9月新刊:ハイデガー哲学は反ユダヤ主義かーー「黒ノート」をめぐる討議

2015年 9月 11日

ハイデガー
ハイデガー哲学は反ユダヤ主義か
「黒ノート」をめぐる討議

編者=ペーター・トラヴニー+中田光雄+齋藤元紀
執筆者=秋富克哉+加藤恵介+茂牧人+轟孝夫+森一郎+渡辺和典
訳者=阿部将伸+陶久明日香+中川萌子

A5判並製
304頁
定価3000円+税
ISBN978-4-8010-0124-4 C0010 好評発売中!
装幀:齋藤久美子

独仏哲学界を激論の渦に巻き込んだ、ハイデガーの「黒ノート」問題。
その日本における最新の研究成果を収める論集、緊急出版!!

2014年、死後40年を経て公刊された哲学的手記「黒ノート」によって〈反ユダヤ主義〉疑惑が浮上した、20世紀最大の哲学者ハイデガー。ナチス関与問題以来ふたたび世界的な議論を醸すハイデガー哲学の真相/真価を問い直し、現代哲学、そしてわれわれの未来を模索する。

われわれの今回の論集の主題は、これら第94〜96巻ならびに第97巻における「反ユダヤ主義的」とも指摘されうる文言を、哲学的に適正に、あるいはハイデガー哲学の思惟文脈に公正に則るかたちで、理解し、意味づけ、説明し、世に資そうとするものである。ハイデガーにおける「反ユダヤ主義的」と指摘される文言は、本当にあの「反ユダヤ主義」に帰属する態のものなのであるか。哲学思惟上の「ユダヤ的なものへの〈批判〉」は、そのままあの偏頗な情念イデオロギーとしての「〈反〉ユダヤ主義」と同一のものなのであるか。(「序」より)

目次:
ドイツから日本の読者の皆さんへ P・トラヴニー/陶久明日香訳
 主旨と謝辞 P・トラヴニー/中田光雄/齋藤元紀
第一部 講演
はじめに 渡辺和典
ハイデガーと「世界ユダヤ人組織」と近代性 P・トラヴニー/陶久明日香訳
「黒ノート」はハイデガーの評価に何をもたらすのか? 齋藤元紀
第二部 講演とワークショップ
はじめに 齋藤元紀
ハイデガー「黒ノート」における「反ユダヤ主義」は何を意味するのか 轟孝夫
いくつかの区別について 加藤恵介
「ハイデガーの思索は反ユダヤ主義的か?」という問いに答えるための一つの試論 P・トラヴニー/陶久明日香訳
ハイデガー思惟と反ユダヤ主義 中田光雄
第三部 講演とエッセイ
はじめに 中田光雄
普遍的なものと殲滅 P・トラヴニー/阿部将伸・中川萌子訳
トポグラフィーの試みを受けて 秋富克哉
〈キリスト教を克服するキリスト教〉としてのハイデガーの思索 茂牧人
ハンナ・アーレントと「反ユダヤ主義」 森一郎

★9月19〜20日、関西学院大学西宮上ケ原キャンパスで開催のハイデガー・フォーラム()にて先行発売いたします!

関連書:
哲学とナショナリズム――ハイデガー結審 中田光雄 4000円+税
ナチスのキッチン――「食べること」の環境史 藤原辰史 4000円+税
ナチズム――地獄と神々の黄昏 E・ブロッホ 池田浩士・藤原辰史・本庄史明訳 4500円+税
この時代の遺産 E・ブロッホ 池田浩士訳 7000円+税
ホロコーストを逃れて――ウクライナのレジスタンス J・ウィテリック 池田年穂訳 2500円+税

 

2015年度版『目録』ができました

2015年 8月 25日

以下よりダウンロードの上ご覧ください。

2015度版 目録

目録の郵送をご希望の方は、下記、小社営業部まで、電話、FAX、手紙でお申しつけ下さい。
(代金、送料は必要ありません。また、小社目録は全国の書店でも無料で直接お取り寄せ頂けます)。

〒112-0002 文京区小石川2-10-1-202
水声社営業部・目録係

 

 

『幽霊の真理――絶対自由に向かうために』刊行記念イベント

2015年 8月 17日

小林康夫×難波英夫「荒川修作の声が聴こえる!」


長くニューヨークを拠点に活動し、2010年に没した世界的な建築家で美術家の荒川修作先生と哲学者の小林康夫先生が、1992年から2005年に「三鷹天命反転住宅」が完成するまでのあいだ7回にわたって行なった対談を集成した『幽霊の真理――絶対自由に向かうために』の刊行を記念し、下北沢にある本屋B&Bでトークイベントが開催されます。
本書の著者のひとりである小林康夫先生と、荒川修作の生前その活動に注目し、応援し続けてきた、セゾン現代美術館館長であり芸術批評家の難波英夫先生が、彼との破天荒なエピソードを交えつつ、今あらためて若者を中心に注目される世界のアラカワについて語ります。また、荒川を通して見えてくる「建築」や「人間」の可能性についても十全に語り尽くします。

小林康夫(こばやしやすお)
1950年、東京都に生まれる。東京大学大学院博士課程、パリ第十大学(ナンテール)大学院博士課程修了。東京大学大学院総合文化研究科・教養学部教授を経て、現在、青山学院大学総合文化政策学部特任教授。専攻、フランス文学、哲学。主な近著に、『こころのアポリア』(羽鳥書店、2013)、『君自身の哲学へ』(大和書房、2015)などがある。

難波英夫(なんばひでお)
1950年、東京都に生まれる。東京芸術大学美術学部美術学科卒業。現在、セゾン現代美術館館長。専攻、欧米近現代美術。『横尾忠則全絵画』(監修・解説、平凡社、1996)、訳書に、ベッツィー・ワイエス『クリスティーナの世界』(リブロポート、1983)などがある。

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日時:2015年8月21日(金)20:00~22:00(19:30開場)
場所:本屋B&B(世田谷区北沢2-12-4 第2マツヤビル2F)
入場料:1500yen+1drink order
お申込み先:http://bookandbeer.com/event/20150821_yurei/
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8月新刊:小島信夫長篇集成⑤ 別れる理由Ⅱ

2015年 8月 17日

小島長篇5カバ
小島信夫長篇集成⑤ 別れる理由Ⅱ
編集委員=千石英世・中村邦生
編集協力=柿谷浩一
解説=佐々木敦
月報=坂内正・青木健・千石英世

A5判上製
688頁
定価9000円+税 
ISBN978-4-8010-0115-2 C0393 好評発売中!
装幀:西山孝司

『別れる理由』は、さしあたり「小説」と呼ばれている営み/試みの、ある「可能性の限界にあらわれる何か」である。小島信夫は甘えてなどいない。いや、たとえ「甘え」だとしても、それは別の「甘え」を、長い長い時間をかけて打ち負かしていくような「甘え」なのである。この意味で、この驚異的な大作は、今なお、いや今こそ読まれる価値がある。(佐々木敦「解説」より)

著者生誕100年&没後10年記念出版!
小島信夫のすべての長篇小説を網羅するシリーズ、第1回配本。
連載期間12年半、全4000枚。夫婦・親子・男女の愛の錯綜と混沌を凄絶なまでに描き尽くし、旧来の小説の方法を悉く破砕する伝説的問題作、著者随一の超大作にして日本文学史上に異彩を放ち続ける現代文学の極北。

『別れる理由Ⅱ』で描かれるのは、異色のミュージカル的展開のもと、狂気の主人公=前田永造を銜えこむ奇々怪々な〈真夏の夜の夢〉。
喧々諤々の激論、性をめぐる怒濤の大演説、不義密通と乱交パーティ、いつ果てるともなく続くセックス。そんな中、永造は女に成り変わり、虫に成り下がり、ついには馬に成り上がる……。
いよいよ暴走をはじめる、日本文学史上屈指の問題作『別れる理由』の小説世界!

