【書評】木村妙子『三木竹二――兄鴎外と明治の歌舞伎と』、毎日新聞に書評掲載

2020年 6月 1日 コメントは受け付けていません。

2020年5月23日(土)付の毎日新聞(朝刊)に、渡辺保氏(演劇評論家)による木村妙子『三木竹二――兄鴎外と明治の歌舞伎と』の書評(「劇評家の伝記を超えた文化史」)が掲載されました。

《森鴎外の弟で、近代劇評の基礎を築いた三木竹二の評伝である。〔……〕それまでの劇評は「評判記」と言われる形式で、いわば印象批評であり、「批評」ではなく「評判」であった。三木竹二の仕事の重要性は、その「評判」を「批評」にした点にある。〔……〕この本にはそうした竹二の仕事の価値が鮮明に描かれているだけでなく、独自な点が三つある。〔……〕編集者としての竹二の役割の意味。その性格。そして森家の歴史という点で、この評伝は一個人の伝記を超えた読み物になった。一人の劇評家、演劇という一分野――そういう狭い専門的な世界を超えて一般的な読み物になったのである。さながら大河小説を読む如く、そこには明治の一家庭が現れ、家族の笑い声が、あるいは悲嘆の泣き声が聞こえる。しかもその向うには坪内逍遥、尾崎紅葉、幸田露伴はじめ多くの文学者が登場し、一方名優九代目團十郎や五代目菊五郎がいて、新派の名優伊井蓉峰や喜多村緑郎、さらに新劇を起こした小山内薫がいる。この本は「明治文化史」であり、もう一つの「明治演劇史」である。》(渡辺保氏評)

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