編集部通信/『暗闇の楽器』続報
2010年 4月 19日 コメントは受け付けていません。
先月6日に速報でお伝えした、
ナンシー・ヒューストンの話題作『暗闇の楽器』の発売日が
いよいよ迫ってきました。なかには待ちきれないでいる
読者のかたもいらっしゃるのでは?
著者についてはご存じのかたも多いと思いますが、
ここでもう一度紹介し、さらに、『暗闇の楽器』の原著が
フランスで刊行されたときに各紙誌に掲載された
書評/讃辞の数々を抜粋してみることにします。(編集部So)
◆
ナンシー・ヒューストンは、1953年、カナダのアルバータ州カルガリーに
生まれる。英語を母語としてカナダやアメリカ合衆国で教育を受け、
20歳のときにパリに留学、ロラン・バルトに師事する。
以後フランスに住み、79年にはツヴェタン・トドロフと結婚、
フランス語と英語の双方で活発な執筆活動を続けている。
81年に長篇『ゴルトベルク変奏曲』でデビューして以来、
93年の『草原讃歌』(カナダ総督大賞受賞)、96年の『暗闇の楽器』
(高校生が選ぶゴンクール賞受賞)など、これまで十一の小説を発表、
それ以外にも数多くのエッセイ・評論、子供向けの作品等を書いている。
そのうちすでに邦訳があるのは、『愛と創造の日記』(晶文社、1997年)、
『天使の記憶』(新潮社、2000年)、『時のかさなり』(新潮社、2008年)
の三作で、2008年秋には来日講演をおこない、話題をよんだ。
●この独創性あふれる小説は、読む人の心をおののかせ、揺さぶる。
読者は、数世紀もの時の隔たりを超えて収斂するふたつの運命を
ともに生きる。果たして、双子のバルブとバルナベは、
ナディアの心の悪魔を祓うことができるのか?
この素晴らしい作品を読了後、その答えが明らかになる。
——Lire(リール誌)
●ナンシー・ヒューストンが奏でる魂を貫くような哀しみに満ちた音色が、
きらめく愛情によって癒されてゆく。明晰で才能あふれる名演奏は、
聴く人の琴線をかき鳴らし、その心を捉えて離さない。
——L’Express(レクスプレス誌)
●闇に覆われた冒頭と光に満ちたラストのあいだで、
ふたつの人生が火打ち石のようにぶつかり合い、火花を放つ。
ここに、彼女の小説の美しさがある。
——Magazine Littéraire(マガジン・リテレール誌)
●読者は、あたかも小説家の創造の現場に入り込んだかのように、
ふたつの楽譜のあいだにある秘められた結びつきを目の当たりにして、
感嘆の念を禁じえない。本書で、ナンシー・ヒューストンは
巧妙な驚くべき錬金術を披露する。バルブとナダは
相手を根本から変えてしまうほどの影響力を発揮するが、
そのときふたりの女性は読者の想像を超える姿で立ち現れるのだ。
——Télérama(テレラマ誌)
●小説家は魔女。非現実的なものを実在させる魔法の力を持っている。
人生は虚構によって、より現実になる。
(インタヴューに対する著者自身の言葉)
——Centre France Dimanche(サントル・フランス・ディマンシュ紙)
●ナンシー・ヒューストンは、人が楽器で聴かせてくれるものを言葉で表す。
この小説でいえば、ひとりの女がつぶやくと、その哀しい繰り言が
もうひとりの女の胸に木霊(こだま)する。
反抗と怒りの歌、だが同時にそれは愛の歌でもある。
ささやかな瞬間を積み重ねることによって、
私たちは暗闇のただ中を前進することができるのだ。
——Elle(エル誌)
●双子と魔法を描き、怒りに満ちた明晰な内省を連ねたこの本は、
何よりも文学的創造の秘密を解き明かしてみせる。
そして書くことは、現実を意味あるものにし、
書き手の落胆、怒り、疑念を癒す唯一の方法であると結論づける。
——Les Echos(レ・ゼコー紙)