葉の無能な使い手
“He War”
不協和音
言葉への二重の背き

第五章 本当の名前と翻訳可能性
ベケットと命名
「薔薇」と「薔薇」
「タイプ」と「名前」
「ディーダラス」と「ダイダロス」
「罪」と「罰」
「敬虔」と「憐憫」
「ベラックワ」と「ベラックワ」

第三部 どこでもない場所
第六章 アイルランドを描くこと
アイルランドの国民文学
プルーストの統一性
オケイシーの本質と二次的要素
イメージの詩学――ジャック・B・イェイツの小説
小さな国の芸術――ジャック・B・イェイツの絵画
Nowhere

第七章 廃墟の存在論
廃墟
リュテス闘技場
ルシヨン
サン・ロー
仏語へ
人間の条件
「わたしたち」と「彼ら」
「わたし」と「わたしたち」

終章

註/サミュエル・ベケット年表/あとがき

【著者について】
川島健(かわしまたけし) 1969年、東京都生まれ。東京大学大学院にて博士号取得。ロンドン大学ゴールドミス校にてMPhil取得。現在、広島大学准教授。専攻、英文学、演劇学、比較文学。
主な著書に、『サミュエル・ベケット!』(共編著、水声社、2012年)、『ベケットを見る八つの方法』(共編著、水声社、2013年)、訳書にジェイムズ&エリザベス・ノウルソン『ベケット証言録』(共訳、白水社、2008年)などがある。

【関連書】[価格税別]
ベケットを見る八つの方法――批評のボーダレス 岡室美奈子・川島健編 4500円
サミュエル・ベケット!――これからの批評 岡室美奈子・川島健・長島確編 3800円
ベケット――果てしなき欲望 アラン・バディウ 西村和泉訳 2000円

 

2月の新刊:『ジョルジュ・ペレック伝』

2014年 7月 30日

ペレック伝ジョルジュ・ペレック伝――言葉に明け暮れた生涯

デイヴィッド・ベロス

酒詰治男訳

A5判上製/784頁/定価=12000円+税

装幀=宗利淳一

978-4-8010-0026-1 C0098 好評発売中

言葉=文学に賭けた小説家ジョルジュ・ペレックの奇妙な工作文学の軌跡

『物の時代』、『煙滅』、『W』、『人生 使用法』など、革新的作品を発明した小説家ジョルジュ・ペレック。フランス防衛のために闘った父親の戦死、アウシュビッツ=ビルケナウでの母親の死に終世とり憑かれることになった苦悩。滑稽かつ憎みがたき謙虚な生活、芸術と戯れる日々……不遜にして博識なるペレックの作品の誕生に迫る。1994年、「ゴンクール伝記賞」を受賞した、ペレック評伝の決定版!

【目次】
日本語版への序文

読者への案内

Ⅰ 一九三六-一九六五年
1 名前
2 ルバルツフ、ルブリン、ウィーン
3 ペレックとペルシャ湾
4 ベルヴィルとパッシー
5 フランスの瓦解
6 ヴィシー=アウシュヴィッツ
7 ヴィラール=ド=ランス 一九四一-一九四五年
8 オテル・リュテシア 一九四五年
9 アソンプシオン通り 一九四五-一九四八年
10 エタンプ 一九四九-一九五二年
11 門戸開放 一九四八-一九五二年
12 夢想と決断 一九五二-一九五四年
付録 ブレヴィの書籍 ヒーザー・モーヒニーの研究に基づく
13 ティルト
14 手綱つき 一九五五-一九五六年
15 落ち込み 一九五六年
16 音楽、絵画およびよき忠告 一九五六-一九五七年
17 実生活 一九五七年
18 サラエヴォ事件 一九五七年
19 パラシュート降下兵G・ペレック 一九五八年
20 一貫性とパウル・クレー 一九五九年
21 全線 一九五九-一九六〇年
22 ガスパール・ヴァンクレールとは何者「だった」のか
23 キャトルファージュ通り 一九六〇年
24 スファックス 一九六〇年十月-一九六一年六月
25 研究室のペレック 一九六一-一九七八年
26 「パルティザン」誌 一九六二年
27 大冒険 一九六二年
28 『物の時代』 一九六四年
29 初めての賞 一九六五年
付録 『物の時代』 「足取り」

