12月の新刊:マーガレット・アトウッド『侍女の物語』を読む《水声文庫》
2023年 11月 22日 コメントは受け付けていません。
マーガレット・アトウッド『侍女の物語』を読む
フェミニスト・ディストピアを越えて
《水声文庫》
加藤めぐみ・中村麻美(編)
マーガレット・アトウッド、奥畑豊、三村尚央、小川公代、生駒夏美、渡部桃子、小谷真理、高村峰生、安保夏絵、シュテファン・ヴューラー、石倉綾乃(著)
西あゆみ(訳)
判型:四六判上製
頁数:326頁
定価:3500円+税
ISBN:978-4-8010-0685-0 C0098
装幀:宗利淳一
12月下旬発売!
奴らに虐げられるな
1985年に発表された近未来小説『侍女の物語』と、2019年の続編『誓願』。
男性優位の独裁国家を描く暗澹たるディストピア文学が、なぜ今日、フェミニスト・プロテスト文化の象徴として耳目を集めるのか。
女性の身体と連帯、歴史と記憶、声と語り、エコロジー、セクシュアリティ/ジェンダー、ケア……
現実世界の諸相を束ねて生み出された物語世界に、現在そして未来を生き抜くための希望を探る。
【目次】
序――2023年、『侍女の物語』のアクチュアリティを問う 加藤めぐみ
『侍女の物語』はフェミニスト・ディストピアか? マーガレット・アトウッド(西あゆみ訳)
Ⅰ ギレアデ共和国のリアル
ビッグ・シスターとシスターフッド――アトウッド『誓願』における「弱い」独裁者 奥畑豊
[付論]アメリカ・カナダの〈地下女性鉄道〉――逃亡の協力者と緩衝地帯マップ 安保夏絵
社会生物学者リンプキンの謀略――『侍女の物語』『誓願』におけるミツバチと生政治 加藤めぐみ
勇気をこめて振り返る――抵抗の記念碑としての『誓願』の石像たち 三村尚央
アトウッドのエコ・ディストピア――『侍女の物語』から『マッドアダム』まで 中村麻美
[コラム]性別二元論というディストピア――『侍女の物語』関連作品を読む 中村麻美
Ⅱ 女性の身体/連帯
ケアの目覚め――『侍女の物語』から『誓願』へ 小川公代
未来に託す身体のメッセージ――『フランケンシュタイン』、『侍女の物語』、『誓願』を繫ぐ声・身体・命 生駒夏美
「これまでに愛したのはあなただけ」――レズビアン・ロマンスとして読む『侍女の物語』と『誓願』 渡部桃子
フェミニストSFとしての『侍女の物語』 小谷真理
『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』においてセリーナ、モイラ、ジューンのマザーフッドと代理出産が問うこと 高村峰生
[コラム]ジューン/オブフレッドのレジスタンス 石倉綾乃
[付論]日本のフェミニストSF文学はなぜ、最初からディストピア的色彩が強かったのか シュテファン・ヴューラー
あとがき 中村麻美
【編者/著者/訳者について】
加藤めぐみ(かとうめぐみ)
都留文科大学教授。イギリス文学・文化。著書に、『英国ミドルブラウ文化研究の挑戦』(共著、中央大学出版部、2018年)、『カズオ・イシグロと日本――幽霊から戦争責任まで』(共著、水声社、2020年)、『ジョージ・オーウェル『一九八四年』を読む――ディストピアからポスト・トゥルースまで』(共著、水声社、2021年)などがある。
中村麻美(なかむらあさみ)
神戸大学専任講師。イギリス文学、ユートピア・ディストピア文学。著書に、『ジョージ・オーウェル『一九八四年』を読む――ディストピアからポスト・トゥルースまで』(共著、水声社、2021年)、論文に、“Nostalgia as a Means of Oppression, Resistance and Submission: A Study of Dystopian and Homecoming Novels”(Ph.D. Dissertation, University of Liverpool, 2017)、“On the Uses of Nostalgia in Kazuo Ishiguro’s Never Let Me Go”(Science Fiction Studies, vol. 48, no. 1, 2021)などがある。
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奥畑豊(おくはたゆたか)
日本女子大学准教授。イギリス現代文学。著書に、Angela Carter’s Critique of Her Contemporary World: Politics, History, and Mortality(Peter Lang, 2021)、『ハロルド・ピンター――不条理演劇と記憶の政治学』(彩流社、2021年)、『ビッグ・ブラザーの世紀――英語圏における独裁者小説の系譜学』(小鳥遊書房、2021年)などがある。
三村尚央(みむらたかひろ)
千葉工業大学教授。イギリス文学、記憶研究(Memory Studies)。著書に、『カズオ・イシグロと日本――幽霊から戦争責任まで』(共著、水声社、2020年)、『記憶と人文学――忘却から身体・場所・もの語り、そして再構築へ』(小鳥遊書房、2021年)、『カズオ・イシグロを読む』(水声社、2022年)などがある。
