9月の新刊:ハンナ・ヘーヒ——透視のイメージ遊戯

2019年 9月 5日 コメントは受け付けていません。

ヘーヒ書影ハンナ・ヘーヒ
透視のイメージ遊戯
香川檀(著)

判型:A5判上製
頁数:309頁
定価:4000円+税
ISBN:978-4-8010-0442-9 C0070
装幀:間村俊一
9月中旬頃発売!

イメージの表層を裂く、漂うアイロニーと遊戯性
ベルリン・ダダ唯一の女性メンバー、ハンナ・ヘーヒ(1889-1978)。「反芸術」を掲げた前衛運動に参加しながらも、フォトモンタージュをはじめ終生つねに実験的な作品をつくりだしていく背景には、驚くべきヴィジョンに貫かれた創作意識があった。波乱万丈のその生涯とともに、再評価が著しい女性美術家のうちにあるイメージ思考を解きほぐす、初のモノグラフ。図版多数収録。

視覚経験の可能性を追究した作家人生――
《本書は、ダダ以後に粘りづよく紡がれた彼女のイメージ思考を解き明かすべく、生涯を最晩年にいたるまで追いかけ、時々の主要作品をとりあげて吟味していく。それによって、この往年の女性ダダイストが、その後に展開した芸術上の探求と、一貫して持ち続けた造形的感性とを見届けようとするものである。》(「まえがき」より)

目次
まえがき 

第Ⅰ部 春雷に遭う 一八八九―一九二二年

 第1章 巣立ち
  〈ドイツの懐〉から帝都ベルリンへ
  工芸学校とオルリーク
  
 第2章 大戦下のふたつの嵐
  ハウスマンとの邂逅
  出版ジャーナリズムの渦中へ
  人形制作

 第3章 ベルリン・ダダ
  グローバルとローカル 
 「クラブ・ダダ」旗揚げ
  フォトモンタージュ発見
  ダダの庖丁で切り刻む

 第4章 コラージュの森へ
  モンタージュと「創造的中立」
  コラージュ装置
  図案・型紙・設計図 
  親密な贈り物
  ディオニュソスに誘われて 

 第5章 ダダ・メモリアル
  終焉と別離
  真心のダダ
  偽の記念寄せ書き集
  哀悼


第Ⅱ部 ワイマールの夏を奔る 一九二二―一九三三年

 第6章 国際的アヴァンギャルドのほうへ
  クルト・シュヴィッタース
  ハンス・アルプ&ゾフィー・トイバー夫妻
  ラースロ・モホリ=ナギ
  テオ・ファン・ドゥースブルフ夫妻

 第7章 ヴァニタス、あるいは夢幻の風景
  油彩画《階段》の幻想性
  「十一月グループ」と大ベルリン美術展
  へーヒのヴァニタス画
  第一次大戦後のオランダ静物画        
  即物的(ザッハリッヒ)と超現実的(シュルレアル)のはざま

 第8章 レスボスの饗宴
  ブルクマンとの出会い
  初個展と「映像&写真」展

 第9章 民族誌博物館から
  西洋/非西洋──奇想のハイブリッド身体
  ワイマール・ドイツの(ポスト)コロニアリズム
  対抗コレクションと〈グロテスクの遊戯〉

 第10章 時代の終焉の《アルバム》
  写真スクラップ帖の謎
  〈人生の危機〉における写真コレクション
  ユートピアのコレクション
  黎明期のコンセプチュアル・アート
  ヌードと動物の批評性


第Ⅲ部 冬を生き延びる 一九三三―一九七八年

 第11章 内なる亡命
  倒錯の芸術粛清
  園亭への隠棲         
  フローラ・ヴィタリス──植物相への帰依
  断末魔のヴィジョン

 第12章 ダダふたたび
  拡大鏡を持つフクロウ
  想起されるダダ
  魔女小屋のいばら姫
  「生の作法」としての記憶術

 第13章 人生コラージュ
  煌めきの視-光学(オプティーク)――抽象からポップへ
  フルクサス来訪
  もうひとつの美術史
  人生の図

 第14章 秘められた国「日本(ヤーパン)」
関節人形とポスト・ジャポニスム
  東京ダダ展から京都ヘーヒ展へ

 終章 開いた門
  冷戦下のパリ・ベルリン個展
  最期のドライブ
  八九年冬のベルリン
  透視のイメージ遊戯



ハンナ・ヘーヒ略年譜
参考文献
図版出典

あとがき


著者について
香川檀(かがわまゆみ)
1954年、東京都に生まれる。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。博士(学術)。武蔵大学特任教授。専攻、表象文化論、ジェンダー論、20世紀美術史。主な著書に、『想起のかたち――記憶アートの歴史意識』(水声社、2012年)、『ダダの性と身体――エルンスト・グロス・ヘーヒ』(ブリュッケ、1998年)、『人形の文化史――ヨーロッパの諸相から』(編著、水声社、2016年)などがある。

関連書
想起のかたち――記憶アートの歴史意識/香川檀/4500円+税
人形の文化史――ヨーロッパの諸相から/香川檀編/3000円+税

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