★内容見本に付属の応募ハガキにて全巻ご予約・ご購入の方にはもれなく、小島信夫の魅力がいっぱいの小冊子『小島信夫の世界』(仮題、非売品)を進呈いたします。(2015年10月末日締切)。
★内容見本は全国の書店にて配布中です。小社へ直接ご請求いただく場合は、郵便切手82円分を同封の上、【〒112-0002 東京都文京区小石川2-10-1 水声社営業部・小島信夫係】までお願いいたします。

【次回配本】
⑤別れる理由Ⅲ 解説=千野帽子 9000円+税

【小島信夫の本】
《小島信夫短篇集成》
①小銃/馬 解説=千石英世 8000円+税
②アメリカン・スクール/無限後退 解説=芳川泰久 8000円+税
③愛の完結/異郷の道化師 解説=堀江敏幸 8000円+税
④夫のいない部屋/弱い結婚 解説=平田俊子 8000円+税
⑤眼/階段のあがりはな 解説=いとうせいこう 6000円+税
⑥ハッピネス/女たち 解説=中村邦生 7000円+税
⑦月光/平安 解説=保坂和志 7000円+税
⑧暮坂/こよなく愛した 解説=千野帽子 8000円+税

《小島信夫批評集成》
①現代文学の進退 解説=中村邦生 8000円+税
②変幻自在の人間 解説=都甲幸治 10000円+税
③私の作家評伝(全) 解説=千石英世 7000円+税
④私の作家遍歴Ⅰ 解説=保坂和志 6000円+税
⑤私の作家遍歴Ⅱ 解説=宇野邦一 6000円+税
⑥私の作家遍歴Ⅲ 解説=阿部公彦 6000円+税
⑦そんなに沢山のトランクを 解説=堀江敏幸 9000円+税
⑧漱石を読む 解説=千野帽子 8000円+税

小説の楽しみ 1500円+税
書簡文学論 1800円+税
演劇の一場面 2000円+税

未完の小島信夫 中村邦生+千石英世 2500円+税
小島信夫の読んだ本 小島信夫文庫蔵書目録 昭和女子大学図書館編 5000円+税
小島信夫の書き込み本を読む 小島信夫文庫関係資料目録 昭和女子大学図書館編 5000円+税
水声通信②/小島信夫を再読する 1000円+税

 

《小島信夫長篇集成》が紹介されました

2015年 8月 17日

エキサイトレビューにて、《小島信夫長篇集成》が紹介されました!
ライターは、本集成第6巻『別れる理由Ⅲ』(9月上旬発売予定)に解説を寄せていただく千野帽子さんです(7月19日掲載)。

TV版「エヴァ」か江口寿史「POCKY」か。世紀のデタラメ、文学的大事故『別れる理由』復活
http://www.excite.co.jp/News/reviewbook/20150719/E1437214095848.html

小島信夫には愛好者が多い。それも文学の「通」みたいな人にかぎって、小島信夫を褒める。
『別れる理由』はしばしば、果敢な文学的実験とされる。
僕は小島信夫が書くものがとにかく大好きだ。だけど、いわゆる「愛好者」かどうかはわからない。そもそも僕が文学の「通」でないことは確かだ。
だから、自分の立場からはっきり言う。
これは事故だ。「傑作」などと強弁はしない。



別れる理由Ⅰ 解説=千石英世 *好評発売中
別れる理由Ⅱ 解説=佐々木敦 *8月上旬発売予定
別れる理由Ⅲ 解説=千野帽子 *9月上旬発売予定
各巻9000円+税



★内容見本に付属の応募ハガキにて全巻ご予約・ご購入の方にはもれなく、小島信夫の魅力がいっぱいの小冊子『小島信夫の世界』(仮題、非売品)を進呈いたします。(2015年10月末日締切)。
★内容見本は全国の書店にて配布中です。小社へ直接ご請求いただく場合は、郵便切手82円分を同封の上、【〒112-0002 東京都文京区小石川2-10-1 水声社営業部・小島信夫係】までお願いいたします。

 

7月新刊:小島信夫長篇集成④ 別れる理由Ⅰ

2015年 8月 17日

小島長篇4カバー
小島信夫長篇集成④ 別れる理由Ⅰ
編集委員=千石英世・中村邦生
編集協力=柿谷浩一
解説=千石英世
月報=勝又浩・大杉重男・千石英世

A5判上製
688頁
定価9000円+税 
ISBN978-4-8010-0114-5 C0393 好評発売中!
装幀:西山孝司

悪人がいるわけではないのに、みな善意の人であるのに、みな日々の営みに精励する人なのに、だのに苦労がある。いや苦労ではなく苦悩だ。みな愛し愛されているのに頭上に澄み渡った青空はない。曇天の、しかし、静かな日常。その静かさのなかに苦悩を沈めている。愛があるのに、ではなく、愛があるから苦悩があるのだろうか。人が人と別れるのは、人が人に惹かれるからであろうか。人はなぜ人に惹かれるのだろう。(千石英世「解説」より)

著者生誕100年&没後10年記念出版!
小島信夫のすべての長篇小説を網羅するシリーズ、第1回配本。
連載期間12年半、全4000枚。夫婦・親子・男女の愛の錯綜と混沌を凄絶なまでに描き尽くし、旧来の小説の方法を悉く破砕する伝説的問題作、著者随一の超大作にして日本文学史上に異彩を放ち続ける現代文学の極北。

『別れる理由Ⅰ』では、主人公・前田永造とその家族に流れる静かな日常が、ゆるやかに、しかしとりとめもなく綴られる。やがてあきらかになる、亡き妻・陽子との波乱の日々、後妻・京子との心の懸隔、そして恵子との不倫関係……。他人の女を抱いてなお、愛する妻をひたぶるにいとおしまずにいられない、男の切なる想いとは?

★内容見本に付属の応募ハガキにて全巻ご予約・ご購入の方にはもれなく、小島信夫の魅力がいっぱいの小冊子『小島信夫の世界』(仮題、非売品)を進呈いたします。(2015年10月末日締切)。
★内容見本は全国の書店にて配布中です。小社へ直接ご請求いただく場合は、郵便切手82円分を同封の上、【〒112-0002 東京都文京区小石川2-10-1 水声社営業部・小島信夫係】までお願いいたします。

【次回配本】
⑤別れる理由Ⅱ 解説=佐々木敦 9000円+税

【小島信夫の本】
《小島信夫短篇集成》
①小銃/馬 解説=千石英世 8000円+税
②アメリカン・スクール/無限後退 解説=芳川泰久 8000円+税
③愛の完結/異郷の道化師 解説=堀江敏幸 8000円+税
④夫のいない部屋/弱い結婚 解説=平田俊子 8000円+税
⑤眼/階段のあがりはな 解説=いとうせいこう 6000円+税
⑥ハッピネス/女たち 解説=中村邦生 7000円+税
⑦月光/平安 解説=保坂和志 7000円+税
⑧暮坂/こよなく愛した 解説=千野帽子 8000円+税

