11月の新刊:21世紀のスペイン演劇①

2019年 11月 8日 コメントは受け付けていません。

21世紀のスペイン演劇121世紀のスペイン演劇①
田尻陽一(編)
田尻陽一・岡本淳子・矢野明紘(訳)

判型:A5判上製
頁数:328頁
定価:4000円+税
ISBN:978-4-8010-0455-9 C0374
装幀:滝澤和子
11月上旬発売!

最前線の現代スペイン戯曲を紹介する新シリーズ、始動!
息子はかつて父親に恋をした男と語り合い、娘は母親という存在に抱く嫌悪感を滔々と述べ立てる。恋人を、友人を喪い、心に傷を抱えて生きる人々――21世紀という時代と切り結ぶ7人の作家たちが、おのおのの多彩な手法で生の混沌を剔出する戯曲7編。

犬の毛をすくのはいい。美しい。犬の毛をすく音、撫でてやる。死んでいくあいだ撫でてやる。目を瞬くのを見る。死ぬ直前の瞬き。魂が昇っていくのを見る。〔……〕わしらは消え去る。モーツァルト、わしらは消え去るんだ。これは美しくないか? ここにあるすべてのものはずっと残っていく。そう気づくことは美しいことだ。映画、犬、花、皮膚、女、畑、そうだ、モーツァルト、畑だ。『わが心、ここにあらず』第5幕より


目次
フアン・カルロス・ルビオ『風に傷つけられて』
ブランカ・ドメネク『さすらう人々』
ホセ・マヌエル・モラ『わが心、ここにあらず』
アンヘリカ・リデル『地上に広がる大空』
アルベルト・コネヘロ『暗い石』
アントニオ・ロハノ『怒りのスカンディナビア』
デニセ・デスペイロウ『渦巻星雲の劇的起源』

著者について
フアン・カルロス・ルビオ(Juan Carlos Rubio)
1967年、モンティーリャ(コルドバ)生まれ。俳優としてデビュー後、テレビドラマや映画の脚本を書き始める。主な作品に、『三人』1999年、『アリゾナ』2006年、ミュージカル『あれは愛だったのか』2017年、『人生の孤島』2019年、などがある。

ブランカ・ドメネク(Blanca Doménech) 
1976年、マドリード生まれ。マドリード高等演劇専門学校(RESAD)のドラマツルギー・演劇学科を卒業。テレビの人気シリーズ『めがねっこマノリート』、『天才たち』、『灰色の豹』の脚本を担当。コロンビア大学のニューロ・テクノロジー・ラボで神経科学を研究後、『ヒュドラ』を発表する。ニューヨーク在住。主な作品に、『エコー』2001年、『しわくちゃの詩』2007年、『ブーメラン』2014年、『ヒュドラ』2016年、などがある。

ホセ・マヌエル・モラ(José Manuel Mora)
1978年、セビーリャ生まれ。2006年、マドリード舞台芸術大学劇作家演出家コース卒業。2008年、アムステルダム大学パフォーミングアーツ修士卒業。主な作品に、『夜に泳ぐ人たち』2014年、『失われた肉体』2018年、などがある。

アンヘリカ・リデル(Angélica Liddell)
1966年、カタルーニャ州フィゲラス生まれ。2010年、アビニョン演劇祭で上演した『わたしが負けてあんたを不屈にしてあげる』の過激な舞台によってその名をヨーロッパ演劇界に知らしめる。その他の主な作品に、『わたしと食事ですって』2004年、『リカルドの年』2005年、「中国」三部作(『人を信頼する人は呪われよ』『ピン・パン・チュ乒乓球』『地上に広がる大地』)2011-13年、などがある。

アルベルト・コネヘロ(Alberto Conejero)
1978年、ビルチェス(ムルシア)生まれ。マドリード舞台芸術大学演出部卒業、マドリード・コンプルテンセ博士。ギリシア語、ラテン語に堪能で、翻訳や翻訳劇の脚本も手がける。主な作品に、『熱』1999年、『ウンガロス』2000年、『クリフ(絶壁)』2010年、『ウスアイア』2013年、などがある。

アントニオ・ロハノ(Antonio Rojano)
1982年、コルドバ生まれ。セビーリャ大学でジャーナリズムを専攻するかたわら戯曲を書き始める。22歳の時に最初の戯曲『砂の夢』を執筆。主な作品に、『砂の夢』2005年、『ワルシャワでのデカダンス』2007年、『ネオンの墓』2009年、『ディオスK.』2016年、などがある。

デニセ・デスペイロウ(Denise Despeyroux)
1974年、ウルグアイ生まれ。主な作品に、『治療』2005年、『死って、たいしたことはない』2010年、『現実』2013年、『ある三番目の土地』2017年、などがある。

編者・訳者について
田尻陽一(たじりよういち)
1943年生まれ。関西外国語大学名誉教授。専門はスペイン演劇。劇団クセックACTでスペイン語演劇の翻訳・脚本を担当。主な訳書に、『現代スペイン演劇選集』全3巻(監修・翻訳、カモミール社、2014-16)、『セルバンテス全集5 戯曲集』(責任編集・翻訳、水声社、2018)、カルデロン『人生は夢』(『ベスト・プレイズ』第1巻、論創社、2019)、ロペ・デ・ベガ『フエンテオベフーナ』(『ベスト・プレイズ』第2巻、論創社、2019)などがある。

岡本淳子(おかもとじゅんこ)
1961年生まれ。大阪大学大学院言語文化研究科准教授。専門はスペイン現代演劇。主な著書に、『現代スペインの劇作家アントニオ・ブエロ・バリェホ――独裁政権下の劇作と抵抗』(大阪大学出版会、2014)が、主な訳書に、パロマ・ペドレロ『キス、キス、キス』(『現代スペイン演劇選集』第2巻、カモミール社、2015)、ライラ・リポイ『聖女ペルペトゥア』(『現代スペイン演劇選集』第3巻、カモミール社、2016)、セルバンテス『幸福なならず者』(『セルバンテス全集5 戯曲集』、水声社、2018)などがある。

矢野明紘(やのあきひろ)
1981年生まれ。レオン大学博士号取得。専門はスペイン演劇。主な訳書に、ラファエル・ソレル『回帰の作法』(Jumpa books, 2013)、アルフォンソ・サストレ『どこにいるのだ、ウラルメ、どこだ』(『現代スペイン演劇選集』第1巻、カモミール社、2015)、エルビラ・リンド『ロスコンケーキに隠された幸運の小さな人形』(『現代スペイン演劇選集』第2巻、カモミール社、2015)、マヌエル・カルサダ・ペレス『王の言葉』(『現代スペイン演劇選集』第3巻、カモミール社、2016)などがある。

関連書
現代スペイン演劇選集 ミウラ、ブエロ・バリェホ、サストレ/佐竹謙一訳 3500円+税
ラテンアメリカ現代演劇集 レネー・マルケス、ホセ・トリアーナ他/佐竹謙一訳 4000円+税
*シリーズ《21世紀のスペイン演劇》は、以降、不定期に続刊予定です。

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