6月の新刊『パラダイスの乞食たち』
2009年 6月 16日 コメントは受け付けていません。
アーヴィング・ステットナー/本田康典+三保子ステットナー訳
『パラダイスの乞食たち』 Beggars in Paradise
四六判上製296頁 定価=2500円+税ISBN 978-4-89176-734-1 C0097 6月下旬発売
ああ、パリ、ぼくの恋人、わが人生の街角よ……
1940年代後半、ブルックリン育ちのぼくは、ヘンリー・ミラーの影響をうけ、大西洋をわたってパリで放浪生活をすることに……。水彩画家、編集者、詩人、作家として活躍した著者の、みずみずしい自伝的小説!
▼著者について
アーヴィング・ステットナー(Irving Stettner)は、1922年、ニューヨークのブルックリンに生まれ、2004年、ペンシルヴァニア州ダラスで没した。1940年代後半にヘンリー・ミラーと出会い、『北回帰線』の舞台であるパリに興味をかきたてられ、海を渡る。1948年頃から約12年間、たまに米国に戻ることもあったが主としてパリで放浪生活を続けた。若きステットナーは、パリでは雑多な仕事に就きながら、スケッチアーティストとして食いつなぎ、エジプト出身の作家アルベール・コスリーらと親しくなった。『パラダイスの乞食たち』は、
この12年間の生活と意見を題材にした自伝的小説である。
1974年より、リトルマガジン『ストローカー』の編集・出版を始め、寄稿者であったヘンリー・ミラーとの親交を深める。1997年に妻子同伴で来日してからは、くり返し個展を開くなど、晩年は主に日本で旺盛な創作活動をした。
▼ステットナーへ宛てたヘンリー・ミラーからの手紙(抜粋)
きみは本物の画家だ。ピカソやブラックよりもずっと興味深い。わたしの言葉を信じてほしい。そして描き続けるんだ!
(1978年3月6日付け)
きみは現代アメリカの唯一の詩人だ!
(1979年6月3日付け)
きみは詩人であると同時に生来のストーリーテラーだ。きみの書く文章はわたしを驚愕させる。
(1979年9月20日付け)
▼担当編集者からのコメント
アメリカ人のステットナーは若き日のパリ放浪時代に、すでに作家として名をなしていたアルベール・コスリーを師と仰ぎ、親しく交流した。変わり者のコスリーは一文無しにもかかわらず、いつもぱりっとしたスーツを着て、サン・ジェルマン・デ・プレ界隈のカフェに仲間達とたむろしていた。そんな彼の「物乞いの思想」にステットナーは強い影響をうけ、真の芸術家の道を邁進する。本書にはコスリー以外にも当時の作家や芸術家たちが実名で登場し、興味が尽きない。
また、今は亡きステットナーの生前の映像を『Journey to Lock The Lock』というDVDで観ることができる。このドキュメンタリーは、警官殺しの冤罪で38年間ニュージャージー州の刑務所で服役した詩人・画家トミー・トランティーノの現在を、日本人舞台演出家の平松れい子が追ったユニークな作品。彼女はまず、トランティーノの親友でもあったステットナーをペンシルヴァニア州のダラスに訪ね、密着取材を試みる。晩年のステットナーの芸術と人生を垣間見ることのできる貴重な映像だ。
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▼〈関連書〉好評発売中!
アルベール・コスリー/田中良知訳
『老教授ゴハルの犯罪』
四六判上製272頁 定価2200円+税
ISBN978-4-89176-687-0 C0097
カイロの貧民街を舞台に
若き娼婦殺しをめぐって繰り拡げられる
誇り高き除け者たちのおかしな人生の物語。
ヘンリー・ミラーやアルベール・カミュに見出された
エジプト出身のフランス語作家の本邦初紹介。