3月の新刊:メランコリーのゆくえ――フロイトの欲動論からクラインの対象関係論へ
2019年 3月 29日 コメントは受け付けていません。
メランコリーのゆくえ
フロイトの欲動論からクラインの対象関係論へ
藤井あゆみ(著)
判型:A5判上製
頁数:251頁
定価:4500円+税
ISBN:978-4-8010-0419-1 C0011
装幀:西山孝司
3月25日頃発売!
フロイトに欲動論の更新を迫り、クラインの対象関係論に寄与したメランコリー研究。その理論的変遷を、アーブラハムとラドーを介すことで初めて克明に描出し、メランコリーを昇華へと導く理路を拓く。
私の中に他者がいる。その他者は私をつねに監視し、批判する。私はこの目に見えない批判に怯え続けている。一方で、私はまるでその他者に乗り移られたかのように、その他者と同じ目線で外界にいる他者を攻撃し、非難する。私はこの〈内なる他者〉に依存しながら生きている。〈内なる他者〉、すなわち「良心」とも呼べるような批判的機能が「正常に」働いているうちは、健康な心の生活を送っていくことができる。しかし、その攻撃性があまりに強くなると、人はうつ病ないしは躁うつ病といった心の病を患ってしまうのではないだろうか。(本文より)
【目次】
序論
1 研究動機および目的
2 先行研究の整理
3 本書の構成
4 メランコリーの概念史概観
5 フロイトのメランコリー論
第1章 欲動の対象から内的対象へ――メランコリー論を契機とした超自我形成説の展開
1 フロイトの対象概念
2 アーブラハムの対象概念
3 ラドーの対象概念
4 クラインの対象概念
小括
第2章 超自我の攻撃性――罪責感と死の不安
1 フロイトの原父殺害神話
2 アーブラハムの「口唇サディズム」革命と原気分変調論
3 ラドーの自己懲罰の原機制
4 クラインの羨望概念
小括
第3章 メランコリーの治癒――昇華と創造
1 フロイトの昇華論とフモール論
2 アーブラハムのメランコリー諸論における昇華と治癒の展望
3 ラドーの自己感情の修復論
4 クラインの罪と赦しの精神分析――はじめに愛ありき
小括
結論
【補論】丸井清泰のメランコリー論――日本の精神医学における精神分析理論の初期受容
注/文献一覧/あとがき
【著者について】
藤井あゆみ(ふじいあゆみ)
1980年、大阪に生まれる。京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程研究指導認定退学。専門は医学思想史、とりわけ精神分析運動史。現在、同志社大学グローバル・コミュニケーション学部嘱託講師。共著に、Orient im Okzident-Okizident im Orient. West-Östliche Begegnung in Sprache und Kultur, Literatur und Wissenschaft.(Cross Cultural Communication. Bd.27. Hg. von Ernest W. B. Hess-Lüttich/Yoshito Takahashi. Frankfurt am Main, 2015)、『現代ドイツを知るための62章 第二版』(坂本隆志/高橋憲編、明石書店、2013年)がある。
【関連書】
狂気の愛、狂女への愛、狂気のなかの愛/立木康介/2500円
ベンヤミンと精神分析/三原弟平/2500円
言語と狂気/熊谷哲哉/4500円
精神病院と社会のはざまで/フェリックス・ガタリ/2500円
アンチ・オイディプスの使用マニュアル/ステファヌ・ナド―/3800円