Ⅱ 一九六五-一九七五年
30 ノーネクタイで 一九六五-六六年
31 スファックスへの回帰 一九六六年
32 天国 一九六六年
33 バック通り 一九六六年
34 ザール河畔のウリポ 一九六六年
35 ペレックのファッション 一九六六-六七年
36 セーヌ河畔のウリポ 一九六七年
37 全方位 一九六七年
38 ラジオ・ペレック 一九六七-六八年
39 頓挫 一九六七-一九六八年
40 想像力の支配 一九六八年
41 幸せ 一九六八年
42 安全な場所 一九六八-一九六九年
43 後退 一九六九年
44 時間の制約 一九六九年
45 ぼくは思い出す 一九七〇年
46 犬のようだ 一九七〇-七一年四月
47 分散した一年 一九七一-七二年
48 アヴニュ・ド・セギュール 一九七二年
49 シモン=クリュベリエ通り 一九七二年
50 ロケ 一九七三年
51 ウザルトュニロック 一九七三年
52 M/W 一九七四年
53 リンネ通り 一九七四-七五年
54 カトリーヌ 一九七五年夏

Ⅲ 一九七五-一九八二年
55  作家業
56 見え隠れ
付録 一九七六年の内容見本
57 装置の検分
58 友人と交際
59 『人生 使用法』
60 軌道への発射
61 映画の仕事
62 ブランコに乗ったアクロバット芸人
63 詩人ペレック
付録 麗しき現存
64 オーストラリアでの五十三日
65 ロベール・セルヴァル殺し
66 「死ぬまでになすべきことども」



図版 出典一覧

ジョルジュ・ペレック作品一覧

ペレック作品の索引

人名索引

訳者あとがき
【著者】
デイヴィッド・ベロス (David Bellos) 1945年、英国に生まれる。マンチェスター大学でフランス語を教える。フランス19世紀の作家たち、とりわけオノレ・ド・バルザックに関する多くの論文に加えて、ジョルジュ・ペレックの主要作品――『人生 使用法』、『物の時代』、『Wあるいは子供の頃の思い出』、『五十三日』――の英訳をてがける。1997年以来、米国プリンストン大学教授。1999年には映画作家ジャック・タチの伝記も刊行している。

【訳者】
酒詰治男(さかづめはるお) 1944年、東京に生まれる。甲南女子大学文学部名誉教授。専攻フランス文学。主な著書に、『文学をいかに語るか』(共著、新曜社、1996)、主な訳書に、ペレック『人生 使用法』(水声社、1992/2013)、ペレック『家出の道筋』(水声社、2011)、ペレック『Wあるいは子供の頃の思い出』(水声社、2013)などがある。

【ペレックの作品】
『人生 使用法』 酒詰治男訳 5000円+税
『Wあるいは子供の頃の思い出』 酒詰治男訳 2800円+税
『家出の道筋』 酒詰治男訳 2500円+税
『煙滅』 塩塚秀一郎訳 3200円+税
『さまざまな空間』 塩塚秀一郎訳 2500円+税
『美術愛好家の陳列室』 塩塚秀一郎訳 1500円+税
水声通信6号《ジュルジュ・ペレック》 1000円+税
小誌 風の薔薇5号《ウリポの言語遊戯》 1500円+税

【書評】
ジョルジュ・ペレックの生涯にとりつくのに、だれがどうやってこの使用法よりもうまくやってのけられるのか想像しにくい。
————ギルバート・アデア(「サンデー・タイムズ」紙)

ベロス教授の書物は、ペレック〈作品〉の意図して奇妙奇天烈な側面を賞味させてくれると同時に、変幻自在なその性質の理由といわれを理解させてくれる。
————ジョナサン・ロムニー(「リテラリー・レヴュー」誌)

ひとつの時代、ひとつの状況の再現として貴重な読み物。
————塩塚秀一郎(「図書新聞」2014年6月14日付)

 

2月の新刊:『シュタイナー教育基本指針 Ⅰ』

2014年 7月 30日

シュタジャケ入稿シュタイナー教育基本指針 Ⅰ

ライナー・パツラフ+クラウディア・マッキーン+イーナ・フォン・マッケンゼン+クラウディア・グラー=ヴィティッヒ

入間カイ訳

四六判上製/240頁/定価2500円+税

978−4−8010−0022−3 C0037 好評発売中

装幀=齋藤久美子

ドイツのヴァルドルフ(シュタイナー)学校連盟と幼稚園連盟が共同編集のうえ出版した乳幼児教育のための基本指針。現在子どもたちをとりまく環境はさまざまな問題をかかえている。シュタイナー教育が日本に紹介されて40年がすぎた今日、ヴァルドルフ教育が、学校、幼稚園・保育園での実践としてのみではなく、人びとの自律性と創造性を高めるために何ができるのか。日本独自の指針を創っていくための必読書。

