6月の新刊:模倣と他者性――感覚における特有の歴史《人類学の転回》
2018年 6月 26日 コメントは受け付けていません。
模倣と他者性
感覚における特有の歴史
《人類学の転回》
マイケル・タウシグ(著)
井村俊義(訳)
判型:四六判上製
頁数:412頁
定価:4000円+税
ISBN:978-4-8010-0349-1 C0010
装幀:宗利淳一
6月下旬発売!
「近代社会」の構造を揺さぶる〈模倣の能力〉を復活させ、〈第二の自然(セカンド・ネイチャー)〉を創造せよ!
異なる文化が出遭う際に生じる化学反応について、ヴァルター・ベンヤミンの「模倣」に関する洞察にインスパイアされながら独自の方法で論じた、米国の人類学者タウシグの主著。舞台はコロンビアとの国境に面したダリエン。そこに居住するインディアンと遭遇したヨーロッパ人は、やがて「表象する」ものとされるものという関係から逸脱していく……。「模倣とは共鳴する魔術である」と記したタウシグは、「他者(模倣)」に映る「模倣(他者)」に自らの姿を見いだし、読者をその眩暈のなかへと誘う。
この本でタウシグは、(……)近代的思考に対する大胆で独創的な捉え直しを試みている。それは、近代化にともない模倣することの喜びを抑圧してきた人間が、模倣の能力を再び手にすることはできるのか、という問いかけである。「模倣の能力」とは、タウシグによれば「文化が第二の自然を作るために使う性質であり、コピーをし、真似をし、擬態を作り、違いを探索し、他者へと譲歩し、他者になる能力」である。この「第二の自然」とまで呼ばれる能力は、明確に区切られてきた「自然/文明」という二項対立に割り込むようにして広大な未知の世界を渉猟し、近代社会のなかで安定を保ってきた構造に揺さぶりをかける。――「訳者あとがき」より
【目次】
謝辞
あるアカデミーへの報告
第1章 人は精霊をなんらかの方法で描写することによって自らを守る
第2章 視覚世界における観相学の側面
第3章 空間から出るということ
第4章 金枝篇――模倣の呪術
第5章 黄金の軍隊――模倣の組織化
第6章 世界史の風を帆に受けて
第7章 模倣の精神、贈与の精神
第8章 模倣の世界、目に見えない分身
第9章 世界の起源
第10章 他者性
第11章 他者性の色彩
第12章 白いインディアンの捜索
第13章 女としてのアメリカ――西欧の衣服がもつ呪術
第14章 蓄音機
第15章 ヒズ・マスターズ・ヴォイス
第16章 反射/省察
第17章 ポストコロニアル時代の共感呪術
原注
参考文献
訳者あとがき
【著者について】
マイケル・タウシグ(Michael Taussig)
1940年、オーストラリアのシドニーに生まれる。シドニー大学で医学を学び、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで人類学の博士号を取得。現在、コロンビア大学教授。主な著書に『ラテンアメリカの悪魔と商品の物神崇拝』(未訳、1980年)、『シャーマニズム、植民地主義、ワイルドマン』(未訳、1986年)、『ヴァルター・ベンヤミンの墓標』(金子遊+井上里+水野友美子訳、水声社、2016年)などがある。
【訳者について】
井村俊義(いむらとしよし)
1964年、長野県に生まれる。慶應義塾大学文学部・法学部卒業。名古屋大学大学院博士課程国際言語文化研究科満期退学。現在、長野県看護大学准教授。主な著書に、『アメリカン・ロードの物語学』(共著、金星堂、2015年)、『第二次世界大戦の遺産』(共著、大学教育出版会、2015年)などがある。
【関連書】
経済人類学――人間の経済に向けて/クリス・ハン+キース・ハート/深田淳太郎+上村淳志訳/2800円+税
非-場所――スーパーモダニティの人類学に向けて/マルク・オジェ/中川真知子訳/2500円+税
法が作られているとき――近代行政裁判の人類学的考察/ブルーノ・ラトゥール/堀口真司訳/4500円+税
流感世界――パンデミックは神話か?/フレデリック・ケック/小林徹訳/3000円+税
フレイマー・フレイムド/トリン・T・ミンハ/小林富久子・矢口裕子・村尾静二訳/4000円+税
作家、学者、哲学者は世界を旅する/ミシェル・セール/清水高志訳/2500円+税
多としての身体――医療実践における存在論/アネマリー・モル/浜田明範・田口陽子訳/3500円+税
ヴァルター・ベンヤミンの墓標/マイケル・タウシグ/金子遊・井上里・水野友美子訳/3800円+税
変形する身体/アルフォンソ・リンギス/小林徹訳/2800+税
インディオの気まぐれな魂/エドゥアルド・ヴィヴェイロス・デ・カストロ/近藤宏・里見龍樹訳/2500円+税
部分的つながり/マリリン・ストラザーン/大杉高司・浜田明範・田口陽子・丹羽充・里見龍樹訳/3000円+税
国家に抗する社会/ピエール・クラストル/渡辺公三訳/3500円+税