9月の新刊:加藤周一を21世紀に引き継ぐために
2020年 9月 3日 コメントは受け付けていません。
加藤周一を21世紀に引き継ぐために
加藤周一生誕百年記念国際シンポジウム講演録
三浦信孝・鷲巣力(編)
判型:A5判上製
頁数:456頁
定価:6000円+税
ISBN:978-4-8010-0513-6 C0095
装幀:西山孝司
9月15日頃発売!
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その鋭い眼は時代の核心を衝く
「戦争の世紀」を生きた加藤周一は、人間の生命と自由を侵す戦争に抗し、人間を信じ、言葉を愛し、人間の平等と尊厳を大事にした。どんなに少数者になっても希望を捨てない。このような加藤の思想と行動から出発し、次の時代をいかに歩むのか。それがわれわれの課題である。
【目次】
まえがき――加藤周一の呼びかけに応える「少数者」たちの輪 三浦信孝
第Ⅰ部 加藤周一の知的遺産と世界の中の日本
セッション1 「雑種文化論」の射程
加藤周一は「洋学紳士」か、それとも「日本人論」者か? 樋口陽一
「雑種文化論」と日本の近代化 ピエール゠フランソワ・スイリ
沈黙する羊、歌う羊――戦後思想における加藤周一 小熊英二
セッション2 私たちが加藤周一に負うもの
遠くの鏡 「知力と愛情」――加藤周一とドイツ イルメラ・日地谷゠キルシュネライト
加藤周一と「日本語で書く」こと 水村美苗
加藤周一の日本古典文学研究――その国際的影響に関する私見 ソーニャ・アンツェン
セッション3 加藤周一をめぐる誤解を晴らす
『日本文化における時間と空間』のフランスにおける受容、かくも残念な誤解 クリストフ・サブレ
加藤周一と「二重の光」――人間主義的思想に向けた比較研究の方法 ジュリー・ブロック
セッション4 加藤周一を批判的に継承する
文化・人権・立憲主義――グローバル化時代における立憲主義構想のために 山元一
『日本その心とかたち』再読――「比較美術史」のパースペクティヴ 三浦篤
非ヘーゲル的な夕暮れへの招待――加藤周一と弁証法 片岡大右
セッション5 加藤周一における文学と政治
〈戦争文化〉への抵抗をめぐって 海老坂武
ヴァレリーを読む加藤周一――小林秀雄のヴァレリーとの比較において 三浦信孝
文学とは何か――加藤周一、サルトル、そして〈独自的普遍〉 澤田直
セッション6 加藤周一を超えて考える、世界の中の日本
クレオール思想とバチカン外交――加藤周一との二つの討論から 西谷修
パトリオティズムとナショナリズム――加藤周一における愛国心 白井聡
第Ⅱ部 東アジアにおける加藤周一
加藤周一生誕百年記念講演会へのメッセージ ソーニャ・カトー
講演
近代日本の土台と知識人の苦悩 奈良勝司
対談における加藤周一 孫歌
加藤周一『日本文学史序説』と池澤夏樹=個人編集『日本文学全集』 池澤夏樹
韓国から見た「雑種文化論」―― 一つの例として 李成市
パネルディスカッション
雑種文化論と韓国・中国・日本 林慶澤・王中忱・樋口陽一・小関素明[司会]
寄稿
加藤周一『日本文学史序説』が意味すること 鷲巣力
あとがき――加藤周一の呼びかけに応じ「少数者」の矜恃と連帯を保って 鷲巣力
【編者/執筆者/訳者について】
三浦信孝(みうらのぶたか)
1945年生まれ。日仏会館顧問、中央大学名誉教授(フランス研究)。著書に『現代フランスを読む』(大修館書店、2002年)、編著に『自由論の討議空間』(勁草書房、2010年)、『戦後思想の光と影』(風行社、2016年)、訳書にB・ベルナルディ『ジャン゠ジャック・ルソーの政治哲学』(勁草書房、2014年)などがある。
鷲巣力(わしずつとむ)
1944年生まれ。著述業。立命館大学客員教授、加藤周一現代思想研究センター長(メディア論、戦後思想史)。著書に『「加藤周一」という生き方』(筑摩書房、2012年)『加藤周一はいかにして「加藤周一」となったか』(岩波書店、2018年)、編著に『加藤周一青春ノート』(人文書院、2019年)などがある。
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樋口陽一(ひぐちよういち)