【目次】
はじめに/第1部 教育的基礎と目標設定/第2部 乳幼児期の発達とその促進/第3部 乳幼児保育における教育的実践/第4部 保育施設運営のための条件/付録 3歳未満の子どもを受け入れる施設のための品質指標/参考文献/本書の理解を深めるために 今井重孝/訳者あとがき

【著者】
クラウディア・グラー=ヴィティッヒ(Claudia Grah-Wittich) ソーシャル・ペタゴーグ。フランクフルト=ニーダーウルゼルの教育施設〝デア・ホーフ〟にて父母に対するコンサルティングおよび乳幼児支援を行う。さまざまな地域で乳幼児教育のための成人教育講座の講師も務めている。本書第4部執筆担当。
イーナ・フォン・マッケンゼン(Ina von Mackensen) 乳幼児領域におけるヴァルドルフ保育者。ベルリンの保育所/ヴァルドルフ幼稚園プレンツラウアー・ベルク、ベルリン・ヴァルドルフ幼稚園ゼミナール講師。本書第3部執筆担当。
クラウディア・マッキーン医学博士(Dr. med. Claudeia McKeen) 一般内科専門医。園医/校医。シュトゥットガルト・ヴァルドルフ幼稚園ゼミナール講師。本書第2部執筆担当。
ライナー・パツラフ教授(Prof Dr. Rainer Patslaff) ボン近郊アルフタ―のアラヌス大学にて「子ども時代教育」を教える。シュトゥットガルト・イプスム研究所所長。本書第1部執筆担当。

【訳者】
入間カイ(いるまかい) 1963年、鎌倉市に生まれる。現在、那須内海学園那須みふじ幼稚園理事長・園長。一般社団法人日本シュタイナー幼児教育協会〔http://jaswece.org/〕代表理事。ゲーテアヌム医学セクション外部研究員。主な著・訳書に『三月うさぎのティータイム』(南方新社)、『これからのシュタイナー幼児教育』(春秋社)、『小児科診察室』(グレックラー/ゲーベル共著、水声社)などがある。

【シュタイナー教育の本】
小児科診察室 シュタイナー教育・医学からの子育て  4000円+税(改訂版準備中)
乳幼児のためのシュタイナー保育  2500円+税
シュタイナー学校は教師に何を求めるか  2000円+税

 

2月の新刊:《ヘンリー・ミラー・コレクション》『友だちの本』

2014年 7月 30日

友だちの本_書影ヘンリー・ミラー・コレクション⑬
友だちの本

中村亨+本田康典+鈴木章能訳

 A5上製/392頁/定価=4000円+税

978-4-8010-0003-2 C0398 好評発売中

装幀者=宗利淳一
 

堂に入った名人の語り――不届千万、愉快適悦、智慧超衆。………………エリカ・ジョング

 晩年のミラーはなかば失明に近い状態にありながら、憑かれたように『友だちの本』の執筆を急いだ。やつぎばやに刊行された『友だちの本』(一九七六)、『わたしの自転車とその他の友だち』(一九七八)、『ジョーイ、我が人生におけるほかの女性たち』(一九七九)の三冊の本は、ミラー没後七年目にして、『友だちの本 三部作』として刊行された。
友だちのおかげで生き延びることができたと語るミラーの墓碑銘としての回想録。幼少期から最晩年までの友人や想い人を色鮮やかに描く。


【訳者について】
中村亨(なかむらとおる)  一九六六年、京都市に生まれる。中央大学教授。主な著書に、『ヘンリー・ミラーを読む』(共著、水声社、二〇〇七年)などがある。
本田康典(ほんだやすのり)  一九三八年、熊本市に生まれる。宮城学院女子大学名誉教授。主な著書に、『D・H・ロレンスとヘンリー・ミラー』(北星堂、一九九四年)、主な訳書に、ヘンリー・ミラー『北回帰線』(水声社、二〇〇四年)などがある。
鈴木章能(すずきあきよし)  一九六七年、豊橋市に生まれる。甲南女子大学教授。主な著書に、『真理を求めて――アメリカ文学・文化を読む』(共編著、開成出版、二〇〇三年)などがある。

