1月の新刊:自然と文化を越えて《人類学の転回》
2020年 2月 3日 コメントは受け付けていません。
自然と文化を越えて
《人類学の転回》
フィリップ・デスコラ(著)
小林徹(訳)
判型:四六判上製
頁数:637頁
定価:4500円+税
ISBN:978-4-8010-0467-2 C0010
装幀:宗利淳一
好評発売中!
アチュアル族のインディオとの出逢いをきっかけに、地球規模で広がる四つの存在論を横断し、非人間をも包摂する関係性の分類学を打ち立てる。近代西欧が発明した「自然/文化」という二分法を解体し、人類学に〈転回〉をもたらした記念碑的著作。
非人間は、私たちが実験室で交流しているサルの姿をしていたり、栽培民の夢を訪れるヤムイモの霊魂の姿をしていたり、チェスで打ち勝たねばならない電子的対戦者の姿をしていたり、供犠に際して人間の代用品として扱われるウシの姿をしていたりする。(……)これらの社会は、人間性の境界線が、人間という種の戸口で途切れているなどと考えたことは一度としてなかったし、極めて口数の少ない植物たちや、特別な所など何も持っていない動物たちを、自分たちの社会生活が奏でる演奏会に誘うことを躊躇することもないのである。つまり、人類学は素晴らしい挑戦に直面しているのだ。すなわち、人間主義という擦り切れた形式と共に消え去るか、あるいは、形態変化して、まさに人間以外のもの、つまり人間と結びついているのに今のところ周辺的役割に遠ざけられている存在者の集合体を、まるごと研究対象に含めるような仕方で、自らの領域や諸々の道具について再考するかである。あるいは、もっと慣例的な言葉を使うならば、文化の人類学を自然の人類学によって裏打ちせねばならない。自然の人類学は、このような周辺的存在者たちの領分と、人間が現働化している世界に開かれている。自然の人類学を用いて、人間は自らを対象化するのである。
(本文より)
【目次】
序
第Ⅰ部 「自然」の騙し絵
第一章 連続体の諸形象
第二章 野生と家庭
遊牧空間
菜園と森林
畑地と水田
アゲルとシルワ
牧人と狩人
ローマ的風景、ヘルシニアの森、ロマン主義の自然
第三章 大分割
風景の自律性
ピュシスの自律性
〈天地創造〉の自律性
〈自然〉の自律性
〈文化〉の自律性
二元論の自律性
諸世界の自律性
第Ⅱ部 経験の構造
第四章 実践の図式
構造と関係
家族的類似性の知
様々な図式論
差異化、安定化、アナロジー
第五章 自己との関係/他者との関係
同定様式と関係様式
他者とは「私」である
第Ⅲ部 存在の配置
第六章 アニミズム再考
形態と行動
形態変化の化身たち
アニミズムとパースペクティヴ主義
第七章 存在論としてのトーテミズム
〈夢〉
オーストラリア調査目録
分類学的意味論
多彩なる混成体
アルゴンキンのトーテムに戻る
第八章 ナチュラリズムにとって確かなこと
揺るぎなき人間性?
動物の文化と動物の言語?
人間は心を持たない?
自然の権利?
第九章 アナロジーの眩暈
存在の連鎖
メキシコの存在論
アフリカの木霊
対化、階層構造、供儀
第十章 項・関係・カテゴリー
包括性と対称性
差異、類似、分類
第Ⅳ部 世界の用法
第十一章 集合の創設
それぞれの種にそれぞれの集合
社会なき自然と排他的社会
混成的・差異的・相補的集合
混合的・包括的・階層構造的集合
第十二章 習俗の形而上学
浸透する私
考える葦
集合を表象する
事物の署名
第Ⅴ部 関係の生態学
第十三章 繋がりの諸形態
与えること、奪うこと、交換すること
生産する、保護する、相続する
第十四章 霊魂の交渉
捕食者と獲物
債務者の対称性
分有による内輪関係
集合のエートス
第十五章 構造の歴史
〈トナカイ人間〉から〈雄牛様〉へ
狩猟、馴致、家畜化
変化の発生
エピローグ 可能事の目録
謝辞
原注
文献一覧
事項索引
訳者あとがき
【著者について】
フィリップ・デスコラ(Philippe Descola)
1949年、パリに生まれる。文化人類学者。サン゠クルーの高等師範学校を卒業後、クロード・レヴィ゠ストロースに師事し、社会科学高等研究院で教鞭をとる。現在、コレージュ・ド・フランス教授。おもな著書に、La Nature domestique(la Maison des sciences de l’homme, 1986)、Les lances du crépuscule(Plon, 1993)、La Composition des mondes(Flammarion, 2014)などがある。
【訳者について】
小林徹(こばやしとおる)
1975年、東京都に生まれる。パリ第一大学大学院哲学科博士課程修了。博士(哲学)。専攻、フランス現代哲学。現在、龍谷大学文学部哲学科哲学専攻専任講師。おもな著書に、『経験と出来事――メルロ゠ポンティとドゥルーズにおける身体の哲学』(水声社、2014年)、訳書に、アルフォンソ・リンギス『変形する身体』(水声社、2015年)、フレデリック・ケック『流感世界――パンデミックは神話か?』(水声社、2017年)などがある。
【関連書】
経験と出来事――メルロ゠ポンティとドゥルーズにおける身体の哲学 小林徹/円+税
暴力と輝き アルフォンソ・リンギス/水野友美子+金子遊+小林耕二/3200円+税
模倣と他者性――感覚における特有の歴史 マイケル・タウシグ/井村俊義訳/4000円+税
経済人類学――人間の経済に向けて クリス・ハン+キース・ハート/深田淳太郎+上村淳志訳/2800円+税
非-場所――スーパーモダニティの人類学に向けて マルク・オジェ/中川真知子訳/2500円+税
法が作られているとき――近代行政裁判の人類学的考察 ブルーノ・ラトゥール/堀口真司訳/4500円+税
流感世界――パンデミックは神話か? フレデリック・ケック/小林徹訳/3000円+税
フレイマー・フレイムド/トリン・T・ミンハ 小林富久子・矢口裕子・村尾静二訳/4000円+税
作家、学者、哲学者は世界を旅する ミシェル・セール/清水高志訳/2500円+税
多としての身体――医療実践における存在論 アネマリー・モル/浜田明範・田口陽子訳/3500円+税
ヴァルター・ベンヤミンの墓標 マイケル・タウシグ/金子遊・井上里・水野友美子訳/3800円+税
変形する身体 アルフォンソ・リンギス/小林徹訳/2800+税
インディオの気まぐれな魂 エドゥアルド・ヴィヴェイロス・デ・カストロ/近藤宏・里見龍樹訳/2500円+税
部分的つながり マリリン・ストラザーン/大杉高司・浜田明範・田口陽子・丹羽充・里見龍樹訳/3000円+税
国家に抗する社会 ピエール・クラストル/渡辺公三訳/3500円+税
政治人類学研究 ピエール・クラストル/原毅彦訳/4000円+税