3月の新刊:身体の言語——十八世紀フランスのバレエ・ダクシオン

2024年 2月 20日 コメントは受け付けていません。

身体の言語_書影身体の言語
十八世紀フランスのバレエ・ダクシオン
川野惠子(著)

判型:A5判上製
頁数:314頁
定価:5000円+税
ISBN:978-4-8010-0791-8 C0010
装幀:藤谷恭子
3月中旬頃発売!

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〈台詞/ロゴス〉から〈身体〉への転換点
18世紀に演劇的な筋立てをもつ舞踊作品が流行し、その動向は舞踊史において《バレエ・ダクシオン》と名付けられる――。
コンディヤック、ディドロの言語論、メネトリエ、カユザック、ノヴェールの舞踊論をひもときながら、舞踊がひとつの芸術ジャンルとして確立する背景を丁寧に辿ることにより、〈身体で語る舞踊〉がいかにして誕生したのかを美学的視点から追求する。

《身体の言語には、観念を模倣し、観客に一方的に伝達する古典的な舞台空間を、観客と作者が相互にやり取りをする動的な舞台空間へと変革する力がある。(……)これは17世紀から18世紀にかけて、筋(アクシオン)という言葉/分節音言語の伝統に身振り(アクシオン)という身体の言語/像が取って代わる転覆に起因した。バレエ・ダクシオンという術語には、こうした芸術概念のパラダイムが近代へと移行する力動性が響いている。》(本書より)



目次



第1部 18世紀フランス言語論の動向――言語概念の拡大と芸術

第1章 コンディヤックの言語思想――『人間認識起源論』における二つの言語
1 経験的な観念の獲得と記号 
人間認識における記号/観念の個別性 
2 詩と天才 
古代語と近代語/詩の音の言語性 

第2章 「台詞」から「パントマイム」へ――ディドロの演劇改革と言語歴史論
1 ディドロの演劇改革
演劇媒体としてのパントマイム/パントマイムの創造性 
2 ディドロの言語歴史論 
ディドロの倒置概念――詩的言語/ヒエログリフとパントマイム 

第2部 17世紀バレエ・ダクシオンの芽生え――舞踊の模倣芸術化

第1章 メネトリエの「像の哲学」――隠す精神と技
1 神の隠れる謎としての像
2 謎を成す精神と技 
3 謎の快――原像と模像の差異 

第2章 メネトリエのバレエ論――バレエのための『詩学』と構想の統一
1 バレエ作品の構成要素と「構想の統一」 
模倣としてのバレエの媒体と構成要素の定義/質料形相と「構想の統一」/作品概念としての「ディヴェ
ルティスマン」 
2 可感的媒体による「真実らしさ」と「構想」 
「像」と可感的認識/多様性と変化によるバレエの模倣の真実らしさ 

第3部 18世紀バレエ・ダクシオンの興隆――新しい言語の追求

第1章 カユザックのバレエ論――デュボス批判と新旧舞踊論争
1 デュボスの新旧舞踊観
古代音楽の範囲/歌と舞踊の意味作用 
2 カユザックの新旧舞踊観
古代ギリシャに始まる二つの舞踊の歴史/舞踊の意味作用と「ダンス・アン・アクシオン」
3 観客概念の成立
観客概念の誕生――創造性の判断/一つの筋と関心――観客の没頭

第2章 ノヴェールのバレエ論――新しいアクシオン概念
1 身体表現としてのアクシオン――用例分析による第一の系統
模倣としての身体表現/独創的表現としての身体表現 
2 統一概念としてのアクシオン――用例分析による第二の系統
バレエ作品の二つの統一/一場面におけるアクシオン/場面の連続におけるアクシオン 
3 関心概念としてのアクシオン――イリュージョン
アクシオンと関心の併置/関心を生むタブロー――複数から成るひとつの全体/場面の連続における関心
――ノヴェールの感性論 

結論


参考文献

あとがき

著者について
川野惠子(かわのけいこ)
東京生まれ。大阪大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(文学)。現在、名古屋大学高等研究院/人文学研究科特任助教。専攻、18世紀フランスを中心とした美学・芸術学。主な論文には、「J゠G・ノヴェール『手紙』(1760)における舞踊の語り――アクシオン概念の検討を軸に」(『美学』64巻1号、2013年)、« Éveiller l’intérêt du public selon Diderot »(Revue d’histoire du théâtre : Service public / intérêt privés. La longue querelle de la scène française. XVIIIe-XXIe siècle, Société d’histoire du théâtre, no293, 2022)、主な翻訳には、「ディドロ『聾唖者書簡』翻訳(2)」(『美学芸術学論集』18号、神戸大学芸術学研究室、2023年)、「デュボス『詩画論』第三部翻訳(2)」(『文芸学研究』26号、文芸学研究会、2023年)などがある。

関連書
フランス・オペラの美学/内藤義博/4000円+税
変貌するフランス・オペラ/内藤義博/4500円+税
オペラ/音楽劇研究の現在/佐藤英・大西由紀・岡本佳子編/4500円+税

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