《小島信夫批評集成》
①現代文学の進退 解説=中村邦生 8000円+税
②変幻自在の人間 解説=都甲幸治 10000円+税
③私の作家評伝(全) 解説=千石英世 7000円+税
④私の作家遍歴Ⅰ 解説=保坂和志 6000円+税
⑤私の作家遍歴Ⅱ 解説=宇野邦一 6000円+税
⑥私の作家遍歴Ⅲ 解説=阿部公彦 6000円+税
⑦そんなに沢山のトランクを 解説=堀江敏幸 9000円+税
⑧漱石を読む 解説=千野帽子 8000円+税

小説の楽しみ 1500円+税
書簡文学論 1800円+税
演劇の一場面 2000円+税

未完の小島信夫 中村邦生+千石英世 2500円+税
小島信夫の読んだ本 小島信夫文庫蔵書目録 昭和女子大学図書館編 5000円+税
小島信夫の書き込み本を読む 小島信夫文庫関係資料目録 昭和女子大学図書館編 5000円+税
水声通信②/小島信夫を再読する 1000円+税

 

7月新刊:アルジェリアの闘うフェミニスト

2015年 7月 28日

アルジェリア 書影
アルジェリアの闘うフェミニスト
ハーリダ・メサウーディ(著) エリザベート・シェムラ(聞き手)
中島和子(訳)

判型:四六版上製
頁数:280頁
定価+税:3000円+税
ISBN:978-4-8010-0123-7 Cコード:C 0036 好評発売中!
装幀者:宗利淳一

内容紹介:
「胸を張って立ち続けていること、それが大切なのです」――真の自由を、女性の権利を求めて立ち上がった、女性の証言。

若くしてフェミニズム運動に身を投じた闘士ハーリダ・メサウーディは、1993年、当時隆盛をきわめるイスラーム原理主義グループ、イスラーム救済戦線(FIS)から「死刑」宣告を受ける。命を狙われながら、なおも女性の権利を訴え続ける彼女を動かしたものとは、一体何なのか? 世俗主義と共和制への信念、日和見政権への批判、「家族法」なる女性の所有化への怒り、教育に忍び込むイデオロギーと横行するテロへの危惧、1988年10月の大規模デモから1992年の選挙中止の舞台裏……一個人の回顧録にして、時勢を色濃く写した、闘いの記録!

著者について:
ハーリダ・メサウーディ(Khalida Messaoudi)  1958年、アルジェリアのカビリア地方に生まれる。高等師範学校(アルジェ)で数学の修士号を取得。AITDF(女性の権利を勝ち取るための独立協会)を創設し、女性運動を推める。文化大臣(2002‐14)を務める。

役者について:
中島和子(なかじまかずこ)  1948年、兵庫県に生まれる。パリ第三大学修士課程修了。専攻、フランス文学・フランス文化。主な訳書に、フランソワ・カラデック『フランス児童文学史』(共訳、青山社、1994)、ファドマ・アムルシュ『カビリアの女たち』(水声社、2005)などがある。

目次:
プロローグ
第1章「もうけもの」の年月
第2章青春時代のイスラーム
第3章「内の内」の女たち
第4章ヴォルテールとアヴェロエスの娘
第5章家族法、恥辱の法
第6章ホメイニなんて知らない!
第7章混迷の教育現場
第8章1988年10月選挙を自問し続けて
第9章アルジェリアの爆弾
第10章FISの核にあるもの「性」
第11章選挙中止
第12章袋小路からの脱出は可能か?
エピローグ――アルジェリアのそれから

ハーリダ・メサウーディへの死刑宣告
用語解説
ハーリダ・メサウーディ略年譜

訳者あとがき

 

7月新刊:黒いロシア 白いロシア──アヴァンギャルドの記憶≪水声文庫≫

2015年 7月 28日

黒いロシア 書影
黒いロシア 白いロシア
アヴァンギャルドの記憶
武隈喜一(著)

判型:四六判上製
頁数:354頁
定価:3500円+税
ISBN:978−4−8010−0121−3 C0070 好評発売中!
装幀者:宗利淳一

内容紹介:

〈革命〉によって,芸術文化が華開いた〈白いロシア〉の背後には,政治的抑圧によって社会的混乱に陥った野蛮な〈黒いロシア〉があった。ロシア革命からペレストロイカ以降までの芸術と政治の光と影を対照的に描き上げた,斬新な芸術─革命論!


目次:
Ⅰ アヴァンギャルドの記憶
永遠なる綱渡りをめざして──ロシア・アヴァンギャルドの地平
民衆の創造力の復権に向けて──ロシア・アヴァンギャルド演劇の機能
民衆演劇とアジプロ劇──ロシア・アヴァンギャルド演劇の方法
「演劇の十月」再考
革命の街頭芸術──民衆芸術としてのロシア・アヴァンギャルド

Ⅱ ロシアフラグメント
アレクサンドル・ブロークの夏
予言の鳥「ガマユーン」は歌う──ブロークとクリューエフ
忘れられた詩人・歌手──アレクサンドル・ヴェルチンスキイについて
ロマンスの歴史の断片──ピョートル・レシチェンコについて
「黄色いバビロン」のロシア人
ドミトリイ・チョームキンと群集劇,西部劇
パガニーニの帽子──ある出会いの記録
パトロネージュの黄金時代──ロシア文化を支えた実業家たち
美術史の巨大な胃袋──エルミタージュ美術館

Ⅲ ペレストロイカの見た夢
ソ連における言論の自由とは何か──官僚主義と国家統制の中で
ソ連におけるエコロジー運動とは何か──繰り返しのきかない道
ソ連における「報道の客観性」とは何か──グラスノスチの二重の危機
グラスノスチはどこへ行くのか
インテリゲンチャはどこへ行くのか
メディアはどこへ行くのか
黒いロシア──世界の脅威としての

Ⅳ モスクワれとろすぺくてぃぶ
トーポリの舞うモスクワで
ガリツィアの小さな町で──ウクライナ民族主義について
キエフの坂道で
絵画の大ロシア主義──イリヤ・グラズノフについて
イーゴリとの対話──政治家と『プラウダ』について
聖者の帰還──モスクワのソルジェニツィン
露天の古本
頽廃の匂いの町──ウラジオストクにて
地下都市の秘密──ディッガーたちの下水道探検
バービエ・リェータの哲学散歩
アイスを片手に──土曜の午後の散歩
シベリアの冬──ウォッカと蒸し風呂
アボーシカおばさん──冬の風物詩から
アルバート通りの骨董屋
マースレニツァ──「光の春」のおとずれ
救世主寺院の再興──建都850年に向けて
新興宗教の時代──神秘主義と終末論
対独戦勝記念日──「勝利した民族に栄光あれ!」
復刻盛んな出版界
世紀末の画家〈ヴルーベリの間〉
〈10月19日〉と街の古本商
30年代の記憶──タトリンの墓、メイエルホリドの家
復活する旧地名──名前と記憶
詩人ニコライ・ルプツォフについて
女性詩人ヴィトゥフノフスカヤ事件について
アルマトィの街角で
「主よ、憐れみ給え」の声が
ブライトンビーチの波打ち際で
イヴァノヴォの女性たち
苛酷な時代の刻印──流しの本屋
古書オークション体験記
古書に憑かれた人びと
ショスターコヴィチの夕べ
「ボリス・ゴドゥノフ」註釈本の面白さ
プーシキン決闘の地──チョールナヤ・レーチカにて
任命された国民詩人──プーシキン生誕二百年祭
真冬の夢の館──〈マリインスキイ劇場〉の常連たち

