2月の新刊:鈍色の戦後——芸術運動と展示空間の歴史
2021年 2月 24日 コメントは受け付けていません。
鈍色の戦後
芸術運動と展示空間の歴史
辻󠄀泰岳(著)
判型:A5判上製
頁数:353頁
定価:4500円+税
ISBN:978-4-8010-0539-6 C0070
装幀:Gaspard Lenski
2月下旬頃発売!
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展示空間からみた戦後の美術史
モダニズムが浸透する戦後において、作家、評論家、歴史家たちは分野を超えて共同し、そのプリズムは展示空間に投射された――
1940年代から1960年代において画期をなした展示空間の歴史を綿密に検討し、「伝統」「デザイン」「環境」を論点に《鈍色の歴史》を立体的に描き出す。
《長きにわたる大戦を経て、展示空間はデモクラシーと国際的な交流を「伝統」「デザイン」「環境」として視覚化する。その中ではひきつづきジャパニーズ・モダン日本の近代という固有の色が模索されたが、すでに近代とは西洋だけを指すものではなく、その歩みが遅かろうと早かろうと、それぞれの近代がそれぞれに成り立っていた。さらにそれらは相互に混じり合っており、絵筆を握りしめた一人の作家が均質に塗り込めようとした画面の奥には、それが展示された空間が拡がっていた。鈍色の戦後とは、展示空間でかたちづくられたある時代の像なのだ。》(「むすびにかえて」より)
【目次】
はじめに
第一部 伝統――鈍色の足場
第一章 占領下のアントニン・アンド・ノエミ・レーモンド――「Japanese Household Objects」展(一九五一年)
1 はじめに――文化の外交
2 わたしはカーペットバッガーではない
3 ロックフェラー三世の報告書と外交の視覚化
4 フィリップ・ジョンソンの企図と八木一夫の花器
5 リーダーズ・ダイジェスト東京支社の「現代日本陶磁展」
6 おわりに――わたしたちのモダニズム
第二章 方法としてのディスプレー――国立近代美術館とその会場(一九五二年)
1 はじめに――会場の設計
2 国立近代美術館という施設
3 芸術の総合――特別展のディスプレー
4 展示空間の中の「現代の眼」
5 おわりに――おぼつかなさ
第三章 丹下健三と岡本太郎による壁画の設置――「メキシコ美術展」(一九五五年)
1 はじめに――伝統をめぐる論争
2 「メキシコ美術展」の会場
3 壁画――建築物と絵画の接平面
4 柱と梁の政治学
5 おわりに――伝統の調合
第二部 デザイン――鈍色の議場
第四章 浜口隆一とアーサー・ドレクスラーの交錯――「二〇世紀のデザイン」展(一九五七年)
1 はじめに――デザインと功罪
2 「Good Design」展
3 グッドデザインコーナー
4 「二〇世紀のデザイン」展および「20th Century Design」展
5 おわりに――巡回するデザイン
第五章 メタボリズムの場景――「Visionary Architecture」展(一九六〇年)
1 はじめに――ワールド・デザイン・カンファレンス
2 リージョナリズムをめぐる議論とその受容
3 「Visionary Architecture」展の目玉
4 ヴィジョナリー・アーキテクチャーとしてのメタボリズム
5 自国をいかに表すか
6 Too Far East is West
7 おわりに――極東の絵図
第三部 環境――鈍色の広場
第六章 百貨店のインターメディア――「空間から環境へ」展(一九六六年)
1 はじめに――エレクトロニクスを手の物に
2 選取見取――「空間から環境へ」展の会場
3 テクノロジーをどのようにとらえるか
4 おわりに――見えない共同
第七章 大阪が学んだこと――モントリオール万国博覧会(一九六七年)
1 はじめに――冷戦下の博覧会
2 時代遅れのパビリオン
3 モントリオールの環境芸術――磯辺行久
4 拡張する幕スクリーンと映写――坂根厳夫
5 インヴィジブル・モニュメントとしてのお祭り広場
6 なぜExpo にゆくのですか
7 おわりに――次なる里程標
むすびにかえて
注
公刊されていない資料
年表索引
あとがき
【著者について】
辻󠄀泰岳(つじやすたか)
1982年生まれ。東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。博士(工学)。日本学術振興会特別研究員、コロンビア大学客員研究員、慶應義塾大学特任助教などを経て、現在は、筑波大学助教。美術史および建築史。共著に、Invisible Architecture(Silvana Editoriale, 2017)、『ミュージアムの憂鬱――揺れる展示とコレクション』(水声社、二〇二〇年)などがある。
【関連書】
ミュージアムの憂鬱——揺れる展示とコレクション/川口幸也編/6000円+税