【関連書】
第一期 ヘンリー・ミラー・コレクション 全10巻 セット定価=34100円+税
第二期 ヘンリー・ミラー・コレクション⑭ 母 小林美智代訳 定価3000円+税

 

2月の新刊 :《フィクションのエル・ドラード》『対岸』

2014年 7月 30日

対岸=カバー対岸

フリオ・コルタサル

寺尾隆吉訳

装幀=宗利淳一

 

四六判上製/184頁/定価=2000円+税

978-4-89176-954-3 C0397 好評発売中

 
空気のように軽いコルタサルの文章は、強烈な力で吹きつけて我々の心にイメージと幻影をかき立てる。(オクタビオ・パス)

 ボルヘスと並ぶアルゼンチン代表作家による幻の処女短編集。
怪奇・幻想的な作品からSF的想像力を遺憾なく発揮した作品まで、フィクションと現実のあいだで戯れる珠玉の13編。
短編小説というジャンルとテーマについて持論を披瀝した貴重な講演「短編小説の諸相」もあわせて収録。

【著者】
フリオ・コルタサル(Julio Cortázar) 1914年、ベルギーのブリュッセルに生まれ、1984年、パリに没した。1918年、両親とともにアルゼンチンへ戻り、幼少から読書三昧の日々を送る。1937年から45年までの地方教員時代を経て、すこしずつ詩や短編小説の創作を手掛けるようになる。1951年、短編集『動物寓意譚』を発表した後にパリへ移り、以降『遊戯の終わり』(1956年)、『秘密の武器』(1959年)、『すべての火は火』(1966年)などの短編集を書き続けた。1963年発表の『石蹴り遊び』でラテンアメリカ文学のブームに合流し、多くの作家と親交した。1960年代後半以降は、キューバの革命政府を積極的に支持し、ニカラグアのサンディニスタ民族解放戦線を支援したほか、軍事独裁政権反対運動に加担したが、晩年まで『愛しのグレンダ』(1980年)、『ずれた時間』(1982年)などの秀作を書き続けた。

【訳者】
寺尾隆吉(てらおりゅうきち) 1971年、愛知県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了(学術博士)。現在、フェリス女学院大学国際交流学部准教授。専攻、現代ラテンアメリカ文学。主な著書には、『フィクションと証言の間で――現代ラテンアメリカにおける政治・社会動乱と小説創作』(松籟社、2007年)、『魔術的リアリズム――20世紀のラテンアメリカ小説』(水声社、2012年)、主な訳書には、セルヒオ・ラミレス『ただ影だけ』(水声社、2013年)、フアン・カルロス・オネッティ『別れ』(水声社、2013年)などがある。

好評発売中! (価格税別)
【フィクションのエル・ドラード】
ただ影だけ セルヒオ・ラミレス 2800円
孤児 フアン・ホセ・サエール 2200円
境界なき土地 ホセ・ドノソ 2000円
別れ フアン・カルロス・オネッティ 2000円

【コルタサルの作品】
すべての火は火 2300円

 

1月の新刊:『北アイルランドのインターフェイス』

2014年 7月 30日

北アイルジャケ入稿new2北アイルランドのインターフェイス

佐藤亨 写真・文

A5判上製/144頁/定価2500円+税

978−4−8010−009−4 C0031 好評発売中

装幀=齋藤久美子

北アイルランドの首都ベルファスト。プロテスタント系住民とカトリック系住民の住む地域の境界、いわゆる「インターフェイス」といわれる場所は公園であったり、ときに道路、交差点などであったりするのだが、その対立の場であり交流の場ともなっている「インターフェイス」の両義性をとおして北アイルランド紛争の現状を考察する。2011年から1年間、当地に滞在した著者が、合意、和平をめざす地元の人々との交流から、その社会・歴史・文化を多数の写真で読み解く。
【目次】
一枚の写真から――序にかえて 第1章 分断社会(1)南北アイルランド(2)武装組織の現在(3)二項対立 第2章 インターフェイス(1)「インターフェイス」とは(2)インターフェイスの成立(3)インターフェイスの特徴 アイデンティティ/オレンジ・マーチ/コミュニティの表象(4)ベルファストとピース・ウオール 第3章 ケース・スタディ (1)アードイン(2)ショート・ストランド(3)タイガーズ・ベイとニューイントン(4)アレキサンダー・パーク 終章 増えつづけるインターフェイス(1)和平プロセス(2)追いつめられるプロテスタント(3)プロテスタント系労働者のアイデンティティ危機(4)対話に向けて 主要引用文献 地図 あとがき
【著者】
佐藤亨(さとうとおる) 1958年、一関市にうまれる。青山学院大学大学院文化研究科博士後期課程満期退学。現在、青山学院大学教授。専攻、アイルランド地域・文化研究。主な著訳書に『異邦人のふるさと「アイルランド」――国境を超えて』(新評論、2005年)、『北アイルランドとミューラル』(水声社、2011年)、『ギリシャ劇と能の再生』(共編著、水声社、2009年)、シェイマス・ディーン『アイルランド文学小史』(共訳、国文社、2011年)等がある。