引用文献
主要参考文献
初出一覧

あとがき

著者について:
武隈喜一(たけくま きいち)  1957年,東京都に生まれる。1980年,上智大学外国語学部ロシア語学科卒業,1982年、東京大学文学部露文科卒業。大学卒業後,出版社,通信社を経て,1992年からテレビ朝日に勤務。1994年から1999年,モスクワ支局長。2012年から2013年,北海道大学スラブ研究センター客員教授。
主な編訳書に,『ロシア・アヴァンギャルドⅡ 演劇の十月』(国書刊行会,1988),『ロシア・アヴァンギャルドⅠ 未来派の実験』(国書刊行会,1989,ともに共編)などがある。

関連書:
ロシア・アヴァンギャルドの映画と演劇/岩本憲児著/3000円+税
ロシア・アヴァンギャルドの世紀/江村公著/4000円+税
ロシア・アヴァンギャルド遊泳/大石雅彦著/3500円+税
危機の時代のポリフォニー/桑野隆著/3000円+税
ロトチェンコとソヴィエト文化の建設/河村彩著/6000円+税
ロシア・アヴァンギャルド小百科/タチヤナ・コトヴィチ著/桑野隆他訳/8000円+税
メイエルホリド 演劇の革命/エドワード・ブローン著/浦雅春,伊藤愉訳/5000円+税
モスクワ芸術座の人々/アナトーリー・スメリャンスキー著/木村妙子訳/3500円+税
日常と祝祭/アレクサンドル・プジコフ著/木村妙子訳/4000円+税
サーカスと革命/大島幹雄著/2800円+税

 

7月新刊:ロリア侯爵夫人の失踪《フィクションのエル・ドラード》

2015年 7月 28日

書影
ロリア侯爵夫人の失踪
ホセ・ドノソ(著)
寺尾 隆吉(訳)

判型:四六判上製
頁数:176頁
定価:2000円+税
ISBN:978-4-89176-957-4 C 0397 好評発売中!
装幀者:宗利淳一

内容紹介:
ドノソの小説はチリにとっての〈神々の黄昏〉だ。(フリオ・コルタサル)
ドノソのすべてがいつも最良の文学だった。(マリオ・バルガス・ジョサ)

“アイロニーに貫かれた官能的文体”
外交官の娘としてマドリードに来たブランカ・アリアスは、若くしてロリア侯爵と結婚する。若さ、富、美貌、すべてを備えた侯爵夫人に唯一欠けていたのは、夫との〈愛の達成〉だった。未亡人となりながらも快楽を追求し続け、さまざまな男性を経験するブランカにおとずれるものとは……!?
軽妙なタッチで人間の際限ない性欲を捉え、その秘められた破壊的魔力を艷やかながらもどこか歪に描き出す、ドノソ的官能小説!!

著者について:
ホセ・ドノソ(José Donoso)
1924年、チリのサンティアゴのブルジョア家庭に生まれる。1945年から46年までパタゴニアを放浪した後、1949年からプリンストン大学で英米文学を研究。帰国後、教鞭を取る傍ら創作に従事し、1958年、長編小説『戴冠』で成功を収める。1964年にチリを出国した後、約17年にわたって、メキシコ、アメリカ合衆国、ポルトガル、スペインの各地を転々としながら小説を書き続けた。1981年にピノチェト軍事政権下のチリに帰国、1990年には国民文学賞を受けた。1996年、サンティアゴにて没。代表作に、『夜のみだらな鳥』(1970、水声社より近刊)、
『別荘』(1978)、『絶望』(1986)などがある。

訳者について:
寺尾隆吉(てらおりゅうきち)  1971年、愛知県に生まれる。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了(学術博士)。現在、フェリス女学院大学国際交流学部教授。専攻、現代ラテンアメリカ文学。主な著著には、『フィクションと証言の間で――現代ラテンアメリカにおける政治・社会動乱と小説創作』(松籟社、2007)、『魔術的リアリズム』(水声社、2012)、主な訳書には、ホセ・ドノソ『境界なき土地』(水声社、2013)、ホセ・ドノソ『別荘』(現代企画室、2014)などがある。

関連書:
《フィクションのエル・ドラード》(既刊=★)
襲撃 レイナルド・アレナス/山辺弦訳 
気まぐれニンフ ギジェルモ・カブレラ・インファンテ/山辺弦訳 
バロック協奏曲 アレホ・カルペンティエル/鼓直訳
時との戦い アレホ・カルペンティエル/鼓直訳
方法再説 アレホ・カルペンティエル/寺尾隆吉訳
対岸 フリオ・コルタサル/寺尾隆吉訳  2000円+税(★)
八面体 フリオ・コルタサル/寺尾隆吉訳  2200円+税(★)
境界なき土地 ホセ・ドノソ/寺尾隆吉訳  2000円+税(★)
ロリア侯爵夫人の不思議な失踪 ホセ・ドノソ/寺尾隆吉訳(★)
夜のみだらな鳥 ホセ・ドノソ/鼓直訳
ガラスの国境 カルロス・フエンテス/寺尾隆吉訳+税(★)
案内係 ほか傑作短篇集 フェリスベルト・エルナンデス/浜田和範訳
別れ フアン・カルロス・オネッティ/寺尾隆吉訳  2000円+税(★)
人工呼吸 リカルド・ピグリア/大西亮訳(次回配本予定!)
圧力とダイヤモンド ビルヒリオ・ピニェーラ/山辺弦訳
ただ影だけ セルヒオ・ラミレス/寺尾隆吉訳 2800円+税(★)
孤児 フアン・ホセ・サエール/寺尾隆吉訳  2200円+税(★)
傷跡 フアン・ホセ・サエール/大西亮訳
マイタの物語 マリオ・バルガス・ジョサ/寺尾隆吉訳
コスタグアナ秘史 フアン・ガブリエル・バスケス/久野量一訳
* タイトル、訳者は予告なく変更になる場合があります。ご了承下さい。

 

7月の新刊:フリーアート

2015年 7月 28日

フリーアート
フリーアート
菅沼荘二郎

A5判並製
152頁+別丁カラー4頁
定価2000円+税
ISBN978-4-8010-0122-0 C0070 好評発売中!
装幀:齋藤久美子

禅の心でよむ現代芸術。
悠揚自在にアートする画家が親しんだヘンリー・ミラーの小説,ミラーに影響を与えたニーチェ,そしてジョン・ケージの現代音楽,ビートたけしの絵など現代芸術について禅の目で見,その心で縦横に語る。

目次
三宅島写生会のこと
 石川光寛さんのこと
 渡部弘喜のこと
「へなへな,ふにゃふにゃ」——アートへの東洋的思考
ヘンリー・ミラーのことなど
 ヘンリー・ミラーの話からニーチェへ
 ヘンリー・ミラーとニーチェ―—『臨済録』との比較
ビートたけしのことなど
 「ビートたけし展」を息子とも見に行く
 「ビートたけし展」で思うこと
日本美術の軽さと諧謔
本庄の寒山のこと
 フリーな生活者 Y
ジョン・ケージのことなど
現代の創作
あとがき

著者について
菅沼荘二郎(すがぬまそうじろう)  1938年,諏訪市に生まれる。1973年3月〜74年3月,パリに留学(この間,サロン・ドートンヌに出展)。1989年5月〜6月,ニューヨークに滞在。現在,絵画教室菅沼アトリエ主宰,東方学院講師(実技絵画)。1991年,鳥羽市立図書館(三重)1995年,CAST IRON GARALLEY (ソーホー,ニューヨーク),1997年,THE EMERGING COLLECTOR (イーストヴィレッジ,ニューヨーク)等,日本と米国の各地で個展。著書に『となり町の寒山』(水声社,2009)がある。

関連書
となり町の寒山 菅沼荘二郎 2000円+税
パラダイスの乞食たち アーヴィング・ステットナー 本田康典+三保子ステットナー訳 2500円+税
ヘンリー・ミラー・コレクション  編集=飛田茂雄+本田康典+松田憲次郎 全16巻(刊行中) 2500円〜5000円+税

 

書評『作家の聖別』

2015年 7月 28日

今年の一月に刊行されました『作家の聖別』が書評で取り上げられました。各媒体のみなさま、書評者のみなさま、どうもありがとうございました!


