4月の新刊:哲学詩集《イタリアルネサンス文学・哲学コレクション》

2020年 4月 21日 コメントは受け付けていません。

哲学詩集哲学詩集
《イタリアルネサンス文学・哲学コレクション③》
トンマーゾ・カンパネッラ(著)
澤井繁男(訳)

判型:A5判上製
頁数:536頁
定価:6000円+税
ISBN:978-4-8010-0403-0 C0310
装幀:西山孝司
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地下牢の闇のなかの思索、革命への思い
ユートピア論『太陽の都』を著し,預言者を自認した自然哲学者・カトリック僧が,体制転覆を計画して逮捕され,四半世紀にも及んだ獄中生活において綴った89篇の詩。
ギリシア哲学とカトリック神学がルネサンス的融合を果たした世界観,専制支配と教会の腐敗への怒り,長きにわたる苦難の末に生じた使命と信仰への疑心――異形の知識人の生と思想のすべてが結実した,驚嘆すべき人倫の詩集。

完全無比な生き物の棲む黄金の時代の前は混沌としていて,
さながら巨大な卵の体をなしていた。
卵のなかには霊魂を想わせる第一の存在の神が孵化しつつあり,
大いなる新たな形を顕わしていた。
神は必然,運命,調和に影響を与え,
和らげた力,愛,知の三つを,
多くの手足のなかへと融かし込み,
自然,内在する造化と種子を創り上げていった。
それゆえそれぞれの実体は実在するかぎり,知ること,愛することが可能なのである。
知を失くしたり愛を喪失したりすることはない。
死に及んでも蘇ってくるからである。
(詩28「真正なる哲学に則った愛のカンツォーネ」より)



著者について
トンマーゾ・カンパネッラ(Tommaso Campanella)  
1568年、南イタリアのカラブリアに生まれる。詩人、自然哲学者、自然魔術師、占星術師。詩作で頭角を現わし、14歳でドミニコ会士となるが、次第に異端思想に接近し、また、ガリレイの知遇を得て近代自然科学に触れる。預言者を自称して革命を計画するが、発覚して逮捕され、四半世紀におよぶ獄中生活のなかで著作の執筆を続ける。釈放後はフランスに亡命し、フランス宮廷に仕え、1639年、パリで客死。主な著作に、本書のほか、『太陽の都』(1602)、『事物の感覚と魔術について』(1620)などがある。

訳者について
澤井繁男(さわいしげお)  
1954年、札幌市に生まれる。元、関西大学文学部教授。専門はイタリアルネサンス文学・文化論。カンパネッラ関連の主な著書に、『ルネサンスの知と魔術』(山川出版社、1998)、『評伝 カンパネッラ』(人文書院、2015)などが、訳書に、カンパネッラ『ガリレオの弁明――ルネサンスを震憾させた宇宙論の是非』(工作舎、1991。ちくま学芸文庫、2002)などがある。