【佐藤亨の本】
北アイルランドとミューラル 2500円+税
ギリシャ劇と能の再生 4000円+税

 

1月の新刊:『ヌーヴェル・ヴァーグの全体像』

2014年 7月 30日

ヌーヴェルヴァーグ書影ヌーヴェル・ヴァーグの全体像

ミシェル・マリ

矢橋透訳

四六判上製/280頁/定価=2800円+税

ISBN978-4-8010-0015-5 C0074 好評発売中

装幀=齋藤久美子

1950年代末のフランス、旧来の映画製作の常識を根底から覆す「新しい映画」が続々と出現した。
その担い手となったのは、ゴダール、トリュフォー、シャブロル、ロメールといった若き映画監督たち、そしてアンナ・カリーナ、ジャン=ポール・ベルモンド、ジャン=ピエール・レオーら気鋭の役者陣であった……。
映画史上未曾有の大変動=革命《ヌーヴェル・ヴァーグ》。
誰もが知っているようで知らないその実態とは、いかなるものであったのか?
時代背景、経済状況、撮影技術、美学、監督、俳優・女優……さまざまな側面からこの映画革命の真相/深層に迫る、最良の概説書。

【目次】


第一章 ジャーナリスティックなスローガン、新世代
一 『エクスプレス』のキャンペーン
二 映画批評誌のほうへ
三 ラ・ナープルでの討論集会
四 誕生の日付
五 陰鬱なる「若きアカデミー」
六 1958年におけるフランス映画、現状一覧

第二章 批評的コンセプト
一 批評的流派
二 アレクサンドル・アストリュックによるマニフェスト
三 フランソワ・トリュフォーの攻撃文書
四 脚色の理論
五 『アール』の「一面記事」
六 作家政策
七 アメリカ映画というモデル
八 ひとつの「芸術流派」としてのヌーヴェル・ヴァーグ

第三章 製作・配給方法
一 経済的コンセプト
二 「システム外」製作の二本の低予算映画
三 経済的好調
四 補助金を受ける映画
五 超大作映画の告発
六 自主製作された映画
七 三人のプロデューサー
八 新旧世代の映画の興行成績比較

第四章 技術的実践、美学
一 ヌーヴェル・ヴァーグの美学
二 作家=監督
三 装置としてのシナリオ
四 脚本テクニックとしてのエクリチュールとの関係性
五 スタジオからの解放と場の再発見
六 録音・録画テクニック
七 編集
八 同時音声

第五章 新しいテーマと身体――登場人物と訳者
一 マリヴォーダージュと「サガンぽさ」
二 作家たちの世界
三 新しい世代の俳優たち
四 ヌーヴェル・ヴァーグの女優陣

第六章 国際的影響関係、今日に残る遺産
一 先駆的運動
二 ヌーヴェル・ヴァーグの外国への影響
三 ヌーヴェル・ヴァーグ、前衛映画、実験映画
四 運動の歴史的帰結、今日のヌーヴェル・ヴァーグ
五 作品の永続性
六 生誕50周年において

注/参考文献/訳者後記

【著者】
ミシェル・マリ(Michel Marie) 1945年生まれ。フランス国家博士(芸術学)。パリ第三大学教授。専攻、映画史。おもな著書に、『サイレント映画』(Le Cinéma muet, Cahiers du cinéma, 2005)、『ゴダールを理解する』(Comprendre Godard, travelling avant sur À bout de souffle et Le Mépris, Armand Colin, 2006)、『映画における大いなる倒錯者たち』(Les Grands pervers au cinéma, Armand Colin, 2009)、ジャック・オーモンらとの共著に、『映画理論講義』(武田潔訳、勁草書房、2000年)などがある。

