1月の新刊:『ヌーヴェル・ヴァーグの全体像』
2014年 7月 30日 コメントは受け付けていません。
ヌーヴェル・ヴァーグの全体像
ミシェル・マリ
矢橋透訳
四六判上製/280頁/定価=2800円+税
ISBN978-4-8010-0015-5 C0074 好評発売中
装幀=齋藤久美子
1950年代末のフランス、旧来の映画製作の常識を根底から覆す「新しい映画」が続々と出現した。
その担い手となったのは、ゴダール、トリュフォー、シャブロル、ロメールといった若き映画監督たち、そしてアンナ・カリーナ、ジャン=ポール・ベルモンド、ジャン=ピエール・レオーら気鋭の役者陣であった……。
映画史上未曾有の大変動=革命《ヌーヴェル・ヴァーグ》。
誰もが知っているようで知らないその実態とは、いかなるものであったのか?
時代背景、経済状況、撮影技術、美学、監督、俳優・女優……さまざまな側面からこの映画革命の真相/深層に迫る、最良の概説書。
【目次】
序
第一章 ジャーナリスティックなスローガン、新世代
一 『エクスプレス』のキャンペーン
二 映画批評誌のほうへ
三 ラ・ナープルでの討論集会
四 誕生の日付
五 陰鬱なる「若きアカデミー」
六 1958年におけるフランス映画、現状一覧
第二章 批評的コンセプト
一 批評的流派
二 アレクサンドル・アストリュックによるマニフェスト
三 フランソワ・トリュフォーの攻撃文書
四 脚色の理論
五 『アール』の「一面記事」
六 作家政策
七 アメリカ映画というモデル
八 ひとつの「芸術流派」としてのヌーヴェル・ヴァーグ
第三章 製作・配給方法
一 経済的コンセプト
二 「システム外」製作の二本の低予算映画
三 経済的好調
四 補助金を受ける映画
五 超大作映画の告発
六 自主製作された映画
七 三人のプロデューサー
八 新旧世代の映画の興行成績比較
第四章 技術的実践、美学
一 ヌーヴェル・ヴァーグの美学
二 作家=監督
三 装置としてのシナリオ
四 脚本テクニックとしてのエクリチュールとの関係性
五 スタジオからの解放と場の再発見
六 録音・録画テクニック
七 編集
八 同時音声
第五章 新しいテーマと身体――登場人物と訳者
一 マリヴォーダージュと「サガンぽさ」
二 作家たちの世界
三 新しい世代の俳優たち
四 ヌーヴェル・ヴァーグの女優陣
第六章 国際的影響関係、今日に残る遺産
一 先駆的運動
二 ヌーヴェル・ヴァーグの外国への影響
三 ヌーヴェル・ヴァーグ、前衛映画、実験映画
四 運動の歴史的帰結、今日のヌーヴェル・ヴァーグ
五 作品の永続性
六 生誕50周年において
注/参考文献/訳者後記
【著者】
ミシェル・マリ(Michel Marie) 1945年生まれ。フランス国家博士(芸術学)。パリ第三大学教授。専攻、映画史。おもな著書に、『サイレント映画』(Le Cinéma muet, Cahiers du cinéma, 2005)、『ゴダールを理解する』(Comprendre Godard, travelling avant sur À bout de souffle et Le Mépris, Armand Colin, 2006)、『映画における大いなる倒錯者たち』(Les Grands pervers au cinéma, Armand Colin, 2009)、ジャック・オーモンらとの共著に、『映画理論講義』(武田潔訳、勁草書房、2000年)などがある。
【訳者】
矢橋透(やばせとおる) 1957年生まれ。筑波大学博士(文学)。岐阜大学教授。専攻、フランス文学、表象文化史。近年の著訳書に、『演戯の精神史』(水声社、2008年)、『〈南仏〉の創出』(彩流社、2011年)、ミシェル・ド・セルトー『ルーダンの憑依』(みすず書房、2008年)、ジャック・デリダ『留まれ、アテネ』(みすず書房、2009年)などがある。
【書評】
1950年代の映画界、新たな批評潮流、制作・配給システムから技術、美学の変容、新しいテーマや俳優たち、今日に残る遺産まで、未曽有の映画運動―革命の全体像が明らかに。(『出版ニュース』2014年3月中旬号)
著者マリは個々の作品の考察はむしろ控えめにし、映画人の自覚と矜持、彼らの多彩な表現に通じるものに目を向ける。「ヌーヴェル・ヴァーグの全体像」では脚光を浴びる以前の40年代の映画状況から、〝新しい波〟後も製作の炎を燃やし続けた半世紀近い彼らの足跡をたどっている。(林進一、『岐阜新聞』2014年3月22日付)
「ヌーヴェル・ヴァーグの全体像」では、特に映画の経済的側面、新旧世代の興行成績の比較も含め、起こったことの意味を多角的に伝えていく。(筒井武文、『フリースタイル』26号、2014年4月)
ミシェルは「経済的技術的な語りの力」で読む者の目から鱗を落としてくれる。その感触は、理論書や評論本の類よりもむしろヌーヴェル・ヴァーグ映画そのものに近い。あの「勝手にしやがれ」や「大人は判ってくれない」のようにリアルで、軽やかなスピード感があり、簡潔かつ具体的で、コクがあり、情熱もたっぷりだ。(渡辺幻、『キネマ旬報』2014年5月下旬号)
映画を撮ろうとする者の前に広がるのは、もはや処女地ではなく、無数の作品で埋め尽くされた賑やかで混沌とした風景なのである。その風景をしっかりと見据えることで、彼らは新たな道を切り拓いた。映画を撮ることが、映画を観て論じることと切り離せなくなった時代において。(谷昌親『図書新聞』2014年6月28日)
【関連書】[価格税別]
フランソワ・トリュフォーの映画 アネット・インスドーフ/和泉涼一+二瓶恵訳 4800円
トリュフォーの映画術 アンヌ・ジラン編/和泉涼一+二瓶恵訳 5000円
ロベール・ブレッソン研究 淺沼圭司 4000円
タルコフスキイの映画術 アンドレイ・タルコフスキイ/扇千恵訳 2500円
キェシロフスキ映画の全貌 マレク・ハルトフ/吉田はるみ+渡辺克義訳 3000円
ふたりのキェシロフスキ アネット・インスドーフ/和久本みさ子+渡辺克義訳 3000円
ジーン・セバーグ ギャリー・マッギー/石崎一樹訳 3500円
FBI vs. ジーン・セバーグ J・R・ラーソン+G・マッギー/石崎一樹訳 2500円
フィルム・スタディーズ グレアム・ターナー/松田憲次郎訳 2800円
ロシア・アヴァンギャルドの映画と演劇 岩本憲児 3000円
【矢橋透の本】[価格税別]
劇場としての世界 3500円
仮想現実メディアとしての演劇 4000円
演戯の精神史 2500円
世界は劇場/人生は夢 2800円(共著)