4月の新刊:反政治機械——レソトにおける「開発」・脱政治化・官僚支配《人類学の転回》
2020年 3月 28日 コメントは受け付けていません。
反政治機械
レソトにおける「開発」・脱政治化・官僚支配
《人類学の転回》
ジェームズ・ファーガソン(著)
石原美奈子+松浦由美子+吉田早悠里(訳)
判型:四六判上製
頁数:464頁
定価:5000円+税
ISBN:978-4-8010-0451-1 C0010
装幀:宗利淳一
4月上旬発売予定!
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統治技術の生体解剖へ
技術的支援に見せかけて、国家機構を拡張する装置――《開発》。フーコーの生–政治の議論に立脚しながら、アフリカ南部レソトで実施された農村開発プロジェクトの生成過程を系譜学的に描き出し、失敗によって稼働し続けるその不可視の効果を綿密なフィールドワークから明らかにした「開発の人類学」の古典的名著。
〔……〕「開発」プロジェクトは誰も反対できない中立で技術的な使命という装いのもと、制度的な国家権力の確立と拡大という極めて政治的に扱いの難しい事業をほぼ不可視なまま遂行することに成功するのである。そうすると、この「道具効果」には二つの側面があることになる。ひとつは官僚的な国家権力を拡大するという制度的な効果であり、もうひとつは貧困と国家双方を脱政治化するという概念的、もしくはイデオロギー的効果である。その作用の仕方をみると、SF小説で有名なあの不思議な機械との類似性に気がつくであろう。それは、ボタンひとつで重力の作用を停止できる「反重力機械」である。少なくともレソトでは、「開発」装置はそれとほとんど同じくらい巧妙に事を運ぶかのようである。それは最も政治的に扱いが難しい事業から政治性を払拭させることができるのである。もし「開発」プロジェクトの「道具効果」が、ある種戦略的に一貫した理解不能な全体性を形作ることになるのならば、それにはこのような名を与えよう。反政治機械、と。
(本文より)
【目次】
謝辞
正字法と表記法について
略語
まえがき
第Ⅰ部 序
第一章 序
第Ⅱ部 「開発」装置
第二章 概念的装置――「開発」対象の構築、「開発途上国」としてのレソト
第三章 制度的装置――タバ・ツェカ開発プロジェクト
第Ⅲ部 「標的となる住民」について
第四章 調査地概要――レソト農村部の経済・社会的側面
第五章 牛の神秘性――レソト農村部における権力、財産、家畜
第Ⅳ部 「開発」の展開
第六章 家畜の開発
第七章 地方分権化の頓挫
第八章 タバ・ツェカ・プロジェクトの農作物開発とその他のプログラム
第Ⅴ部 「開発」プロジェクトの道具効果
第九章 反政治機械
エピローグ
注
参照文献
訳者あとがき
【著者について】
ジェームズ・ファーガソン(James Ferguson)
1959年、カリフォルニア州ロサンゼルスに生まれる。文化人類学者。現在、スタンフォード大学教授。南部アフリカ(南アフリカ、レソト、ザンビア、ナミビア)で調査を行い、近代化・開発をキーワードに民族誌的・理論的研究に従事している。主な著書に、Expectations of Modernity (1999), Global Shadows(2006), Give a Man a Fish (2015) などがある。
【訳者について】
石原美奈子(いしはらみなこ)
南山大学人文学部・教授。専門は文化人類学。編著書に『せめぎあう宗教と国家――エチオピア 神々の相克と共生』(風響社、2014年)、『現代エチオピアの女たち――社会変化とジェンダーをめぐる民族誌』(明石書店、2017年)、論文にThe Formation of Trans-Religious Pilgrimage Centers in Southeast Ethiopia: Sitti Mumina and the Faraqasa Connection(Patrick Desplat and Terje Ostebo eds, Muslim Ethiopia, Palgrave Macmillan, 2013)などがある。
松浦由美子(まつうらゆみこ)
名城大学、名古屋外国語大学・非常勤講師。専門は文化論、フェミニズム理論。著書に『先生が薦める英語学習のための特選映画百選――小学生編』(共著、フォーインスクリーンプレイ事業部、2014年)、論文に「追悼する『母』たち――胎児とフェミニズムの行方」(『女性学』14号、2006年)などがある。
吉田早悠里(よしださゆり)
南山大学国際教養学部・准教授。専門は文化人類学。著書に『誰が差別をつくるのか――エチオピアに生きるカファとマンジョの関係誌』(春風社、2014年)、論文にThe Life and Collection of Friedrich Julius Bieber: An Archival Study of Kafa at the Beginning of the 20th Century (Nilo-Ethiopian Studies, No.21, 2016)などがある。
【関連書】
経験と出来事――メルロ゠ポンティとドゥルーズにおける身体の哲学 小林徹/円+税
国家に抗する社会 ピエール・クラストル/渡辺公三訳/3500円+税
政治人類学研究 ピエール・クラストル/原毅彦訳/4000円+税
自然と文化を越えて フィリップ・デスコラ/小林徹訳/4500円+税