◎週刊読書人(2015年5月15日付)
「掛け値なしに名著と呼べる書物〔……〕いまこそ人文学はベニシューに還らなければならない、ベニシューとともに、社会と文学の現在を考えなければならない」(野崎歓さん)

◎ 図書新聞(2015年4月18日付)
「ベニシューの歴史的展望は、〔……〕ラディカルな思考に裏打ちされている。〔……この〕壮大な四部作は新たな地平を開く鍵となるにちがいない」(工藤庸子さん)

◎ ふらんす(2015年3月号)
「それまでの認識を大きく変え、その後長きにわたって基本的な参照文献となる、記念碑的な著作〔……〕長い期間にわたって緻密になされた読書と思考の見事な産物がここにある」(小倉考誠さん)

作家の聖別——フランス・ロマン主義 Ⅰ
ポール・ベニシュー 片岡大右+原大地+辻川慶子+古城毅訳
A5判上製/688頁/定価=8000円+税
ISBN978-4-8010-0028-5 C0098 好評発売中!
装幀=西山孝司

フランス・ロマン主義の哲学的歴史

驚くべきこと、ほとんど奇跡とも思えることであるが、最初の羽ばたきのときには時代遅れのものに映ったこの偉大な業績は、時の流れを受けて今、永遠の空を飛翔している。——フランソワ・フュレ(革命史家)

19世紀前半、宗教的権力に代わり、世俗的な聖職者たらんとした詩人、文学者たちの「聖別」の過程を克明に追いながら、いかにして文学が高い精神的職務を担うよう求められるに至ったのかを論じる。フランス・ロマン主義を徹底的に解明する長大評論の第一巻。

〈ベニシューのロマン主義研究は、文学的なものの社会的身分規定を探求する歩みそれ自体を通して、非宗教化された社会生活を律しうる新たな正当化原理の形成という、フランス的近代の全体を貫く――そして私たちの生きる近代それ自体の根本的性格とも関わっているはずの――広範な問題系へと道を開く。〉
「ポール・ベニシューとその時代(1)」より

【目次】
作家の行程―ポール・ベニシューへのインタビュー

作家の聖別

序論
第一章 世俗的聖職を求めて
第二章 神聖詩人
第三章 イリュミニスムと詩―ルイ・クロード・ド・サン=マルタン
第四章 反革命と文学
第五章 自由主義派の貢献
第六章 神智論者の詩学
第七章 ロマン主義革命
第八章 偉大な世代の登場
第九章 一八三〇年と〈若きフランス〉

巻末の省察


人名索引

ポール・ベニシューとその時代(一) 片岡大右
訳者あとがき

【著者/訳者について】
ポール・ベニシュー(Paul Bénichou)  1908年、トレムセン(アルジェリア)生まれ。2001年パリに没した。ユルム街の高等師範学校(フランス、パリ)に学ぶ。第二次大戦中のアルゼンチン亡命を挟み、戦前・戦後にかけて長くフランスで中等教育に携わった後、1958年にハーヴァード大学(アメリカ合衆国)に招かれて、以後79年までフランス文学およびスペイン口承文学を講じた。1948年の『偉大な世紀のモラル』(朝倉剛・羽賀賢二訳、法政大学出版局、1993)に始まり、1973年の『作家の聖別』(本書)以降、『預言者の時代』(1977)、『ロマン主義の祭司』(1988)、『幻滅の流派』(1992)と書き継がれた四冊の「フランス・ロマン主義の哲学的歴史」を経て1995年の『マラルメに従って』に至る一連の著作は、17世紀以降のフランス文学・思想史を刷新する壮大なパノラマを描き出している。

片岡大右(かたおかだいすけ)  1974年北海道生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科にて博士号取得。現在、同研究科研究員。フランス文学・思想史。著書に『隠遁者、野生人、蛮人――反文明的形象の系譜と近代』(知泉書館、2012)、最近の論文に« Chateaubriand disciple infidèle de Pascal »(RHLF, à paraître en 2015)、共訳書にF・ドゥノール&A・シュワルツ『欧州統合と新自由主義――社会的ヨーロッパの行方』(論創社、2012)などがある。
原大地(はらたいち)  1973年東京都生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科単位取得退学。パリ第四大学にて博士号取得。現在、慶應義塾大学商学部准教授。フランス語・フランス文学。著書にLautréamont : vers l’autre (L’Harmattan, 2006)、『牧神の午後―マラルメを読もう』(慶應義塾大学教養研究センター選書、2011)、『マラルメ 不在の懐胎』(慶應義塾大学出版会、2014)などがある。
辻川慶子(つじかわけいこ)  1973年大阪府生まれ。京都大学大学院文学研究科単位取得退学。パリ第八大学にて博士号取得。現在、白百合女子大学准教授。19世紀フランス文学。著書にNerval et les limbes de l’histoire. Lecture des Illuminés (Genève, Droz, 2008)、共訳書にブリュノ・ヴィアール『100語でわかるロマン主義』(白水社、2012)などがある。
古城毅(こじょうたけし)  1975年東京都生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科にて博士号取得。現在、学習院大学法学部教授。政治学史。主な論文に「商業社会と代表制、多神教とデモクラシー(1)‐(5)」(『国家学会雑誌』第127巻、3・4号‐11・12号、2014)、「フランス革命期の共和政論――コンスタンと、メストル、ネッケル、スタール―」(『国家学会雑誌』第117巻、5・6号、2004)、訳書にブリュノ・ベルナルディ『ジャン=ジャック・ルソーの政治哲学―一般意志・人民主権・共和国』(共訳、勁草書房、2014)などがある。

 

《小島信夫長篇集成》まもなく配本開始!

2015年 7月 7日

現代日本文学の異才=小島信夫の全長篇を網羅する、待望の新シリーズ《小島信夫長篇集成》全10巻、初回配本の『別れる理由Ⅰ』が、7月9日ごろから書店に並びます。

また、全巻ご予約の応募ハガキ付き内容見本も配布中。
全巻ご予約・ご購入の方にはもれなく、小島信夫の魅力がいっぱいの小冊子『小島信夫の世界』(仮題、非売品)を進呈いたします。

《小島信夫長篇集成》にぜひご期待ください!

