芸術選奨受賞報告

2015年 6月 23日 コメントは受け付けていません。

写真(野村)
芸術選奨受賞報告

弊社から2014年4月に刊行されました、『諷刺画家グランヴィル テクストとイメージの十九世紀』が、「文学と視覚芸術にまたがる豊穣な研究成果」であるとして、著者の野村正人氏に第65回芸術選奨評論等部門文部科学大臣賞が与えられました。(授賞式:2015年3月18日、於、都市センターホテル)
選考委員、文化庁の皆様をはじめ、このたびの選考に関わられた皆様に感謝申し上げます。

諷刺画家グランヴィル――テクストとイメージの19世紀

野村正人
A5判上製/424頁/定価=6000円+税
装幀=宗利淳一
978-4-8010-0029-2 C0098 好評発売中



挿絵画家として戦うこと

19世紀の視覚文化を体現した諷刺画家グランヴィル。観相学、骨相学の影響下、獣頭人間を使った政治や社会風俗を諷刺する肖像画や風俗画から、ロマン主義 的挿絵本、『寓話』『ガリヴァー旅行記』等の挿絵の制作にいたるまで、徹底して挿絵画家で有り続けたのはなぜなのか? グランヴィルの作品世界を読み解 き、出版・文化史的観点から考察する。

「グランヴィルが文章と挿絵を同時につくる企画に関心を持っていたのは[……]文章にたいする挿絵の従属性を乗り越えようとする信念を持っていたからであ る。挿絵は文章の添え物にとどまったり、先行する文章の意味を説明する役割に甘んじたりするのではなく、ひとつの独立した創作物であるべきであり、また、 ともすれば軽視されがちな挿絵画家は芸術家として評価されなくてはいけない、と考えたのである。」(本文より)

【目次】
序章 グランヴィルの生涯
第一章 フランスの出版文化とその背景
第二章 顔――内面を映す鏡  変身の中間状態
第三章 政治諷刺の経験
第四章 ラ・フォンテーヌ『寓話』の挿絵
第五章 グランヴィルと『動物たちの私的公的生活情景』
第六章 『もうひとつの世界』の挿絵
終章 最後のグランヴィル

補遺 
図版一覧

文献一覧
人名索引
あとがき

【著者】
野村正人(のむらまさと) 1952年、愛知県生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程(仏文学)満期退学。ギュスターヴ・フローベール『ボヴァ リー夫人』についての研究でパリ第4大学博士号取得。東京農工大学工学部教授(同大学名誉教授)を経て、2005年より、学習院大学文学部フランス語圏文 化学科教授。主な著訳書に、アラン・コルバン『時間・欲望・恐怖――歴史学と感覚の人類学』(共訳、藤原書店、1993)、『言葉と〈言葉にならぬもの〉 との間に』(共著、行路社、1995)、パトリック・バルビエ『カストラートの歴史』(筑摩書房、1995)、ベルナール・コマン『パノラマの世紀』(筑 摩書房、1996)、エミール・ゾラ『金』(藤原書店、2003)、『ロラン・バルト著作集6 テクスト理論の愉しみ』(みすず書房、2006)などがある。

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