6月の新刊:不信の支える信仰共同体——ネパールのプロテスタンティズムについての民族誌的研究
2020年 6月 18日 コメントは受け付けていません。
不信の支える信仰共同体
ネパールのプロテスタンティズムについての民族誌的研究
丹羽充(著)
判型:A5判上製
頁数:267頁
定価:4000円+税
ISBN:978-4-8010-0495-5 C0039
装幀:宗利淳一
6月下旬頃発売!
▶︎直接のご注文はこちらへ◀︎
「信仰」の追体験へ
公的弾圧やヒンドゥー・ナショナリズムに抗しながらも、近年勢力を拡大しつつあるネパールのプロテスタンティズムは、神の栄光のためにどのような活動を実践し、いかなる様相を呈しているのだろうか――。多様な「カースト/民族」が混淆するカトマンドゥ盆地をフィールドに、西洋における宗教概念との差異を豊富な事例とともに剔抉しつつ、その核心に、不信、嗤笑、競争、対立によってこそ維持される「共同体」があることを目撃させる、傑出した民族誌。
【目次】
序論
一 はじめに
二 研究の立場
三 理論的関心
1 研究の出発点
2 「信仰=信念」と共同性
四 研究の基本情報
1 調査地の概況
2 調査について
五 本書の構成
六 序論のおわりに
第Ⅰ部 信仰の共同体
第一章 プロテスタンティズムと「信仰(ビシュワース)」
一 はじめに
二 「宗教(ダルマ)」という概念
三 「宗教」的帰属および実践
1 行為の「規範」としての「宗教」
2 想定されない改宗
四 排他的な選択
1 「宗教」的包括主義
2 「信仰」という概念
五 ネパールのプロテスタンティズム
1 歴史的概観
2 地域および対象に由来する本書の補足的特徴
六 小括
第二章 呪術および「宗教(ダルマ)」としてのプロテスタンティズム
一 はじめに
二 呪術としてのプロテスタンティズム
1 衰えない呪術的実践
2 プロテスタンティズムと病気治し
三 神の実在と「信仰」の証左
1 プロテスタンティズムへの接触
2 見せつけられる効果
3 いやされなければならない病気治し
四 「宗教」としてのプロテスタンティズム
1 洗礼の過程
2 規則感覚
3 「信仰」の代価
五 プロテスタンティズムに差し向けられる眼差し
六 小括
第三章 強い「信仰(ビシュワース)」を求めて
一 はじめに
二 クリスチャン共同体
1 教会
2 教会間ネットワーク
3 私的ネットワーク
三 規則の存在論
1 規則の公共性
2 「自然=本性」としての規則
四 「信仰」活動
1 「信仰」の強弱
2 活発化する「信仰」活動
五 相互不信の眼差し
1 資金調達
2 道具主義批判の言説
六 小括
第Ⅱ部 不信の共同性
第四章 蔓延する相互不信
一 はじめに
二 「信頼」と「不信」
1 ネパールにおける「信頼」と「不信」
2 クリスチャン共同体と「信頼」および「不信」
三 不信の言説
1 ずる賢さの言説
2 道具主義批判の言説
四 不信の戦略
五 難しく危険なコミュニケーション
1 断念される情報探索
2 断念される情報提供
六 小括
第五章 相互不信の中での「信仰」活動
一 はじめに
二 他者との比較から他者による評価へ
1 比較の行き詰まり
2 役職をめぐる駆け引き
三 「信仰」活動の場を求めて
1 教会分裂
2 超教会団体
四 「信仰」活動の評価
1 評価に値する「信仰」活動
2 評価を高める術
五 共同体の危機
1 根強い不信
2 止むことのない「信仰」活動
3 嗤笑の眼差し
六 小括
第六章 クリスチャン共同体の共同性
一 はじめに
二 統括団体の歴史的概観
1 初期の団結から分裂へ
2 民主化運動と統括団体の乱立
三 争う統括団体
1 墓地問題
2 代表を名乗るための論理
3 解決しない墓地問題
四 (非)合理的な参与
1 統括団体に向けられる不信と嗤笑
2 共犯関係
五 崩壊することのない共同体
1 セミラチス状の共同性
2 「信仰」の共同体
六 小括
結論
一 はじめに
二 「信仰=信念」について
三 宗教と「宗教」について
四 本書の記述について
注
参照文献
あとがき
【著者について】
丹羽充(にわみつる)
1980年、愛知県に生まれる。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。博士(社会学)。現在、日本学術振興会特別研究員(PD)。主な著書に『体制転換期ネパールにおける「包摂」の諸相―—言説政治・社会実践・生活世界』(共著、三元社、2017年)、論文に The Problem of Unity and Representation Observed among Protestans in Nepal: On a Conflict between Umbrella Organizations and Rational but Irrational Participation (Studies in Nepali History and Society, Martin Chautari, 2019)、翻訳にマリリン・ストラザーン『部分的つながり』(共訳、水声社、2015年)がある。
【関連書】
部分的つながり マリリン・ストラザーン/大杉高司・浜田明範・田口陽子・丹羽充・里見龍樹訳/3000円+税
市民社会と政治社会のあいだ――インド、ムンバイのミドルクラス市民をめぐる運動/田口陽子著/4000円+税
ジカ熱――ブラジル北東部の女性と医師の物語/デボラ・ジニス/奥田若菜・田口陽子訳/3000円+税