12月の新刊:美学のプラクティス
2021年 12月 9日 コメントは受け付けていません。
美学のプラクティス
星野太(著)
判型:四六判上製
頁数:232頁
定価:2500円+税
ISBN:978-4-8010-0615-7 C0010
装幀:宇平剛史
1月上旬頃発売!
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美学、この不純なる領域
たえず懐疑的な視線にさらされ、「居心地の悪さ」を指摘されてきた学問領域、美学……。「崇高」「関係」「生命」という3つのテーマをめぐって、抽象と具体のあいだで宙吊りにされてきた美学の営為を問い直す、ひとつの実践の記録。美・芸術・感性を越境する批判的思考のきらめきが、いまここに。
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美と崇高――これら二つはたがいに相補的な美的範疇であるとされながら、崇高は最終的に他者への共感を呼び覚ますものとして(バーク)、あるいは理性への尊敬を目覚めさせるものとして(カント)、いずれも道徳的な範疇へとすり替えられてしまう。しかし、そこでひそかに隠されているのは、それでも人はその対象に惹きつけられてしまうという、ある種の疚しさではないか。
重要なのは、魅惑と拒絶が入り交じる、その曖昧で仄暗い感情から目を背けないことだ。その感情を抑圧しつづけるかぎり、人はカタストロフによる崩壊を埋めあわせるための、偽の紐帯に屈することをまぬがれない。ばらばらになった人々に連帯を呼びかける「美しい」言葉には、真摯なものといかがわしいものとがある。自然と人為の別を問わず、そうしたカタストロフのあとに、後者のたぐいの言葉がかわるがわる考案されていくさまを、われわれはこれまで何度も目にしてきたではないか。(「カタストロフと崇高」より)
【目次】
序論 美学、この不純なる領域
第Ⅰ部 崇高
カタストロフと崇高
戦後アメリカ美術と「崇高」――ロバート・ローゼンブラムの戦略
感性的対象としての数――カント、宮島達男、池田亮司
第Ⅱ部 関係
ハイブリッドな関係性
ソーシャル・プラクティスをめぐる理論の現状――社会的転回、パフォーマンス的転回
リレーショナル・アートをめぐる不和――ジャック・ランシエールとニコラ・ブリオー
第Ⅲ部 生命
生成と消滅の秩序
生きているとはどういうことか――ボリス・グロイスにおける生の哲学
第一哲学としての美学――グレアム・ハーマンの存在論
初出一覧
あとがき
【著者について】
星野太(ほしのふとし)
1983年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。現在、東京大学大学院総合文化研究科准教授。専攻は美学、表象文化論。主な著書に、『崇高の修辞学』(月曜社、2017年)、主な訳書に、ジャン=フランソワ・リオタール『崇高の分析論――カント『判断力批判』についての講義録』(法政大学出版局、2020年)などがある。
【関連書】
思考する芸術――非美学への手引き アラン・バディウ/3200円+税
没入と演劇性――ディドロの時代の絵画と観者 マイケル・フリード/5000円+税
カドミウム・イエローの窓――あるいは絵画の下層 ユベール・ダミッシュ/4000円+税
ジャパノラマ――1970年以降の日本の現代アート 長谷川祐子(編)/3000円+税
ドナルド・ジャッド――風景とミニマリズム 荒川徹/3000円+税