編集部通信/速報
2010年 3月 6日 コメントは受け付けていません。
創立30周年を迎える水声社では、これからも
より意欲的な出版物を陸続と刊行していきますが、
中でも、4月発売予定のナンシー・ヒューストン作
『暗闇の楽器』(永井遼・いぶきけい訳、四六判上製328頁、予価2500円)は
掛け値なしの傑作で、読書のたのしみを十二分に与えてくれる
素晴らしい小説です。原著は 1996年に発表され、
「高校生が選ぶゴンクール賞」を受賞した話題作ですが、
このたび遂に小社から邦訳刊行するはこびとなりました。
まず第一に、読んでいて惚れぼれするほど文体が端正で心地よく、
作者の聡明さと類まれな才能を感じさせます。
編集担当の私はこの本に出会ったとき、物語の構成や意表をつく展開に、
アゴタ・クリストフ『悪童日記』以来の文学的興奮と衝撃をおぼえました。
英語圏カナダ出身のフランス語作家ナンシー・ヒューストンは、
すでに新潮社クレスト・ブックスから『天使の記憶』と
『時のかさなり』の二つの小説が翻訳されているので、
ご存じの読者の方々も多いと思います。
一昨年の秋には来日し、かなりの注目をあびました。
1953年生まれで、これからの活躍も大いに楽しみな世界的作家のひとりです。
(画像は『暗闇の楽器』フランス語版ペーパーバック)
40代の女性作家をめぐる複雑な人間関係や家族との葛藤を
内面から描く現代の物語と、中世の暗黒時代をしたたかに生き抜く
双子のみなしご兄妹の数奇な物語がパラレルに展開するという
想像力ゆたかな作品です。ぜひともご期待ください。(編集部So)