目次
献辞

1 序
2 詩人たちに訴える
3 真の意味での賢者が抱く本来の信仰
4 世界とその諸部分について
5 霊魂の不滅
6 哲学の方法
7 全国民への警告
8 世界の諸悪の根源
9 自己愛についての驚くべき発見
10 自己愛と普遍的愛を比べて
11 至上の善である神を愛さず他の善を愛するのは、無知に理由がある
12 賢人であることの幸運
13 古代の賢者の力なき思慮が、力ある狂人の狂気に屈したこと
14 人間は神や天使たちによって舞台に立たされる
15 人間は、政治的支配の理法よりも偶然にしたがい、自然を模倣するのは下手である、ということ
16 真なる王、過てる王、どちらともつかぬ王と王国、その結末と究明
17 王国を有するのは王ではなく、統治の出来る人物である
18 われらが主なるキリストに
19 キリストの昇天について
20 われらが主キリストの墓のなかで、信仰なき者たちへ
21 キリストの聖墓のなかで
22 キリストの復活に際して
23 第一の思慮に 第1のカンツォーネ
24 第一の思慮に 第2のカンツォーネ
25 第一の思慮に 第3のカンツォーネ
26 愛、そして真実の愛への導き
27 愛神に矢を
28 真正なる哲学に則った愛のカンツォーネ
29 善の徴、愛の対象である美についてのカンツォーネ
30 本質的な愛の対象である至高善についてのカンツォーネ
31 形而上学的な至高善についてのカンツォーネ
32 高貴さ、その真なる徴、その過てる徴について ソネット
33 庶民について
34 此岸での、また彼岸での悪意は損傷であり、そして善意はあらゆる方面を嘉するということ
35 邪な君主とは、みずからの共和国の頭ではなく、男根だということ
36 ギリシアの作り話を用いて詩作に心を寄せるイタリア人たちへ カンツォーネ
37 イタリアについて ソネット
38 ヴェネツィアへ
39 ジェノヴァへ
40 ポーランドへ
41 スイス人とグリソーニ人へ
42 聖ルカと聖ヨハネの「労働のない信仰は死なり」、それに聖アウグスティヌスの「汝は信仰によって個我を明らかにし、わたしは労働を明白となす」という、キリストについての寓話に基づいて詠まれたソネット
43 詭弁者と偽善者、異端者と奇蹟の虚言者らに対抗して
44 同様のテーマで
45 偽善者に対抗して
46 『われらの父よ』 イエス・キリストの祈り
47 『われらの父よ』についての3つの子のソネット 第1のソネット
48 『われらの父よ』についての第2のソネット
49 同様の主題のソネット 第3のソネット
50 預言者たちのソネット 第1のソネット
51 第2のソネット
52 第3のソネット
53 喜劇を書くように慫慂され、預言に類する次のソネットで応える
54 衣服の色について ソネット
55 同様に、色について
56 1603年から24年12月にいたる大きな合についてのソネット
57 先述の合がキリストの降誕という革命に該当する
58 「ヨハネの黙示録」と聖女ビルギッタから採られたソネット
59 「ダニエル書」の像について
60 牢獄にて
61 自分自身について
62 自分自身について、……ときのこと
63 あまりに多くを知る廉、思慮分別を欠く廉、反逆の廉でそのひとを訴えた、当局の友人ら、下級の貴族どもへ
64 同類の者たちへ
65 神への祈り
66 神へ
67 賛歌の作詞家で、通称ニブロであるアンニヴァーレ・カラッチョロへ
68 コゼンツァのひと、テレジオへ
69 リドルフォ・ディ・ビーナへ
70 哲学者、トビア・アダミへ
71 コーカサスでのソネット
72 監禁されていた穴のような牢獄、その底から発せられた、預言のごとき哀しげな祈り カンツォーネ
73 ひとつの形而上学的な聖歌へと結合する3つの祈り 第1のカンツォーネ
74 ひとつの形而上学的な聖歌へと結合する3つの祈り 第2のカンツォーネ
75 ひとつの形而上学的な聖歌へと結合する3つの祈り 第3のカンツォーネ
76 生を寿ぐ4つのカンツォーネ 第1のカンツォーネ
77 生を寿ぐ4つのカンツォーネ 第2のカンツォーネ
78 生を寿ぐ4つのカンツォーネ 第3のカンツォーネ
79 生を寿ぐ4つのカンツォーネ 第4のカンツォーネ
80 コーカサスで作られた、悔いあらため、懺悔、等々のために、ベリッロへ捧げるカンツォーネ
81 第一の力について カンツォーネ
82 神の摂理について ソネット
83 人間の能力について
84 共同体と肉をまとった第一の存在の被造物たちに、神を賛美するよう促す聖歌
85 天空とその諸部分、その住人たちに、神聖なる神を賛美するよう促す聖歌
86 大地と生きとし生ける一切の者たちに、神を賛美するよう促し、彼らの終末、そして神の摂理を明らかにする聖歌
【ラテン語の規範で作られた3つの挽歌からなる補遺】
87 ラテン語を慮って
88 「詩篇」111
89 太陽に捧ぐ

訳注

訳者解説 澤井繁男

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