10月の新刊:21世紀のスペイン演劇②

2023年 10月 16日 コメントは受け付けていません。

21世紀のスペイン演劇2_書影21世紀のスペイン演劇②
ライラ・リポイ+フアン・カルロス・ルビオ+フアン・マヨルガ+パチョ・テリェリア+ヘスス・カンポス・ガルシーア+ニエベス・ロドリーゲス+カロリーナ・ロマン(著)
田尻陽一(編)
田尻陽一+岡本淳子(訳)

判型:A5判上製
頁数:278頁
定価:4000円+税
ISBN:978-4-8010-0760-4 C0374
装幀:滝澤和子
10月下旬発売!

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スペイン内戦、異端審問、移民問題、資本主義、セクシャル・アイデンティティ…
2019年から2022年の間にスペインで上演された作品を収録。
あるいはスペイン史の悲劇を、あるいは葛藤を抱える現代人の姿を克明に舞台空間に映し出す、気鋭の劇作家による7編の演劇。

人生ってタバコみたいだって思わないか? 火をつける前は、これからだって期待がある。火をつけて命を与える。火がついた先はこれから素晴らしい夜が待ち受けていると言ってるみたいだ。一口目は甘いリンゴの味、ハッカの香り。そうだな、なめらかな白磁の釉薬って感じかな。でも俺たち、妖術師の魔術にコロッとひっかかってる。あっという間にタバコは燃え尽き、唇を火傷するまで火はすぐそこだ。口の中はいがらっぽい。吸殻を床に捨てる。平然と踏みつぶし、あとは忘れる。残るのは煙だけ。で、一巻の……終わり。
『膵臓』より




目次
ライラ・リポイ『迷子になった子どもたち』 
フアン・カルロス・ルビオ『アリゾナ――アメリカのミュージカル悲劇』 
フアン・マヨルガ『粉々に砕け散った言葉』 
パチョ・テリェリア『膵臓――生と死を巡る悲喜劇、もしくはどのように命を賭けるか』
ヘスス・カンポス・ガルシーア『そして家は成長して……』
ニエベス・ロドリーゲス『マリーア・サンブラーノの墓』 
カロリーナ・ロマン『壊れたおもちゃ』

