2月の新刊:耳のために書く——反散文論の試み
2024年 2月 15日 コメントは受け付けていません。
耳のために書く
反散文論の試み
野田研一(編)
判型:A5判上製
頁数:328頁
定価:4500円+税
ISBN:978-4-8010-0793-2 C0095
装幀:斎藤久美子
2月下旬発売!
近代とは<散文の時代>。
近代とは〈散文の時代〉。グーテンベルクの印刷革命による〈文字/活字の文化〉の覇権は、言葉から〈声〉を奪い、それを〈目〉の言語へと変容させた。私たちは〈声〉なき〈散文の時代〉を生きて久しい。視覚化された言語が産み落とした〈散文〉とは何かを問い直し、記憶による思考から成る〈声の文化〉の行方を英米文学・日本古典文学・文化人類学・環境文学など多岐にわたる視座から探る試み。
【目次】
まえがき 野田研一
第Ⅰ部 テクストの〈声〉を聴く
視点なき思想―反散文論のほうへ―野田研一
声の残響―ハーマン・メルヴィル『白鯨』の口誦性―関根全宏
小説、舞台、教室―声が織りなす『フランケンシュタイン』―中川僚子
言葉の声―髙山花子
第Ⅱ部 聴覚空間の文化
説話の第三極論―声と文字の往還―小峯和明
文章の〈型〉の獲得―学校教育における美辞麗句集―湯本優希
声と音のペダゴジー―音響共同体としての大学―佐藤壮広
世界と「言葉」の正常な関係とは―インゴルドを手がかりとして―奥野克巳
第Ⅲ部 〈声〉から〈声〉へ
語りかける文学の予祝―島尾ミホと石牟礼道子を中心に―小谷一明
野生の中へ―石牟礼道子の口承的な文学世界を翻訳するということ―ブルース・アレン(相原優子訳)
石牟礼道子の「声音」の思想―山田悠介
石牟礼文学における音読表現について―『あやとりの記』を中心に―徐嘉熠
音読に抗して―吃音をめぐる私的エスキス―中村邦生
あとがき 野田研一
【著編者/執筆者/訳者について】
野田研一(のだけんいち)
1950生まれ。立教大学名誉教授。主な著書に、『自然を感じるこころ――ネイチャーライティング入門』(筑摩書房、2007年)、『失われるのは、ぼくらのほうだ――自然・沈黙・他者』(水声社、2016年)、『〈風景〉のアメリカ文化学――アメリカ文化を読む 2』(編著、2011年)、『〈日本幻想〉表象と反表象の比較文化論』(編著、2015年)、『〈交感〉自然環境に呼応する心』(編著、2017、いずれもミネルヴァ書房)、『石牟礼道子と〈古典〉の水脈――他者の声が響く』(共編著、文学通信、2023年)などがある。
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関根全宏(せきねまさひろ)
1979年生まれ。現在、東京家政大学人文学部准教授。博士(文学)。専攻、アメリカ文学。詩誌『立彩』編集人。主な著書に、『〈交感〉 自然・環境に呼応する心』(共著、ミネルヴァ書房、2017年)、論文に、「感応的自然と愛と死――ウィリアム・カーロス・ウィリアムズ「寡婦の春の嘆き」再読」(『英語英文学研究』第27号、2021年)、詩集に『死者と月』(七月堂、2023年)などがある。
中川僚子(なかがわともこ)
1957年生まれ。現在、聖心女子大学教授。専攻、イギリス文学・文化。主な著書に、『日常の相貌――イギリス小説を読む』(2011年)、『カズオ・イシグロの世界』(共著、2017年、ともに水声社)、主な論文に“Meiji Japan Responds to Frankenstein: The 1889–1890 translation “The New Creator” and the Illustrations,” The Afterlives of Frankenstein, Bloomsbury, 2024, forthcoming.などがある。
髙山花子(たかやまはなこ)
現在、東京大学東アジア藝文書院(EAA)特任助教。博士(学術)。専攻、フランス思想。主な著書に、『モーリス・ブランショ――レシの思想』(水声社、2021年)、『鳥の歌、テクストの森』(春秋社、2022年)などがある。
小峯和明(こみねかずあき)
1947年生まれ。立教大学名誉教授。専攻、日本古典文学、東アジア比較説話。主な著書に、『説話の森』(岩波現代文庫、2001年)、『中世日本の予言書』(岩波新書、2007年)、『遣唐使と外交神話――『吉備大臣入唐絵巻』を読む』(集英社新書、2018年)などがある。
湯本優希(ゆもとゆき)