【訳者】
矢橋透(やばせとおる) 1957年生まれ。筑波大学博士(文学)。岐阜大学教授。専攻、フランス文学、表象文化史。近年の著訳書に、『演戯の精神史』(水声社、2008年)、『〈南仏〉の創出』(彩流社、2011年)、ミシェル・ド・セルトー『ルーダンの憑依』(みすず書房、2008年)、ジャック・デリダ『留まれ、アテネ』(みすず書房、2009年)などがある。

【書評】
1950年代の映画界、新たな批評潮流、制作・配給システムから技術、美学の変容、新しいテーマや俳優たち、今日に残る遺産まで、未曽有の映画運動―革命の全体像が明らかに。(『出版ニュース』2014年3月中旬号)
著者マリは個々の作品の考察はむしろ控えめにし、映画人の自覚と矜持、彼らの多彩な表現に通じるものに目を向ける。「ヌーヴェル・ヴァーグの全体像」では脚光を浴びる以前の40年代の映画状況から、〝新しい波〟後も製作の炎を燃やし続けた半世紀近い彼らの足跡をたどっている。(林進一、『岐阜新聞』2014年3月22日付)
「ヌーヴェル・ヴァーグの全体像」では、特に映画の経済的側面、新旧世代の興行成績の比較も含め、起こったことの意味を多角的に伝えていく。(筒井武文、『フリースタイル』26号、2014年4月)
ミシェルは「経済的技術的な語りの力」で読む者の目から鱗を落としてくれる。その感触は、理論書や評論本の類よりもむしろヌーヴェル・ヴァーグ映画そのものに近い。あの「勝手にしやがれ」や「大人は判ってくれない」のようにリアルで、軽やかなスピード感があり、簡潔かつ具体的で、コクがあり、情熱もたっぷりだ。(渡辺幻、『キネマ旬報』2014年5月下旬号)
映画を撮ろうとする者の前に広がるのは、もはや処女地ではなく、無数の作品で埋め尽くされた賑やかで混沌とした風景なのである。その風景をしっかりと見据えることで、彼らは新たな道を切り拓いた。映画を撮ることが、映画を観て論じることと切り離せなくなった時代において。(谷昌親『図書新聞』2014年6月28日)

【関連書】[価格税別]
フランソワ・トリュフォーの映画  アネット・インスドーフ/和泉涼一+二瓶恵訳 4800円
トリュフォーの映画術  アンヌ・ジラン編/和泉涼一+二瓶恵訳 5000円
ロベール・ブレッソン研究  淺沼圭司 4000円
タルコフスキイの映画術  アンドレイ・タルコフスキイ/扇千恵訳 2500円
キェシロフスキ映画の全貌  マレク・ハルトフ/吉田はるみ+渡辺克義訳 3000円
ふたりのキェシロフスキ  アネット・インスドーフ/和久本みさ子+渡辺克義訳 3000円
ジーン・セバーグ  ギャリー・マッギー/石崎一樹訳 3500円
FBI vs. ジーン・セバーグ  J・R・ラーソン+G・マッギー/石崎一樹訳 2500円
フィルム・スタディーズ  グレアム・ターナー/松田憲次郎訳 2800円
ロシア・アヴァンギャルドの映画と演劇  岩本憲児 3000円

【矢橋透の本】[価格税別]
劇場としての世界 3500円
仮想現実メディアとしての演劇 4000円
演戯の精神史 2500円
世界は劇場/人生は夢 2800円(共著)

 

1月の新刊:『ウーリカ ある黒人娘の恋』

2014年 7月 30日

ƒE[ƒŠƒJƒWƒƒƒP’¼‚µウーリカ ある黒人娘の恋

クレール・ド・デュラス夫人

湯原かの子訳

四六判上製/104頁/定価=1500円+税

装幀=齋藤久美子

978-4-8010-0017-9 C0097 好評発売中

悲しいかな、私はもはや
誰にも属していなかったのです。
私は人類すべてに対して
異邦人だったのです!

