3月の新刊:自叙の迷宮――近代ロシア文化における自伝的言説

2018年 2月 27日 コメントは受け付けていません。

自叙の迷宮自叙の迷宮
近代ロシア文化における自伝的言説
中村唯史+大平陽一(編)
三浦清美+奈倉有里+武田昭文+梅津紀雄(著)

判型:A5判上製
頁数:288頁
定価:4000円+税
ISBN:978-4-8010-321-7 C0098
装幀:西山孝司


自伝、自伝的小説、回想、日記、手紙。過去の出来事を現在の表象によって書き換え、再構成する〈自叙〉のなかに、〈事実〉はどこまで残されているのか?
ロシア文化における自叙はロマン主義の時代に興隆し、続くリアリズムの時代には減退した。しかし19世紀末、いわゆる「銀の時代」の始まりとともに、再び事実性への志向が強まり、創作の手法としての自叙や、作家の伝記への関心が高まりを見せるようになる。
現在と過去の錯綜の中に生起し、虚実入り混じる多様な〈自叙〉の実相を、革命前後の時代を中心とする近代ロシア文化の中に追う。


目次
序——自叙についての迷宮的前書き  中村唯史

宗教説話に滲出する自叙
——ポリカルプと逸脱の精神  三浦清美

アレクサンドル・ブローク批評における「同語反復」  奈倉有里

亡命ロシアの子どもたちの自叙
——学童の回想と文学  大平陽一

ヴァシーリー・トラヴニコフとは誰か?
——ホダセーヴィチにおける自叙と文学史の交点  武田昭文

伝記史料とイメージ操作
——二十世紀ロシアの作曲家の自叙  梅津紀雄

自叙は過去を回復するか
——オリガ・ベルゴーリツ『昼の星』考  中村唯史

後書きに代えて——自叙と歴史叙述のあいだ  中村唯史


編者・執筆者について
中村唯史(なかむらただし)
1965年、北海道に生まれる。東京大学大学院人文科学研究科博士課程退学。現在、京都大学大学院文学研究科教授。ロシア文学、ソ連文化論専攻。著書に、『再考ロシア・フォルマリズム——言語・メディア・知覚』(大平陽一、武田昭文他と共著、せりか書房、2012)、『映像の中の冷戦後世界——ロシア・ドイツ・東欧研究とフィルム・アーカイブ』(共編著、山形大学出版会、2014)などが、訳書に、バーベリ『オデッサ物語』(群像社、1995)、ペレーヴィン『恐怖の兜』(角川書店、2006)などがある。
大平陽一(おおひらよういち)  
1955年、三重県に生まれる。東京外国語大学大学院修士課程修了。現在、天理大学国際学部教授。戦間期チェコにおける亡命ロシア文化を専攻。著書に、『都市と芸術の「ロシア」』(共著、水声社、2005)、『映画的思考の冒険』(共著、世界思想社、2006)などが、訳書に、『ロシア・アヴァンギャルド③/キノ——映像言語の創造』(共訳、国書刊行会、1995)などがある。

三浦清美(みうらきよはる)  
1965年、埼玉県に生まれる。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。現在、電気通信大学教授。中世ロシア史、中世ロシア文学専攻。著書に、『ロシアの源流——中心なき森と草原から第三のローマへ』(講談社、2003)などが、訳書に、ペレーヴィン『眠れ』(群像社、1996)、ストヤノフ『ヨーロッパ異端の源流——カタリ派とボゴミール派』(平凡社、2001)などがある。
奈倉有里(なぐらゆり)  
1982年、東京都に生まれる。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程退学。現在、早稲田大学講師。ロシア詩、現代ロシア文学専攻。訳書に、シーシキン『手紙』(新潮社、2012)、ウリツカヤ『陽気なお葬式』(新潮社、2016)、アクーニン『トルコ捨駒スパイ事件』(岩波書店、2015)などがある。
武田昭文(たけだあきふみ)  
1967年、栃木県に生まれる。早稲田大学大学院文学研究科博士課程退学。現在、富山大学人文学部准教授。ロシア詩、ロシア近現代文学専攻。著書に、『文化の透視法』(共著、南雲堂フェニックス、2008)などがある。
梅津紀雄(うめつのりお)
1966年、福島県に生まれる。東京大学大学院総合文化研究科博士課程退学。現在、工学院大学、埼玉大学講師。ロシア音楽史、表象文化論専攻。著書に、『ショスタコーヴィチ――揺れる作曲家像と作品解釈』(東洋書店、2006)などが、訳書に、F・マース『ロシア音楽史――『カマーリンスカヤ』から『バービイ・ヤール』まで』(共訳、春秋社、2006)などがある。


関連書
生表象の近代――自伝・フィクション・学知 森本淳生編/7500円+税
18世紀ロシア文学の諸相 金沢美知子編/5500円+税
ラフマニノフの想い出 A・ゴリデンヴェイゼル他/平野恵美子・前田ひろみ訳/4500円+税


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