1934年生まれ。東京大学名誉教授、日本学士院会員(憲法学)。国際憲法学会名誉会長。著書に、『近代国民国家の憲法構造』(東京大学出版会、1994年)、『加藤周一と丸山眞男』(平凡社、2014年)、『抑止力としての憲法』(岩波書店、2017年)などがある。
ピエール=フランソワ・スイリ(Pierre-François Souyri)
1952年生まれ。ジュネーヴ大学名誉教授(日本史)。著書に、Moderne sans être occidental. Aux origines du Japon aujourd̓hui, (Gallimard, 2016)、『フランス革命と明治維新』(共著、白水社、2018年)、『歴史におけるデモクラシーと集会』(編著、専修大学出版局、2003年)などがある。
小熊英二(おぐまえいじ)
1962年生まれ。慶応義塾大学教授(歴史社会学)。著書に、『単一民族神話の起源』(1995年)、『〈民主〉と〈愛国〉』(2002年)、『1968』(2009年)、『誰が何を論じているのか』(2017年、いずれも新曜社)などがある。
イルメラ・日地谷=キルシュネライト(Irmela Hijiya-Kirschnereit)
1948年生まれ。ベルリン自由大学教授(日本文学・日本文化)。著書に、『私小説 自己暴露の儀式』(平凡社、1992年)、編著に、『MISHIMA!』(昭和堂、2010年)、『〈女流〉放談』(岩波書店、2018年)などがある。
水村美苗(みずむらみなえ)
1951年生まれ。小説家、批評家。著作に『續明暗』(芸術選奨新人賞)、『私小説 from left to right』(野間文芸新人賞)、『本格小説』(読売文学賞)、『日本語が亡びるとき――英語の世紀の中で』(小林秀雄賞)、『母の遺産――新聞小説』(大佛次郎賞)などがある。
ソーニャ・アンツェン(Sonja Arntzen)
1945年生まれ。トロント大学名誉教授(日本古典文学)。訳書に、『狂雲集』(Ikkyû and the Crazy Cloud Anthology, University of Tokyo Press, 1986)、『蜻蛉日記』(The Kagerō Diary, University of Michigan Press, 1997)、『更級日記』(伊藤守幸との共訳、The Sarashina Diary, Columbia University Press, 2014)などがある。
クリストフ・サブレ(Christophe Sabouret)
1968年生まれ。フランス国立科学研究センター研究技官。著書にFukushima, l’apocalypse et après ? (Pascal Galodé éditeurs, 2011)、 訳書にKatô Shûichi, Le temps et l’espace dans la culture japonaise(CNRS-Éditions, 2009)などがある。
ジュリー・ブロック(Julie Brock)
1955年生まれ。京都工芸繊維大学教授(芸術哲学、比較文学)。編著に、『加藤周一における「時間と空間」』(かもがわ出版、2012年)、『受容から創造性へ』(国際高等研究所出版、2013年)、Les tiges de mil et les pattes du héron(2vol. CNRS Éditions, 2013)などがある。
山元一(やまもとはじめ)
1961年生まれ。慶応義塾大学大学院教授(憲法学)。著書に、『現代フランス憲法理論』(信山社、2014年)、『グローバル化時代の日本国憲法』(放送大学教育振興会、2019年)、編著に『グローバル化と法の変容』(共編、日本評論社、2018年)などがある。
三浦篤(みうらあつし)
1957年生まれ。東京大学大学院教授(西洋近代美術史)。著書に、『近代芸術家の表象』(東京大学出版会、2006年)、『エドゥアール・マネ』(KADOKAWA、2018年)、編著に『西洋美術の歴史』(全8巻、共編、中央公論新社)などがある。
片岡大右(かたおかだいすけ)
1974年生まれ。批評家、慶應義塾大学・東京大学ほか非常勤講師(フランス文学・社会思想史)。著書に、『隠遁者、野生人、蛮人』(知泉書館、2012年)、『共和国か宗教か、それとも』(共著、白水社、2015年)、訳書にデヴィッド・グレーバー『民主主義の非西洋起源について』(以文社、2020年)などがある。