小川公代(おがわきみよ)
上智大学教授。ロマン主義文学、医学史。著書に、『ジョージ・オーウェル『一九八四年』を読む――ディストピアからポスト・トゥルースまで』(共著、水声社、2021年)、『ケアの倫理とエンパワメント』(講談社、2021年)、『ケアする惑星』(講談社、2023年)、『世界文学をケアで読み解く』(朝日新聞出版、2023年)などがある。
生駒夏美(いこまなつみ)
国際基督教大学教授。イギリス文学、日本文学、ジェンダー・セクシュアリティ研究。著書に、『欲望する文学――狂女で読み解く日英ジェンダー批評』(英宝社、2007年)、論文に、「人形になりたい――身体と生殖をめぐるポスト・ウーマンの語り」(『思想』2019年11月)、“Monstrous Marionette: The Tale of a Japanese Doll by Angela Carter”(Re-Orienting the Fairy Tale: Contemporary Fairy-Tale Adaptations across Cultures, Wayne State UP, 2020)などがある。
渡部桃子(わたなべももこ)
東京都立大学名誉教授。アメリカ文学。著書に、『よくわかる文化史』(共著、ミネルヴァ書房、2020年)、論文に、「怒り、情熱、そして愛――アドリエンヌ・リッチの詩と死」(『現代詩手帖』2012年11月)、訳書に、『ヘレン・ケラーまたは荒川修作』(新書館、2010年)などがある。
小谷真理(こたにまり)
評論家。著書に、『エイリアン・ベッドフェロウズ』(松柏社、2004年)、『星のカギ、魔法の小箱――小谷真理のファンタジー&SF案内』(中央公論新社、2005年)、『性差事変――平成のポップ・カルチャーとフェミニズム』(青土社、2021年)などがある。
高村峰生(たかむらみねお)
関西学院大学教授。アメリカ文学、比較文学。著書に、『触れることのモダニティ――ロレンス、スティーグリッツ、ベンヤミン、メルロ=ポンティ』(以文社、2017年)、『接続された身体のメランコリー――〈フェイク〉と〈喪失〉の21世紀英米文化』(青土社、2011年)、『ジョージ・オーウェル『一九八四年』を読む――ディストピアからポスト・トゥルースまで』(共著、水声社、2021年)などがある。
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安保夏絵(あんぼなつえ)
中部大学助教。英語圏現代文学。論文に、「21世紀に読む『侍女の物語』(The Handmaid’s Tale)――アトウッド作品における女性、身体、アメリカ」(『言語文化学』大阪大学言語文化学会、2018年3月)などがある。
シュテファン・ヴューラー(Stefan Würrer)
武蔵大学助教、国際基督教大学ジェンダー研究センター研究員。フェミニズム・クィア批評、日本文学、表象文化論。著書に、『読むことのクィア――続・愛の技法』(共著、中央大学出版部、2019年)、『ミヤギフトシ 物語を紡ぐ』(共著、水声社、2023年)、Beyond Diversity: Queer Politics, Activism, and Representation in Contemporary Japan(共編著、Düsseldorf University Press, 2024)、論文に、“A Short History of Ambivalence Towards the Feminist Utopia in Japanese Society”(Science Fiction Studies, 2022)などがある。
石倉綾乃(いしくらあやの)
大阪大学言語文化研究科博士後期課程所属。ポストコロニアル文学。
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西あゆみ(にしあゆみ)
九州大学助教。英語圏文学。論文に、 “Complexity of Silence: Disability and Narrative Strategy in J. M. Coetzee’s Life & Times of Michael K”(Correspondence, 2022)、“A Hope for Feminist Friendship across the Colour Bar?: The Question of Alterity and Realist Form in Nadine Gordimer’s July’s People”(『黒人研究』黒人研究学会、2022年3月)などがある。
【関連書】
ジョージ・オーウェル『一九八四年』を読む――ディストピアからポスト・トゥルースまで/秦邦生編/3000円+税
カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』を読む――ケアからホロコーストまで/田尻芳樹・三村尚央編/3000円+税
鉤十字の夜/キャサリン・バーデキン/2500円+税