3月の新刊:〈ニグロ芸術〉の思想文化史
2018年 3月 12日 コメントは受け付けていません。
〈ニグロ芸術〉の思想文化史
フランス美術界からネグリチュードへ
柳沢史明(著)
判型:A5判上製
頁数:376頁
定価:5000円+税
ISBN:978-4-8010-0330-9 C0070
装幀:山崎登
3月23日頃発売!
支配と抵抗のポリティクス
フランス美術界で創出され、文化史上のトピックとなった〈ニグロ芸術〉。間大陸的な文化摩擦を被ってきたこの概念は一方で、ハーレム・ルネサンスやネグリチュードといった黒人文化運動において自らのアイデンティティを示す「抵抗のための武器」にもなりえた……。同時代の文脈から諸言説を読み解き、支配と抵抗の歴史を反省的に再構築する。
本書が試みているのは、「ニグロ芸術」という呼称と概念が形成され、変容することになる思想的背景と具体的な思想、そして変容の歴史に関する分析である。(…)この用語が帯びてきた歴史的イデオロギーと文化政治的位置を分析し再検討することで、歴史に埋もれた一つの文化事象に光を当てつつ、その反射した光を通じ反省的に二〇世紀の芸術文化と文化政治的な潮流とを解釈し直す試みとなることを目指している。(本文より)
【目次】
序章 思想文化史のなかの「ニグロ芸術」
第Ⅰ部 「ニグロ芸術」の創出と変化
第1章 「未開芸術」と西洋文明
第2章 「ニグロ(芸術)」を語る主体
第Ⅱ部 「古さ」と「新しさ」をめぐる言説
第3章 古さと起源
第4章 人種理論における芸術と人種――エリー・フォールによるゴビノー解釈
第5章 植民地行政と「新しいニグロ芸術」――ジョルデュ・アルディ
第6章 「ニグロ絵画」の誕生――カリファラ・シディベ
第Ⅲ部 同意と拒絶をめぐる言説
第7章 ハーレム・ルネサンスにおけるアフリカ芸術
第8章 アメリカからフランス領植民地地域へ――伝播する「リズム」
第9章 サンゴールにおける「ニグロの魂」と「ニグロ芸術」
第10章 「ニグロ芸術」と脱植民地化
終章 「未開芸術」の再考に向けて
注
参考文献
図版出典一覧
人名索引
あとがき
【著者について】
柳沢史明(やなぎさわふみあき)
1979年、長野県生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)。現在、東京大学大学院助教。専攻、美学芸術学、近現代芸術史。主な著書に、『異貌のパリ 1919-1939――シュルレアリスム、黒人芸術、大衆文化』(共著、水声社、2017年)、『パリⅡ――近代の相克 西洋近代の都市と芸術3』(共著、竹林舎、2015年)などがある。
【関連書】
異貌のパリ 1919-1939――シュルレアリスム、黒人芸術、大衆文化 澤田直編/4,000円+税