編集部通信/書評『ミノタウロスの誘惑』
2010年 12月 3日 コメントは受け付けていません。
8月下旬に刊行した『ミノタウロスの誘惑』は好評で、
実際に読んだ人からの反応も、「訳文がよく工夫されていて読みやすく、
イメージがふくらむ」といった声が多く寄せられています。
そして、少し報告が遅くなりましたが、二つの女性誌に好意的な書評が
本の写真つきで掲載されました。
『フィガロ・ジャポン』12月号では、
「自由を求め続けて生涯を過ごしたアナイス・ニンが、
旅と音楽と人生を重ね、半世紀前に著した情熱の書」
と取り上げられ、『Spur』12月号では、
「いち早く女性の性をテーマにした小説を書き、
多くの文学者とも浮名を流した著者の、1961年の作品が邦訳。
メキシコのリゾート地を訪れたジャズ・ピアニストのリリアンが、
南国の風に吹かれ、現地の人々と交流するうち、
他者とも自己ともより深く対話してゆく。決して古びていない、
言葉のきらめきが味わえる」
と紹介されました。また、『本の雑誌』12月号で、山崎まどかさんが、
「リリアンが音楽を奏でるシーンはほとんどないが、
その描写の全てが音楽的であり、その旋律に酔う」
と評しています。さらには、「日本ヘンリー・ミラー協会」の
ニューズレターにも佐竹由帆さんによる書評が掲載されていますので、
ここに一部紹介しておきます。
「……ニンの小説は読みやすいものではないと言われることが多いようだが、
本作の大野氏の訳はとても読みやすかった。比喩の多い
詩的な美しさを湛えたニンの文章を美しくかつ読みやすく訳すのは
労力のいる仕事だっただろうと推察するが、
訳文は苦労を感じさせない見事な仕上がりである。……」
◆
●円熟味を増したニンの名篇——本邦初訳。
ミノタウロスの誘惑
アナイス・ニン/大野朝子訳四六判上製240頁/定価2500円+税
ISBN 978-4-89176-800-3 C0097
南国のゆるやかな空気のなかで
太陽がまぶしいメキシコの華やかなリゾート地。
米国人ジャズ・ピアニストのリリアンは
現地のさまざまな人物たちとの出会いを通して
自分の本当の姿と向き合うようになる……
旅と音楽をモチーフに色鮮やかに描く珠玉の小説。
●好評発売中!
人工の冬
アナイス・ニン/矢口裕子訳四六判上製328頁 定価2800円+税
異端の愛こそ美しい——
アメリカで発禁となっていた先駆的な性愛小説三篇が
原形のまま70年ぶりに復活。