18世紀、フランス革命のさなか、パリの貴族社会で愛に焦がれ、「悲恋」に存在を賭した黒人少女の、異色の愛の告白小説。
「内面は白人貴族として成長したにもかかわらず、シャルルへの恋をきっかけに自分の肌の色と黒人奴隷という出自を意識せざるをえなくなったウーリカの、外面と内面の乖離。〔……〕どこにも自分の場を見出せない永遠の異邦人としての宿命。いくら問いかけても答の得られない、この世の不条理と神の沈黙。ウーリカの苦悩と絶望、心を蝕む病理は、まさに20世紀の実存主義や精神分析を先取りしている、といっても過言ではない。」(訳者解説より)

【著者】
クレール・ド・デュラス夫人(Mme Claire de Duras) ブルターニュ地方の由緒ある貴族を父に、マルティニク島の富裕な一族出身の女性を母に、1777年、ブレストで誕生。女子修道院の寄宿学校で教育を受けるが、フランス革命期にルイ16世の処刑に反対した父が革命裁判所で死刑判決を受け、母とともに海外で亡命生活を送る。革命終結後、ルイ18世に仕えるデュラス公爵と結婚、王政復古後はサロンの中心的人物となり、スタール夫人やシャトーブリアンらと親しく交遊、みずからも創作活動に従事する。1828年歿。主な作品に、『ルイ16世の思索』、『エドゥアール』、『オリヴィエまたは秘密』、『サン=ベルナールの僧侶』、『ソフィーの日記』、『不可触賤民』、『アメリとポリーヌ』などがある。本書は、フランス文学において有色人種の女性を主人公にした最初の作品として、近年、再評価が著しい。

【訳者】
湯原かの子(ゆはらかのこ) 上智大学仏文学科卒。九州大学大学院、上智大学大学院を経てパリ第Ⅳ大学文学博士号取得。フランス文学・比較文学専攻。上智大学他非常勤講師。評伝作家。主な著書に、『カミーユ・クローデル――極限の愛を生きて』(朝日新聞社、1988)、『ゴーギャン――芸術・楽園・イヴ』(講談社、1995)、『絵のなかの生』(ミネルヴァ書房、2003)、『藤田嗣治――パリからの恋文』(新潮社、2006)、主な訳書に、テレーズ・ムールヴァ『その女(ひと)の名はロジィ――ポール・クローデルの情熱と受苦』(原書房、2011)などがある。

 

1月の新刊:《フィクションの楽しみ》『バルバラ』

2014年 7月 30日

バルバラバルバラ

アブドゥラマン・アリ・ワベリ

林俊訳

四六判上製/184頁/定価=2000円+税

装幀=宗利淳一

978-4-8010-0016-2 C0097 好評発売中
 
沈黙と苦痛に声を与える。
ジブチ文学の本邦初紹介。

死ぬ前に証言する、
消滅する前に書く。
植民地時代の悪弊、帝国主義列強の支配、氏族独裁主義の迷妄と内紛……
血塗られたジブチの歴史的悲劇、混迷する日常のなかで格闘する、ワイス、ディレイタ、ヨニス、アナブら4人の若者の抵抗を描く実験的心理小説。

【著者】
アブドゥラマン・アリ・ワベリ(Abdourahman A. Waberi) 1965年、ジブチ(当時はフランス領ソマリ海岸)の首都ジブチに生まれる。1985年、フランス政府の給費留学生として内地に赴き、カーンおよびディジョンに在住。しばらく教職に就いたのち、1994年、処女作『影のない国』(ベルギー王立アカデミー・フランス語圏文学大賞およびパリのアルベール・ベルナール賞受賞)、1996年、『遊牧民手帳』(アフリカ文学大賞受賞作)発表の頃から作家生活に入る。フランス語圏のポストコロニアル文学の旗手のひとり。ル・クレジオはノーベル賞受賞受諾スピーチをワベリに献呈した。『トランジット』(2003)、『アフリカ共和国』(2006)、『涙の通り道』(2009)など多数の作品が、すでに英語、ドイツ語等に翻訳され、高い評価を受けている。

【訳者】
林俊(はやしたかし) 1950年、広島県三原市に生まれる。通訳、翻訳業。日本文藝家協会会員。著書に、『アンドレ・マルロオの「日本」』(中央公論社、1993)、『小松清 ヒューマニストの肖像』(共著、白亜書房、1999)、編著に『藤尾龍四郎作品集』(ギャラリー毛利、1995)、訳書に、イエルーン・ブラウワーズ『うわずみの赤』(水声社、2001)などがある。

【林俊の本】
うわずみの赤 イエルーン・ブラウワーズ 1800円+税