著者について
ライラ・リポイ(Laila Ripoll) 
1964年、マドリード生まれ。87年にマドリードの舞台芸術高等学院(RESAD)の演技科を卒業。国立舞台芸術・音楽学校(INAEM)で演劇教育法を修得したほか、他の機関で舞台美術やスペイン古典演劇、脚本技術についても学んだ。91年に劇団ミコミコーンを旗揚げし、古典劇や自作の演出を手掛け、現在も活動を続けている。様々な教育機関で演技や古典演劇のセミナーを開き、『プリメル・アクト』などの主要な演劇雑誌に定期的な寄稿もしている。劇作家としてだけでなく演出家としての評価も高く、2019年末からフェルナン・ゴメス劇場の芸術監督を務める。
フアン・カルロス・ルビオ(Juan Carlos Rubio)
1967年、コルドバ県のモンティーリャ生まれ。マドリードの舞台芸術高等学院(RESAD)でテキスト解釈を専攻。卒業後、俳優として舞台やテレビでの活動を開始する。1992年からテレビや映画の脚本を書き始める。1997年に『今夜は自分だけのもの』で劇作家デビュー。2007年に自作の『煙』を演出してからは演出家としても活躍。
フアン・マヨルガ(Juan Mayorga)
1965年、マドリード生まれ。1993年、ホセ・ラモン・フェルナンデス、ラウル・エルナンデス・ガリドと戯曲研究と共同創作をする「演劇工房」を設立した。演出家ギリェルモ・エラスが加わることで上演活動も開始した。これまでにマックス賞最優秀劇作家賞は三度も受賞しており、スペイン最高の文学賞アストゥリア皇太子賞を2022年に受賞している。2018年にはレアル・アカデミアの会員に推挙され、22年にはアバディア劇場の芸術監督に就任している。ここに翻訳した『粉々に砕け散った言葉』は2011年に発表され、国民劇文学賞、メリダ演劇賞、カルデロン・デ・ラ・バルカ賞を受賞し、何度も再演されている。
パチョ・テリェリア(Patxo Telleria)
1960年、ビルバオ生まれ。本名はFrancisco Javier Telleria。PatxoはFranciscoのバスク語による愛称。バスク人の映画俳優、映画監督、映画脚本家、劇作家。映画の仕事が多いが、バスク語でもカスティーリャ語でも劇作をしている。もちろん、カスティーリャ語で書いたものはバスク語に直し、バスク地方で上演している。この『膵臓』もその一例で、カスティーリャ語で書かれた戯曲を、この巻に収めたフアン・カルロス・ルビオの演出でマドリードで上演したところ大当たりをとり、ついでバスク語に直しバスク地方でも上演されている。
ヘスス・カンポス・ガルシーア(Jesús Campos García)
1938年、アンダルシア州のハエン生まれる。フランコ体制下の1970年頃に戯曲の執筆を始め、1971年に上演許可を申請した『激高』は検閲局により上演禁止となったが、翌72年の『ある劇作家と検閲委員会との結婚』には上演許可が下りた。フランコ体制の終焉する1975年までに全10作の上演許可申請が検閲局に出されており、検閲を経験した数少ない現役作家のひとりである。短編戯曲や児童向けの戯曲も数多く執筆している。1998年から2015年までの長期にわたって劇作家協会の会長を務め、退任後は名誉会長になっている。
ニエベス・ロドリーゲス(Nieves Rodríguez)
1983年、マドリード生まれ。マドリードの舞台芸術高等学院(RESAD)卒。マドリード・コンプルテンセ大学修士号、国立通信教育大学修士号取得。現在はマドリード身体表現学校の教授。
カロリーナ・ロマン(Carolina Román)
1972年、アルゼンチンのフォルモサ生まれ。ブエノス・アイレスで演劇を学び、テレビ、映画で活躍。1990年代にスペインに活動場所を移し、映画、テレビに出演。アルゼンチンからの移民を扱った『組み立てる半ば』(2015年)では舞台女優としても注目を浴び、マックス賞演出部門、戯曲部門の受賞候補となり、ウエスカ国際演劇市では最高上演賞を獲得。『壊れたおもちゃ』(2019年)は、マックス賞だけでも上演賞、劇作家賞、舞台美術賞、衣装デザイン賞、主演賞(2人)の6つの部門で最終候補となり、リオハ州のテアトロ・ガルナチャ賞を受賞。

編者・訳者について
田尻陽一(たじりよういち)
1943年生まれ。関西外国語大学名誉教授。専門はスペイン演劇。劇団クセックACTでスペイン語演劇の翻訳・脚本を担当。主な訳書に、『現代スペイン演劇選集』全3巻(監修・翻訳、カモミール社、2014~16年)、カルデロン『人生は夢』(『ベスト・プレイズ』第1巻、2011年)、ロペ・デ・ベガ『フエンテオベフーナ』(同、第2巻、2020年、以上論創社)、『セルバンテス全集5 戯曲集』(編集・翻訳、2018年)、『21世紀のスペイン演劇』第1巻(編集・翻訳、2019年、以上水声社)などがある。
岡本淳子(おかもとじゅんこ)
1961年生まれ。大阪大学大学院人文学研究科外国学専攻准教授。専門はスペイン現代演劇。主な著書に、『現代スペインの劇作家アントニオ・ブエロ・バリェホ――独裁政権下の劇作と抵抗』(大阪大学出版会、2014年)、主な訳書に、パロマ・ペドレロ『キス、キス、キス』(『現代スペイン演劇選集』第2巻、2015年)、ライラ・リポイ『聖女ペルペトゥア』(同、第3巻、2016年、以上カモミール社)、セルバンテス『幸福なならず者』(『セルバンテス全集5 戯曲集』、2018年)、ブランカ・ドメネク『さすらう人々』(『21世紀のスペイン演劇』第1巻、2019年、以上水声社)などがある。

関連書
21世紀のスペイン演劇①/4000円+税

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