小島長篇パンフ表

小島長篇パンフ裏

 

 

 

 

 
*PDF版はこちら→小島長篇パンフ表小島長篇パンフ裏

*内容見本は全国の書店にて配布中です。小社へ直接ご請求いただく場合は、郵便切手82円分を同封の上、【〒112-0002 東京都文京区小石川2-10-1 水声社営業部・小島信夫係】までお願いいたします。

 

7月新刊:ジョン・ケージ伝

2015年 6月 23日

ケージ書影
ジョン・ケージ伝 新たな挑戦の軌跡
ケネス・シルヴァーマン
柿沼敏江訳

判型:A5判上製
頁数:506頁
定価:5800円+税
ISBN978-4-8010-0094-0  C0073  好評発売中!
装幀者:宗利淳一

*本書は、論創社との共同による出版です。

内容紹介:
沈黙もまた音楽である……
音楽の概念を一変させてしまった、20世紀を代表する音楽家の、本邦初の伝記。

ケージはやはりとても巨大で、でも、ぼくにとっては、ナム・ジュン・パイクに連れられて行ったケージのペントハウスで、こっそりキッチンに忍び込み、例の茸が収納されている薬棚を目撃した日のことが、とても大事です。
——坂本龍一(音楽家)

現代音楽の父、キノコ博士、音楽に『易』を取り入れた男、スタインウェイにハンマーを投げ込んで弾いた男……ジョン・ケージとはいったい誰か? デュシャン、カニングハム、ラウシェンバーグ、ジャスパー・ジョーンズ、オノ・ヨーコ、シェーンベルク、マクルーハン、バックミンスター・フラーなどとの華やかな交流とともに、ジョン・ケージの真の姿に迫る!

著者について:
ケネス・シルヴァーマン(Kenneth Silverman) 1936年生まれ。『アメリカ革命の文化史』のほか数冊の伝記を著しており、伝記作家として知られている。『コットン・マザーの人生とその時代』ではピュリッツァー賞とバンクロフト賞を受賞。またエドガー・アラン・ポーの伝記ではアメリカ探偵作家クラブのエドガー賞、『フーディーニ!!!』ではアメリカ奇術師協会のクリストファー文学賞を受賞。アメリカ文学アカデミーの特別会員。ニューヨーク大学英文学名誉教授。ニューヨーク在住。

訳者について:
柿沼敏江(かきぬまとしえ)  静岡県に生まれる。国立音楽大学、お茶の水女子大学大学院修士課程を経て、カリフォルニア大学サンディエゴ校音楽学部博士課程修了(Ph.D.)。現在、京都市立芸術大学音楽学部教授。専攻、西洋音楽史。主な著訳書に、『アメリカ実験音楽は民族音楽だった』(フィルムアート、2005)、ジョン・ケージ『サイレンス』(水声社、1996)、アレックス・ロス『二十世紀を語る音楽』(みすず書房、2010)などがある。

関連書
ジョン・ケージ 柿沼敏江訳『サイレンス』 4000円+税
ダニエル・シャルル 岩佐鉄男訳『ジョン・ケージ』 4000円+税

 

日仏翻訳受賞報告

2015年 6月 23日

受賞写真
弊社から2013年1月に刊行されました、レーモン・クノー『リモンの子供たち』の翻訳が、「専門的知見に支えられた驚くべき名人芸」であるとして、訳者の塩塚秀一郎氏に第20回日仏翻訳文学賞が与えられました。(授賞式:2015年6月15日、於、ホテル・オークラ)
選考委員の野崎歓、堀江敏幸、澤田直の3氏、小西国際交流財団の皆様をはじめ、このたびの選考に関わられた皆様に感謝申し上げます。
「英雄が渇望される時代一般への警鐘としての普遍的な価値」と「クノーらしい人間に対する寛容な眼差し」(塩塚秀一郎氏(受賞者))という、二面的な魅力を持つ本作を、この機会にぜひお手にとってご覧下さい。

リモンの子供たち (レーモン・クノー・コレクション 3)
塩塚秀一郎訳
四六判/上製395頁/定価3200円+税
ISBN978-4-89176-863-8 C0397 絶賛発売中!


太陽は糞便でできている!

実在の〈狂人〉たちをテーマに『不正確科学百科事典』を執筆する、シャンベルナックとブルジョアの一家、リモン家。二つの世界が交錯しながら、突飛な〈狂人〉たちの言行が、破局へ向かう時代の空気を照らし出す。人間の愚かさを根源的に問う、クノーの知られざる傑作。

 

6月新刊:変動期の画家

2015年 6月 23日

書影
変動期の画家
山口泰二(著)

判型:A5版
頁数:488頁
定価:5000円+税
ISBN:978−4−8010−0104−6 C0070 好評発売中!
発行:美術運動史研究会
発売:水声社

表現の自由が奪われた時代の画家たち
社会の状況と格闘しながら、絵画の可能性に挑んだ松本竣介、柳瀬正夢、永田一脩、小野忠重、鳥居敏文。絵と生活に刻まれた苦悩や喜びは社会と美術のかかわりを語る歴史の貴重な遺産である。

《私達若い画家が、実に困難な生活の中にゐて、なほ制作を中止しないといふことは、それが一歩一歩人間としての生成を意味してゐるからである。例え私が何事も完成しなかったとしても、正しい系譜の筋として生きるならば、やがて誰かがその意志を成就せしめるであらう。》…………松本竣介

内容紹介:
1920年代半ばから終戦前後にかけての抑圧的な社会のなかで、それに屈することなく、絵画の可能性を探究し続けた5人の画家たち。
彼らが貫いた精神と表現世界とは何か?
そこから生み出された絵画とは?

目次:
Ⅰ 松本竣介の思考

第一章 『線』と赤荳の時代
1 同人誌『線』
2 絵画の階級性論争
3 赤荳会と青年たちの境遇

第二章 時代の夜に現れた新星
1 戦時下に求めた絵画の理想──表現の特質
2 『線』から『雑記帳』へ──思考の熟成
3 構図、線、顔の探求を通じて──画風の転換
4 新人画会から焼け跡での模索へ──再建の希望

第三章 「生きてゐる画家」考
1 土方定一の評価
2 洲之内徹の異論
3 「生きてゐる画家」の再検討
4 戦争協力と《航空兵群》
5 美術報国会と終戦
6 一九四五年一〇月──松本竣介の戦後

〔補〕 作品解釈の新地平──長田謙一論文について

Ⅱ プロレタリア美術点景

第一章 柳瀬正夢ふたつの問題
1 モザイク点描と《果樹島園》
2 ジョージ・グロスの受容と評価

第二章 永田一脩とプロレタリア美術運動

第三章 小野忠重版画の起点

第四章 鳥居敏文の画業と足跡
1 初期作品と生い立ち
2 危機一髪のベルリン脱出
3 自由のパリから暗雲の日本へ
4 戦時絵画としての労働現場
5 長崎アトリエ村と池袋大空襲
6 新しいリアリズム

年譜1 松本竣介の造形展開
年譜2 松本竣介1940〜42年の詳細
年譜3 プロレタリア美術運動組織の推移

解題とあとがき


著者ついて:
山口泰二(やまぐちたいじ) 1939年生まれ。前橋市出身。新聞記者を経て美術運動史研究会を主宰。専攻、美術評論、近代美術史。
主な著書には、『アメリカ美術と国吉康雄』(日本放送出版協会、2004)、『中谷泰画集』(編・解説、美術の図書三好企画、2000)などがある。

関連書:
村山知義とクルト・シュヴィッタース/マルク・ダシー、松浦寿夫、白川昌夫、塚原史、田中純著/2500円+税
日本のダダ 1920-1970/白川昌夫編、テクスト=阿部良雄、中原佑介、針生一郎他/3800円+税

 

6月新刊:給料をあげてもらうために上司に近づく技術と方法 

2015年 6月 23日

ブログ上司書影
給料をあげてもらうために上司に近づく技術と方法 
ジョルジュ・ペレック 
桑田光平訳 

判型:四六判並製
頁数:155頁
定価:2000円+税
ISBN978-4-8010-0108-4  C0097  好評発売中!
装幀者:HOLON

内容紹介:
不透明な時代を生き抜くために
フランス文学の奇才が提案(?)する、ウリポ的昇給のススメ! 本邦初、フローチャート文学!?
い段ぬきの『煙滅』、480の思い出リスト『ぼくは思い出す』、チェスを応用して書かれた総勢1000人以上が登場する『人生 使用法』など、奇想天外な作品ばかり残した、ジョルジュ・ペレックによる、新・実用書?