1988年生まれ。現在、日本体育大学桜華高等学校教諭、立教大学日本学研究所研究員。博士(文学)。専攻、日本近代文学、日本語学、文体論、文章表現論。主な著書に、『ことばにうつす風景――近代日本の文章表現における美辞麗句集』(水声社、2020年)、立命館・国文学研究資料館「明治大正文化研究」プロジェクト編『近代文献調査研究論集』第二輯(共著、国文学研究資料館、2016年)などがある。
佐藤壮広(さとうたけひろ)
1967年生まれ。現在、山梨学院大学特任准教授。専攻、宗教人類学、表現文化論。ワークショップ「歌う人間学」主宰。主な著書に、『沖縄民俗辞典』(共編著、吉川弘文館、2008年)、『年表でわかる現代の社会と宗教』(共著、平凡社、2018年)などがある。
奥野克巳(おくのかつみ)
1962年生まれ。現在、立教大学大学院異文化コミュニケーション研究科教授。博士(社会学)。専攻、文化人類学。主な著書に『ありがとうもごめんなさいもいらない森の民と暮して人類学者が考えたこと』(新潮文庫、2023年)、『はじめての人類学』(講談社現代新書、2023年)、訳書に、ティム・インゴルド『応答、しつづけよ。』(亜紀書房、2023年)などがある。
小谷一明(おだにかずあき)
1965年生まれ。現在、新潟県立大学国際地域学部教授、ASLE-Japan/文学・環境学会代表。専攻、アメリカ文学、環境文学。おもな著書に、『環境から生まれ出る言葉――日米環境表象文学の風景探訪』(水声社、2020年)、『帝国のヴェール――人種・ジェンダー・ポストコロニアリスムから解く世界』(共著、明石書店、2021年)などがある。
ブルース・アレン(Bruce Allen)
1949年生まれ。元清泉女子大学教授。主な共編著に、Ishimure Michiko’s Writing in Ecocritical Perspective: Between Sea and Sky(Lexington Books, 2015)、訳書に石牟礼道子のLake of Heaven(天湖)(Lexington Books, 2008), Japanese Tales from Times Past: Stories of Fantasy and Folklore from the Konjyku Monogatari Shu(Tuttle Publishing, 2015)などがある。
山田悠介(やまだゆうすけ)
1984年生まれ。現在、大東文化大学文学部講師。博士(異文化コミュニケーション学)。専攻、環境文学。主な著書に『反復のレトリック――梨木香歩と石牟礼道子と』(水声社、2018年)、『石牟礼道子と〈古典〉の水脈――他者の声が響く』(共編著、文学通信、2023年)、論文に「「声音」を読む――石牟礼道子『水はみどろの宮』とその周辺」(『石牟礼道子を読む2――世界と文学を問う』東京大学東アジア藝文書院、2022年)などがある。
徐嘉熠(じょかゆう)
1993年生まれ。清華大学人文学院外国言語文学系博士課程後期在学中。専攻、日本環境文学、日本近現代文学、日中比較文学。論文に、「从生态批评到环境文学:日本环境文学理论演变」(『文学理论前沿』第二十八輯、近刊)、「「不知火」における『山海経』について――「夔」のイメージを中心に」(『石牟礼道子を読む2――世界と文学を問う』、東京大学 東アジア藝文書院、2022年)などがある。
中村邦生(なかむらくにお)
1946年生まれ。小説家。大東文化大学名誉教授。「冗談関係のメモリアル」で第77回『文学界』新人賞受賞。第112回、第114回芥川賞候補。主な小説に、『転落譚』(2011年)、『幽明譚』(2022年)、『ブラック・ノート抄』(2022年、いずれも水声社)、評論に『書き出しは誘惑する――小説の楽しみ』(岩波書店、2014年)、『未完の小島信夫』(共著、水声社、2009年)などがある。
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相原優子(あいはらゆうこ)
1969年生まれ。現在、武蔵野美術大学教授。専攻、アメリカ文学。主な著書に『深まりゆくアメリカ文学――源流と展開』(共著、ミネルヴァ書房、2021年)、共訳書に、Ishimure Michiko’s Writing in Ecocritical Perspective: Between Sea and Sky(Lexington Books, 2015)などがある。