7月の新刊:小説列伝
2024年 7月 16日 コメントは受け付けていません。
小説列伝
トマス・パヴェル(著)
千野帽子(訳)
判型:四六判並製
頁数:632頁
定価:4500円+税
ISBN:978-4-8010-0814-4 C0098
装幀:宗利淳一
7月下旬発売!
小説全史!
古代ギリシアから20世紀に至る西欧小説史を、理想/規範と個人の対立という不変のテーマをめぐる物語創作の無数の試行錯誤として捉え直し、50篇を超える代表的〈小説〉を新しい視点で読み解く。
[読み解く〈小説〉の一例]
アプレイウス『黄金の驢馬』/ヘリオドロス『エティオピア物語』/ゴットフリート・フォン・シュトラスブルク『トリスタンとイゾルデ』/ボッカッチョ『デカメロン』/ロドリゲス・デ・モンタルボ『アマディス・デ・ガウラ』/ラブレー『ガルガンチュアとパンタグリュエル』/『ラサリーリョ・デ・トルメスの生涯』/シドニー『アーケイディア』/セルバンテス『ドン・キホーテ』/グリンメルスハウゼン『阿呆物語』/ラ・ファイエット夫人『クレーヴの奥方』/デフォー『ロクサーナ』/リチャードソン『パミラ』/フィールディング『トム・ジョウンズ』/ウォルポール『オトラントの城』/スターン『トリストラム・シャンディ』/ゲーテ『若きヴェルテルの悩み』/コンスタン『アドルフ』/スコット『ウェイヴァリー』/オースティン『エマ』/スタンダール『赤と黒』/ディケンズ『オリヴァー・トウィスト』/バルザック《人間喜劇》/シャーロット・ブロンテ『ジェイン・エア』/フローベール『ボヴァリー夫人』/ユゴー『レ・ミゼラブル』/ドストエフスキー『罪と罰』/ジョージ・エリオット『ミドルマーチ』/トルストイ『アンナ・カレーニナ』/ユイスマンス『さかしま』/フォンターネ『セシールの秋』/エッサ・デ・ケイロース『マイア家の人々』/ヘンリー・ジェイムズ『大使たち』/ジョイス『ユリシーズ』/カフカ『城』/トーマス・マン『魔の山』/プルースト『失われた時を求めて』/フォークナー『響きと怒り』/ペレック『人生 使用法』/ガルシア・マルケス『コレラの時代の愛』
【目次】
緒言
まえがき
序章
初期の選択肢と……
……そして、その後の展開
新旧・真偽・詩と散文
さまざまな小説史
本書執筆の理由
第1部 理想は、世界を超えたところにあった
第1章 強い魂・人格完成の階梯
1 ヘレニズム小説
世界外のカップル
叙事詩・悲劇・古代小説
人類の単一性と運命の支配
政体の類型論
神慮との融合による登場人物の人格完成
偶発事と内心
2 騎士道小説
正義・盛名・冒険
歪な魂、誠実さの試練
貞節な愛、不貞な愛
敬虔という義務
アマディス――完璧さと叛逆と
第2章 無防備な魂・悪たれ・悪党
無力な魂獣
面の悪たれ・人面の悪たれ
笑いの名人芸
無道徳な悪漢
道徳家の悪漢
ピカレスク寓意文学
毒婦のドラマ
間奏 概念記法方式
第3章 筋のさなかで――悲歌物語と短篇小説
ハートブレイク
短篇小説――短さ・一貫性・帰納
動機と錯綜
女性の状況を問う
知性による把握可能性と内心の不透明
第4章 はるかな国、ためらう恋人たち――牧人文学
黄金時代
牧歌的牧人文学と観想的牧人文学
見限られた恋人、詩的昂揚
憔悴した登場人物、脇筋
英雄的牧人文学
内的成熟
人心の襞
第5章 『ドン・キホーテ』と小説史
第2部 人の内心に、すばらしいものを見つけた
第6章 新理想論
ヘリオドロスのフォロワーたち
いまここにある繊細な心――リチャードソン『パミラ』
内心の力の悲劇――『クラリッサ』
主観的概念記法体系――『ジュリーあるいは新エロイーズ』
第7章 新理想論への抵抗
1 遊びと笑い
『トム・ジョウンズ』――人間喜劇と作者の地位向上
遊戯小説――『トリストラム・シャンディ』と『運命論者ジャック』
2 崇高なる恐怖
第8章 恋愛――ロマン主義的な、不可能な
情熱と孤独のあいだ
洗練と嘘くささ
愛の神格化とそれにたいする批判
新理想論への転向
第3部 気高さは、世界に根づくことができるか
第9章 小説と社会
小説の叙事詩的転機
歴史の進歩
気高さを異国に求める
目立たぬ人々の気高さ
フェミニズム的理想論
異例の人・堕天使・悪魔
理想論の頂点
第10章 道徳的懐疑論の遺産
アイロニー派
感情移入派(一)
平静と軽蔑と
未来の哲学と現在の悲惨
感情移入派(二)
第11章 統合
思慮分別を身につける
純朴さを讃えて
無限小の優美さ
自律への叛逆
狂気に瀕した繊細な魂
運命、力、そして内心の懊悩
成熟?
第4部 人は世界に超然とすることができるか
第12章 切れた絆、底なしの世界
芸術崇拝、歴史の終焉
やるせない孤立者
回心者と背徳者
孤独と芸術的資質
疲れた心、溢れ出す言葉
身近な人に面喰らう
知的空想
わけのわからない現実
多元論
結びの歌
注
参考文献
日本語訳文献一覧
索引
謝辞
【著者について】
トマス・パヴェル(Thomas Pavel)
1941年、ブクレシュティ(ブカレスト)に生まれる。文学理論家・批評家・小説家。プリンストン大学やシカゴ大学で教鞭をとった。主な著書に、Univers de la fiction(Seuil, 1988)、Le Mirage linguistique(Minuit, 1988)、小説に、La Sixième Branche(Fayard, 2003)、邦訳書に、『ペルシャの鏡』(原書、1978年。工作舎、1993年)などがある。
【訳者について】
千野帽子(ちのぼうし)
文筆家・俳人。フランス政府給費留学生として渡仏、パリ第四大学にて博士号取得。主な著書に、『物語は人生を救うのか』(2019年)、『人はなぜ物語を求めるのか』(2017年、以上、ちくまプリマー新書)、『俳句いきなり入門』(2012年、NHK出版新書)、共著に、『東京マッハ 俳句を選んで、推して、語り合う』(2021年、晶文社)、岩松正洋名義の訳書に、マリー゠ロール・ライアン『可能世界・人工知能・物語理論』(2006年、水声社)などがある。