著者について:
ジョルジュ・ペレック(Georges Perec)  1936年、パリに生まれ、1982年、同地に没した。小説家。1966年にレーモン・クノー率いる実験文学集団「ウリポ」に加わり、言語遊戯的作品の制作を行う。主な著書には、『煙滅』(1969。水声社、2010)、『Wあるいは子供の頃の思い出』(1975。水声社、2013)、『人生 使用法』(1978。水声社、1992)などがある。

訳者について:
桑田光平(くわだこうへい)   1974年、広島県府中市に生まれる。東京大学大学院博士課程満期退学。パリ第4大学文学博士。専攻、フランス文学・芸術論。現在、東京大学大学院総合文化研究科准教授。主な著書に、『ロラン・バルト 偶発時へのまなざし』(水声社、2011)、『写真と文学』(共著、平凡社、2013)、主な訳書に、バルテュス+セミール・ゼキ『芸術と脳科学の対話』(青土社、2007)、『ロラン・バルト 中国ノート』(ちくま学芸文庫、2011)などがある。

【ペレックの作品】
家出の道筋/酒詰治男訳/2500円+税
煙滅/塩塚秀一郎訳/3200円+税
さまざまな空間/塩塚秀一郎訳/2500円+税
人生 使用法/酒詰治男訳/5000円+税
Wあるいは子供の頃の思い出』/酒詰治男訳/2800円+税
美術愛好家の陳列室/塩塚秀一郎訳/1500円+税
ぼくは思い出す/酒詰治男訳/2800円+税
水声通信6号《ジュルジュ・ペレック》/1000円+税
小誌 風の薔薇5号《ウリポの言語遊戯》/1500円+税

 

6月新刊:ロベール・デスノス――ラジオの詩人

2015年 6月 23日

書影
ロベール・デスノス――ラジオの詩人
小髙正行(著)

判型:四六判上製
頁数:276頁
定価:3000円+税
ISBN:978-4-8010-0107-7 C 0098 好評発売中!
装幀者:宗利淳一

〈声の詩人〉によるラジオ芸術の実践とは?

ラジオ番組・広告のうちに詩的実践をおこない、音声により集団的な〈夢〉をリスナーと共有することでラジオの可能性を切り開いた詩人デスノス。大衆に寄り添い、双方向的なコミュニケーションを可能にするこのメディアは詩人にとってシュルレアリスムの理想を体現していた……
20世紀マルチメディアの先駆をなし、番組・広告制作者としての詩人にスポットを当てる異色のモノグラフ。

目次:

はじめに

プロローグ――「最後の詩篇」
第1章  シュルレアリスムの詩人
第2章 二つの愛――イヴォンヌ・ジョルジュとユキ
第3章 ラジオとの出会い
第4章 大衆詩人とレジスタンス
エピローグ――本当の最後の詩

《補遺》 邦人芸術家とデスノス


ロベール・デスノス略年譜
参考文献

あとがき

著者について:
小髙正行(おだかまさゆき)  1952年、千葉県生まれ。東京大学文学部仏文科卒業後、エフエム東京(TOKYO FM)入社。制作、報道などに携わる。ドキュメンタリー番組の取材・演出で日本民間放送連盟賞/報道部門優秀賞(1987)、企画・制作で同賞/報道部門優秀賞およびギャラクシー賞奨励賞を受賞(1998)。エフエム東京退社後、東京大学大学院人文社会系研究科修士課程に入学。2013年、同大学院修士課程修了。

関連書:
シャルル・クロ 詩人にして科学者——詩・蓄音機・色彩写真/福田裕大 著 4500円+税
アントナン・アルトー 自我の変容——〈思考の不可能性〉から〈詩への反抗〉へ/熊木淳 著 5000円+税
イヴ・タンギー――アーチの増殖/長尾天 著 5000円+税
シュルレアリスム、あるいは作動するエニグマ/J・シェニウー=ジャンドロン 5000円+税

 

6月新刊:詩とイメージ――マラルメ以降のテクストとイメージ

2015年 6月 23日

書影
詩とイメージ――マラルメ以降のテクストとイメージ

マリアンヌ・シモン=及川(編)

(執筆者)
三浦篤
エレーヌ・カンペニョール=カテル
ガエル・テヴァル
鈴木雅雄
谷口円香
セルジュ・リナレス
千葉文夫
塚本昌則
キャロル・オルエ

判型:A5上製
頁数:256頁
定価:4000円+税
ISBN 4-8010-0101-5 C 0090 好評発売中!
装幀者:西山孝司

テクストとイメージが切り開く創造空間とはなにか?

西欧において古代より深い関係を保ってきた詩と美術の関係は、19世紀フランスに出現した詩人マラルメによって決定的に刷新される。書物/挿絵/タイポグラフィー/視覚詩において記念碑的な作品を生み出した詩人の影響のもと、〈詩とイメージ〉の関係は現代までどのように多様化してきたのか。日仏の研究者たちがその本質を究明する。

目次:

まえがき

第Ⅰ部 イメージの世界、詩の世界——本という媒体の変貌
三浦篤/マネとマラルメ――絵画と詩の共鳴
エレーヌ・カンペニョール=カテル/書物の歌——詩集の変容

第Ⅱ部 詩集の中のイメージ
マリアンヌ・シモン=及川/ピエール・アルベール=ビロー――詩集に書かれたイメージ
ガエル・テヴァル/ジャン=フランソワ・ボリーの視覚詩における活字のコラージュと本のレディ・メイド

第Ⅲ部 イメージを詩にする――挿絵の多様性
鈴木雅雄/読めないテクスト、見えない書物——ゲラシム・ルカの視覚的実験
谷口円香/ランボーの『イリュミナシオン』とキュビスム――ロジェ・ド・ラ・フレネの「『イリュミナシオン』のための習作」について

第Ⅳ部 ピカソという巨人
セルジュ・リナレス/詩の挿絵画家ピカソ
千葉文夫/ミシェル・レリスの肖像

第Ⅴ部 イメージを考える、イメージと遊ぶ詩人
塚本昌則/ヴァレリーと写真
キャロル・オルエ/ジャック・プレヴェールと静止したイメージ

編者/執筆者/訳者について――:

マリアンヌ・シモン=及川(Marianne Simon-Oikawa) 1969年、マルセイユ生まれ。東京大学大学院准教授。専攻、フランスと日本におけるテクストとイメージの関係。編著に『絵を書く』(水声社、2012)などがある。

