4月の新刊:ソヴィエト科学の裏庭——イデオロギーをめぐる葛藤と共存《水声文庫》
2023年 3月 24日 コメントは受け付けていません。
ソヴィエト科学の裏庭
イデオロギーをめぐる葛藤と共存
《水声文庫》
金山浩司(編)
藤岡毅+セルゲイ・コルサコフ+市川浩+コンスタンチン・トミーリン+齋藤宏文(執筆)
判型:四六判上製
頁数:306頁+モノクロ別丁4頁
定価:3500円+税
ISBN:978-4-8010-0708-6 C0022
装幀:宗利淳一
4月中旬発売!
閉鎖された〈イデオクラシー国家〉における科学研究の実像
スターリン時代の哲学者・科学者たちは、教条的なイデオロギーと権力に翻弄されるばかりであったのか。
マルクス主義、遺伝学、量子力学、植林計画をめぐる論争を中心に、闘争する研究者たちの科学的探求の試みに光を当てる、ソヴィエト科学史研究の最前線。
【目次】
序章 ソヴィエト・マルクス主義哲学史の再解釈に向けて 金山浩司
Ⅰ イデオロギーの側から
第1章 ソヴィエトにおける「マルクス主義」公式化の始まり――1920年―1930年代始めの哲学・科学論争 藤岡毅
第2章 〝メンシェヴィキ化する観念論〟――アブラム・デボーリン セルゲイ・コルサコフ
第3章 〝走狗〟の肖像――マルク・ミーチン セルゲイ・コルサコフ
第4章 流浪する国際主義者――エルネスト・コーリマンにおける自然科学と哲学 金山浩司
Ⅱ 科学の側から
第5章 〝愛国的・唯物論的物理学者〟――ヴァシーリー・ノズドリョフとモスクワ国立大学物理学部の教員たち 市川浩
第6章 量子力学の〝唯物論的ペレストロイカ〟――ヤーコヴ・テルレツキー 市川浩
第7章 〝異化〟と〝同化〟――相対性理論とソヴィエト・マルクス主義の邂逅 コンスタンチン・トミーリン
第8章 生物界と自然環境を〝作り変える〟科学思想の理念と現実――ダーウィン、ヴェルナツキイ、スターリン、ルィセンコ 齋藤宏文
人名索引
【編者・執筆者について】
金山浩司(かなやまこうじ)
1979年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。現在、九州大学基幹教育院准教授。専攻、ソ連科学技術史、日本技術論論争史。主な著書に、『神なき国の科学思想――ソヴィエト連邦における物理学哲学論争』(東海大学出版部、2018年)などがある。
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藤岡毅(ふじおかつよし)
1954年生まれ。大阪大学大学院基礎工学研究科博士前期課程修了。工学修士。博士(比較文化)。現在、同志社大学講師。専攻、生物学史、ロシア・ソ連科学史。主な著書に、『ルィセンコ主義はなぜ出現したか――生物学の弁証法化の成果と挫折』(学術出版会、2010年)などがある。
セルゲイ・コルサコフ (Сергей Николаевич Корсаков)
1973年生まれ。モスクワ国立大学大学院修了。哲学博士。現在、ロシア科学アカデミー・哲学研究所主任研究員。ボリス・ゲッセン、イヴァン・ルポール、ヴラジーミル・アドラツキーらソ連のマルクス主義哲学者の業績の再検討を多く手がける。
市川浩(いちかわひろし)
1957年生まれ。大阪市立大学大学院経営学研究科博士課程後期修了。博士(商学)。広島大学名誉教授。専攻、科学技術史。主な著書に、『冷戦と科学技術――旧ソ連邦 一九四五~一九五五年』(ミネルヴァ書房、2007年)、『ソ連核開発全史』(筑摩書房、2022年)などがある。
コンスタンチン・トミーリン (Константин Александрович Томилин)
1962年生まれ。モスクワ工業物理専門学校卒業。現在、ロシア科学アカデミー・S.I.ヴァヴィーロフ名称自然科学史゠技術史研究所上級研究員。ソ連における現代物理学理論の展開に関する著書・論文を多数発表している。
齋藤宏文(さいとうひろふみ)
1979年生まれ。東京工業大学大学院社会理工学研究科人間行動システム専攻博士課程修了。博士(学術)。現在、九州工業大学教養教育院人文社会系准教授。専攻、生物学史、ロシア・ソ連科学史。
【関連書】
ノースフェーラ――惑星現象としての科学的思考《叢書・二十世紀ロシア文化史再考》/ヴェルナツキイ/梶雅範訳/4500円+税
〈超越性〉と〈生〉との接続ーー近現代ロシア思想史の批判的再構築に向けて/貝澤哉+杉浦秀一+下里俊行編/4000円+税
ソヴィエト宮殿——建設計画の誕生から頓挫まで 鈴木佑也/6000円+税
革命の印刷術——ロシア構成主義・生産主義のグラフィック論 河村彩編訳/E・リシツキー他/3200円+税