3月の新刊：ロシア・中東欧のエコクリティシズム——スラヴ文学と環境問題の諸相
2025年 3月 6日 コメントは受け付けていません。
ロシア・中東欧のエコクリティシズム
スラヴ文学と環境問題の諸相
小椋彩＋中村唯史（編）
判型：A5判上製
頁数：376頁＋カラー別丁8頁
定価：5000円＋税
ISBN：978-4-8010-0853-3 C0098
装幀：宗利淳一
3月中旬発売！
非人間中心主義的読解に向けて
ポーランドの炭鉱、チェコの森、ウクライナの麦畑……ロシア・中東欧の厳しくも豊かな自然は、文学や絵画でどのように描かれているのか。
国家や民族の問題が影を落とすロシア・中東欧文学を、地政学や文明論を超えたエコクリティシズムの観点から批評し、新たな読解の枠組を提示する。
【目次】
はじめに 小椋 彩
第１部 鉱山の光景
序 中村唯史
鉱山の記憶――カルヴィナーとヤーヒモフの事例 阿部賢一
ポーランド、上シロンスク地域における「自然」としてのボタ山 菅原 祥
神話の解体――「モラルの不安の映画」と炭鉱・労働・労働者 小椋 彩
ワシーリー・グロスマンの短編『生』に見る労働者―炭鉱―自然の連帯の神話 中村唯史
第２部 スラヴの森
序 小椋 彩
「ボヘミアの森」の表象 阿部賢一
ソ連時代のベラルーシの原生林とバイソンのイメージ 越野 剛
森で死者の声を聴く――現代ポーランド文学の事例から 菅原 祥
森で目に見えない存在を聞く――ブルガリアの森をめぐる語りに関する試論 松前もゆる
北の隣人たち――エコクリティシズムおよびポストコロニアリズムの視点から見たロシア北極圏先住民文学 ティンティ・クラプリ（小椋 彩訳）
第３部 パストラル
序 中村唯史
ウィリアム・ワーズワスの描く英国湖水地方の自然と共同体――パストラル、エコロジー、ナショナル 吉川朗子
移動派農村絵画におけるパストラル――《ライ麦畑》を起点にして 井伊裕子
Ａ・カズベギ「ぼくが羊飼いだった頃の話」におけるパストラルの諸相 五月女 颯
幸田露伴の水都東京論――日本のパストラル受容の一つとして 伊東弘樹
自然は近代を超えて語ることができるか――「あとがき」に代えて 中村唯史
【編者・執筆者について】
小椋 彩（おぐらひかる）
北海道大学大学院文学研究院准教授。専攻、ポーランド文学、ロシア文学。共編著に、『ロシア文学からの旅――交錯する人と言葉』（ミネルヴァ書房、2022）、訳書に、オルガ・トカルチュク『個性的な人』（岩波書店、2024）がある。
中村唯史（なかむらただし）
京都大学大学院文学研究科教授。専攻、ロシア文学、ソ連文化論。共編著に、『自叙の迷宮――近代ロシア文化における自伝的言説』（水声社、2018）、訳書に、イサーク・バーベリ『騎兵隊』（松籟社、2022）がある。
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阿部賢一（あべけんいち）
東京大学大学院人文社会系研究科准教授。専攻、中東欧文学、比較文学。著書に、『カレル・タイゲ ポエジーの探求者』（水声社、2017）、訳書に、ボフミル・フラバル『わたしは英国王に給仕した』（河出書房新社、2010）がある。
菅原 祥（すがわらしょう）
京都産業大学現代社会学部准教授。専攻、文化社会学、ポーランド地域研究。著書に、『ユートピアの記憶と今――映画・都市・ポスト社会主義』（京都大学学術出版会、2018）、訳書に、ヤヌシュ・コルチャク『ゲットー日記』（共監訳、みすず書房、2023）がある。
越野 剛（こしのごう）
慶應義塾大学文学部准教授。専攻、ロシア文学・文化史。共編著に、『ベラルーシを知るための五十章』（明石書店、2017）、訳書に、アリス・ボータ『女たちのベラルーシ――革命、勇気、自由の希求』（共訳、春秋社、2023）がある。
松前もゆる（まつまえもゆる）
早稲田大学文学学術院教授。専攻、文化人類学、ブルガリア地域研究。著書に、『嗜好品から見える社会』（共著、春風社、2022）、論文に、「移動・ジェンダー・世代――現代ヨーロッパにおける労働移動の事例から」（『法律時報』93巻8号、日本評論社、2021）がある。
ティンティ・クラプリ（Tintti Klapuri）
ヘルシンキ大学外国語学部准教授。専攻、ロシア文学。著書に、Chronotopes of Modernity in Chekhov （Berlin: Peter Lang, 2019）がある。
吉川朗子（よしかわさえこ）
神戸市外国語大学外国語学部教授。専攻、近現代英文学。著書に、William Wordsworth and Modern Travel: Railways, Motorcars and the Lake District, 1840-1940 （Liverpool University Press, 2020）がある。
井伊裕子（いいゆうこ）
明治大学経営学部非常勤講師。専攻、ロシア近代風景画。論文に、「トレチャコフとロシア風景画――1870年代移動展覧会を中心に」（『スラヴ文化研究』19号、2022）がある。
五月女 颯（そうとめはやて）
筑波大学人文社会系助教。専攻、ジョージア文学、ジョージア地域研究。著書に、『ジョージア近代文学のポストコロニアル・環境批評』（成文社、2023）がある。
伊東弘樹（いとうひろき）
早稲田大学大学院教育学研究科博士後期課程在籍。専攻、日本近現代文学。論文に、「志向／試行される〈田園〉――佐藤春夫・廣田花崖を中心に」（全国大学国語国文学会編『文学・語学』240号、2024）がある。