海老坂武(えびさかたけし)
1934年生まれ。フランス文学者。著書に、『サルトル』(岩波新書、2005年)、『加藤周一』(岩波新書、2013年)、訳書に、サルトル『自由への道』(共訳、全6巻、岩波書店)、『家の馬鹿息子』(共訳、1-4巻、人文書院)などがある。
澤田直(さわだなお)
1959年生まれ。立教大学教授(フランス語圏文学・思想)。著書に、『ジャン゠リュック・ナンシー』(白水社、2013年)、『サルトルのプリズム』(法政大学出版局、2019年)、訳書に、フェルナンド・ペソア『新編 不穏の書、断想』(平凡社、2013年)などがある。
西谷修(にしたにおさむ)
1950年生まれ。東京外国語大学名誉教授(フランス文学・思想)。著書に、『世界史の臨界』(岩波書店、2000年)、『アメリカ 異形の制度空間』(講談社、2016年)、訳書に、パトリック・シャモワゾーほか『クレオールとは何か』(平凡社、2004年)などがある。
白井聡(しらいさとし)
1977年生まれ。京都精華大学専任講師(社会思想、政治学)。著書に、『未完のレーニン』(講談社、2007年)、『永続敗戦論』(太田出版、2013年)、『武器としての「資本論」』(東洋経済新報社、2020年)などがある。
ソーニャ・カトー(Sonja Kato)
1972年生まれ、加藤周一の養女。ウィーン大学大学院で修士号(歴史学)を取得。オーストリア放送協会に勤務後、オーストリア社会民主党に所属、2001年から2010年までウィーン市会議員を務める。
奈良勝司(ならかつじ)
1977年生まれ。広島大学准教授(明治維新史)。著書に、『明治維新と世界認識体系』(2010年)、『明治維新をとらえ直す』(2018年、いずれも有志舎)などがある。
孫歌(ソンカ)
1955年生まれ。中国社会科学院文学研究所研究員(日本政治史)。著書に、『竹内好という問い』(岩波書店、2005年)、『歴史の交差点に立って』(日本経済評論社、2008八年)、編著に『中国現代文学を読む』(東方書店、1994年)などがある。
池澤夏樹(いけざわなつき)
1945年生まれ。作家、詩人。著作に、『スティル・ライフ』(芥川賞)、『マシアス・ギリの失脚』(谷崎潤一郎賞)、『静かな大地』(親鸞賞)、『花を運ぶ妹』(毎日出版文化賞)など、編著に、『池澤夏樹=個人編集 世界文学全集』『池澤夏樹=個人編集 日本文学全集』(いずれも河出書房新社)などがある。
李成市(リソンシ)
1952年生まれ。早稲田大学教授(古代東アジア史)。著書に、『古代東アジアの民族と国家』(1998年)、『闘争の場としての古代史』(2018年、いずれも岩波書店)、編著に、『世界歴史大系 朝鮮史』(全2巻、共編、山川出版社)などがある。
林慶澤(イムキョンテク)
1960年生まれ。韓国国立全北大学校教授(文化人類学)。韓国文化人類学学会会長。著書に、『中心と周縁からみた日韓社会の諸相』(共著、慶応義塾大学出版会、2007年)、『日韓関係史 1965-2015 3』(共著、東京大学出版会、2015年)などがある。
王中忱(ワンツォンチェン)
1954年生まれ。中国清華大学教授(比較文学・比較文化)。著書に、『越境と想像――二〇世紀中国日本文学比較論集』(中国社会科学出版社、2001年)、『走読記――中国と日本の狭間で:文学雑記』(中央編訳出版社、2007年)などがある。
小関素明(おぜきもとあき)
1962年生まれ。立命館大学教授(近代日本政治思想史)。著書に、『日本近代主権と立憲政体構想』(日本評論社、2014年)がある。
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小林新樹(こばやししんじゅ)
1946年生まれ。フランス語通訳。経済・技術分野の会議通訳で活躍。
三島憲一(みしまけんいち)
1942年生まれ。大阪大学名誉教授(ドイツ思想史)。著書に、『ニーチェ』(岩波書店、1987年)などがある。
伊藤守幸(いとうもりゆき)
1954年生まれ。学習院女子大学教授(平安文学)。著書に、『更級日記の遠近法』(新典社、2014年)などがある。