三浦篤(みうらあつし) 1957年、島根県生まれ。東京大学大学院教授。専攻、西洋近代美術史。
エレーヌ・カンペニョール=カテル(Hélène Campaignolle-Catel) 1972年生まれ。CNRS研究員。エクリチュールとその媒体、およびイメージの関係を研究。
ガエル・テヴァル(Gaëlle Théval) 1980年生まれ。パリ第3大学「現代性のエクリチュール(THALIM)」研究所研究員。専攻、現代詩。
鈴木雅雄(すずきまさお) 1962年、東京生まれ。早稲田大学教授。専攻、シュルレアリスム。
谷口円香(たにぐちまどか) 1979年、滋賀県生まれ。東京大学大学院博士課程単位取得退学。専攻、フランス近代詩。
セルジュ・リナレス(Serge Linarès) 1968年生まれ。ヴェルサイユ大学教授。専攻、ジャン・コクトー、およびフランス20世紀文学。
千葉文夫(ちばふみお) 1949年、北海道生まれ。早稲田大学教授。専攻、20世紀フランス文学、およびイメージ研究。
塚本昌則(つかもとまさのり) 1959年、秋田県生まれ。東京大学大学院教授。専攻、フランス近代文学。
キャロル・オルエ(Carole Aurouet) 1973年生まれ。パリ・エスト大学准教授。専攻、プレヴェール、およびフランス20世紀文学。

鈴木隆美(すずきたかみ) 1976年、東京生まれ。福岡大学准教授。専攻、19、20世紀フランス文学、比較文学。
畠山達(はたけやまとおる) 1975年、シンガポール生まれ。明治学院大学准教授。専攻、ボードレールの詩学、フランス教育史。

関連書:
絵を書く マリアンヌ・シモン=及川編 4000円+税

 

6月新刊:ジョイスをめぐる冒険

2015年 6月 23日

こじま002
ジョイスをめぐる冒険
夏目博明(著)

判型:A5判上製
頁数:307頁
定価:4000円+税
ISBN:978−4−8010−0102−2 C0090 好評発売中!
装幀者:齊藤久美子


内容紹介:
ジョイスに挑む。
アリュージョンを手がかりにテクストの成り立ちを探り、仕組まれたトリックをかいくぐり、『ユリシーズ』を読みとく。さまざまな批評理論を駆使し、アイルランドの歴史、経済にも論及する。ジョイス研究の新たな方位をさぐる試み。


目次:
序論 ジョイス・インダストリーの流れのなかで
第1章 『ユリシーズ』を読む
1  分立の調べ
2  ブルームの受難の構図——テクスト世界からの脅威
3  内的アリュージョン―—テクスト形成の原理
4 《ナウシカア》をめぐる全体と部分
5  海辺の娘ガーティ
6 《イタケ》の語りを語る語り
7 『ユリシーズ』批評の未来
第2章 ジョイスと批評理論
     1 ジェイムズ・ジョイスにおける「主体」の問題
     2 ディコンストラクション批評——デリダのジョイス、ジョイスのデリダ
     3『ユリシーズ』のなかの読者
     4『ユリシーズ』批評(1)——モリーの出自
     5『ユリシーズ』批評(2)——モリー像の変遷
     6 ふしだらな女が精神分析を受けると―—ジョイスとジェンダー
7 1904年ダブリン物語——モリーをめぐる物語
8  モダニズムという制度
9 『フィネガンズ・ウェイク』のナゾ謎々
第3章 ジョイスとアイルランド
     1 ヒベルニアとしてのアイルランド―—ガーティと「市民」 
     2 「姉妹」におけるタイトルと語り
     3「レースの後で」の時代と背景
     4 死者が近づく夜——ケルト文化から読む「土」
     5 ジョイスのダブリン
     6 レオポルド・ブルームノ経済事情

解題  結城英雄+吉川信+山田久美子
あとがき  夏目康子

著者について:
夏目博明(なつめひろあき) 1954年生まれ。2011年没す。一橋大学法学部卒業、筑波大学大学院博士課程イギリス文学専攻満期退学。青山学院大学名誉教授。専攻、ジェイムズ・ジョイス、アイリッシュ・アメリカン、批評理論。主な著書に、『文学の受容』(共著、研究社、1985)、『辺境のマイノリティ』(共著、英宝社、2002)、『亡霊のイギリス文学』(共著、国文社、2012)、主な訳書に、A・J・マッケナ『暴力と差異』(法政大学出版局、1997)、A・N・ファーグノリ他『ジェイムズ・ジョイス事典』(共訳、松柏社、1997)などがある。

関連書:
『ユリシーズ』と我ら―—日常生活の芸術/デクラン・カイバート著/坂内太訳/5000円+税
ジョイスとめぐるオペラ劇場/宮田恭子著/4000円+税

 

6月新刊:ジョイスとめぐるオペラ劇場《水声文庫》

2015年 6月 23日

こじま003
ジョイスとめぐるオペラ劇場
宮田恭子(著)

判型:四六判上製
頁数:333頁
定価:4000円+税
ISBN:978−4−8010−0100−8 C0090 好評発売中!
装幀者: 宗利淳一

内容紹介:
ジョイスにとって《歌に高められた人間の声は、最高にして最も清らかな音楽の顕現》であった。テノールの歌手としても存在感をしめしたジョイスがいかにオペラの歌詞をわがものとし、『ユリシーズ』『フィネガンズ・ウェイク』に反映させたか。
14のオペラを通してジョイスを考え、ジョイスを通してオペラを語る。

目次:
まえがき
第1部 ジョイスとオペラ
第2部 ジョイスと個々のオペラ作品
1 モンテヴェルディ『オルフェオ』 葬送の歌
2 モンテヴェルディ『ポッペアの戴冠』 愛欲の見本図
3 モーツァルト『ドン・ジョヴァンニ』 カタログの歌
4 モーツァルト『魔笛』 フリーメイソン
5 ベッリーニ『夢遊病の娘』 「すべては失われ」
6 ベッリーニ『ノルマ』 「清らかな女神」
7 ドニゼッティ『愛の妙薬』 媚薬の効用
8 ドニゼッティ『ランメルモールのルチア』 狂乱の娘
9 フロトー『マルタ』 「夢のように」
10 ヴェルディ『ナブッコ』 祖国愛
11 ヴェルディ『椿姫』 再生への願望
12 ワグナー『トリスタンとイゾルデ』 愛の死
13 プッチーニ『トゥーランドット』 謎かけ花嫁
14 シュトラウス『サロメ』 七つのベールの踊り


テキスト・主要参考文献
あとがき


著者について:
宮田恭子(みやたきょうこ) 1934年、石川県に生まれる。東京大学大学院人文科学研究科比較文学比較文化修士課程修了。元玉川大学教授。主な著書に『ウルフの部屋』(1992)、『ジョイスと中世文化』(2009)、『ルチア・ジョイスを求めて』(2011、いずれも、みすず書房)、おもな訳書にS・ジョイス『兄の番人——若き日のジェイムズ・ジョイス』(1993)、R・エルマン『ジェイムズ・ジョイス伝1・2』(1996、いずれも、みすず書房)、J・ジョイス『抄訳 フィネガンズ・ウェイク』(2004、集英社)等がある。

関連書:
『ユリシーズ』と我ら―—日常生活の芸術/デクラン・カイバート著/坂内太訳/5000円+税
ジョイスをめぐる冒険/夏目博明著/4000円+税