9月の新刊:プルーストとの饗宴

2020年 9月 10日 コメントは受け付けていません。

書影 プルーストとの饗宴_書影プルーストとの饗宴
中野知律(著)

判型: A5判上製
頁数:469頁
定価:5800円+税
ISBN:978-4-8010-0515-0 C0098
装幀:間村俊一
9月28日頃発売!

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プルーストをめぐる美味しい文学論。
記憶と結びついたマドレーヌ菓子,芸術創造のごときブッフ・モード,舌平目の変身譚,アスパラガスの官能性……さまざまな材料を時をかけて風味豊かにまとめあげられた『失われた時を求めて』において,「文学」と「料理」はいかなる位置をとりうるのか? 食をめぐる文化史を踏まえ,世紀末に溢れた美食言説に逆らう作家の小説美学が託されたテクストを味読していく,壮大な饗宴への誘い。

プルーストと美食――その関係が常に自明視され,おびただしい解釈と伝説が積み上げられてきたこの主題に、新たな角度から踏み込むことはできるのか。本書はその答えを模索しようとしたものである。(…)今此処に対して働くべき感覚は現在時に縛られることなく,また,欲望は物への執着から解放されて,記憶と想像力が織りなす夢想のなかに広がっていく。それをすべて余さず言葉に結晶化させた饗宴に,プルーストは私たちを招き入れてくれるのである。「あとがき」より



目次
序章 『失われた時を求めて』をめぐる美食の神話と伝説 

第Ⅰ部 饗宴の仕度――プルーストの裏台所
第一章 美食の語彙――負の記憶との闘い
第二章 美食と文学のマリアージュ?――一九世紀の美食言説に逆らって  
第三章 美食、社交、文学  
第四章 「文学的」食卓の誘惑  
第五章 美食 vs. 宗教 vs. 社会 vs. 芸術――「文学」の位置は……  

第Ⅱ部 プルーストとの饗宴
1 レオニー叔母の部屋――ジャム壺の微睡、林檎パイの火照り
2 菩提樹の記憶――ハーブティーの香り
3 喋り出すマドレーヌ――聖女の誘惑  
4 日曜日の食卓――祝別されたパンをとりまく料理の歳時記 
5 土曜日の食卓――瀆聖の仔牛料理  
6 台所裏の惨劇――若鶏の怨み、アスパラガスの懲らしめ  
7 外交官との晩餐――ブッフ・モードの勝利  
8 他所の食卓――ユイスマンスの「ブッフ・ア・ラ・モード」と「ポトフ」 
9 ジルベルトのお茶――そびえ立つチョコレートケーキ  
10 バルベックの海の幸――舌平目の変身譚  
11 料理と名――名 薔薇と梨  
12 ゲルマント邸の食卓――青鵐とシャトー・ディケムの高貴なマリアージュ
13 ヴェルデュラン邸の食卓――「日本風サラダ」の怪
14 パリの物売りの声――淫らな魚貝、艶かしい野菜  
15 氷菓と熱い欲望――世界を舐めとる  

注  
図版出典一覧  
あとがき

著者について
中野知律(なかのちづ)
1959年、愛媛県に生まれる。東京大学教養学部卒。同大学大学院人文科学研究科仏語仏文学博士課程満期退学。パリ第4大学博士(文学)。現在,一橋大学大学院社会学研究科教授。専攻,フランス文学。主な著書に,『プルーストと創造の時間』(名古屋大学出版会,2013年),編著に,『ジェンダーから世界を読むⅡ 表象されるアイデンティティ』(共編,明石書店,2008年),訳書に,クリステヴァ『プルースト――感じられる時』(筑摩書房,2005年)などがある。

関連書
プルースト的絵画空間/真屋和子/6500円+税
印象・私・世界――『失われた時を求めて』の原母体/武藤剛史/3000円+税
〈生表象〉の近代――自伝・フィクション・学知/森本淳生編/7500円+税

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