トークイヴェント:誰も知らないシュルレアリスム

2009年 12月 15日

《シュルレアリスムの25時》刊行記念
トークイベントのお知らせ


誰も知らないシュルレアリスム


野崎 歓(フランス文学者)×鈴木雅雄(シュルレアリスム研究者)


20世紀の思想や芸術に大きな痕跡を残し、いまもなお
現代文化を挑発し続けている、シュルレアリスムとその運動。
ブルトンやダリ、マグリットの作品は、日本でもよく知られています。
しかし、彼らの表現だけがシュルレアリスムではありません!
これまで注目されることのなかったユニークな画家や詩人・
写真家たちを紹介しながら、「いま」「わたしたちにとって」の
シュルレアリスムとは何かをめぐって、第一線で活躍する
おふたりの論者に縦横無尽に語っていただきます。

2010年2月13日(土) 18:30開場/19:00開演
ジュンク堂池袋店4Fカフェ 定員40名
入場料 1000円(1ドリンク付)
くわしくはこちらをクリック→(


講師プロフィール:

●野崎 歓
1959年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科准教授、フランス文学者。
主な著書に『赤ちゃん教育』(青土社、講談社エッセイ賞)、
『われわれはみな外国人である』(五柳書院)など、
訳書にトゥーサン『浴室』、ソレルス『秘密』などがある。

●鈴木雅雄
1962年生まれ。早稲田大学文学学術院教授、シュルレアリスム研究者。
主な著書に『シュルレアリスム、あるいは痙攣する複数性』(平凡社)など、
訳書にダリ『ミレー《晩鐘》の悲劇的神話』などがある。


鈴木雅雄

ゲラシム・ルカ ノン=オイディプスの戦略

四六判上製256頁/定価2500円+税
978-4-89176-761-7  C0398
装幀=宗利淳一+田中奈緒子



齊藤哲也

ヴィクトル・ブローネル 燐光するイメージ

四六判上製総384頁(別丁図版128頁)/定価3500円+税
978-4-89176-762-4  C0371
装幀=宗利淳一+田中奈緒子

 

12月の新刊『煙滅』

2009年 12月 15日

e78599e6bb85e382abe38390e383bc-e585a5e7a8bf3ョルュ・ぺレック/秀一郎訳

煙  滅

六判上製376頁/価3200円+
ISBN978-4-89176-750-1   C0097    12月末1月5日頃
装幀=宗利淳一+田中奈緒子





この世から《
段がえた!?


た男とた《文》をめぐる、
代未聞のステ
原文は「」抜され、翻訳不可能とわれた
ぺレックの代表作、ついに》抜きで刊行!


菊地
孔氏






ジョルジュ・ぺレック『煙滅』刊行記念
トークイベントのお知らせ

《ウリポ》ってなに?——現代フランス文学の楽しみ


◎豊崎由美(ライター)×塩塚秀一郎(フランス文学者、『煙滅』の訳者)


20世紀フランスで産声を上げた、奇妙キテレツな文学集団がいた……。
そのグループの名は《ウリポ》。メンバーはジョルジュ・ペレックや
レーモン・クノー、イタロ・カルヴィーノなどなど。
1つのエピソードを99通りの文体で書いたり、
「E」をまったく使わずに小説を書いたり。これらの言語遊戯によって、
彼らは文学のどんな可能性を引き出したのか?

数々の海外文学を読破し、かつてない切り口によって
書評の異種格闘技戦を繰りひろげている豊崎由美氏と、
翻訳不可能といわれたジョルジュ・ぺレックの『煙滅』を
《い》段抜きで訳すという翻訳のアクロバットを見せた塩塚秀一郎氏。
お二人に、《ウリポ》とはなにか、またペレック作品をはじめとする、
さまざまな文学表現の魅力について、たっぷりと語っていただきます。

2010年1月16日(土)  18:30開場/19:00開演
ジュンク堂池袋店4Fカフェ 定員40名
入場料 1000円(1ドリンク付)
くわしくはこちらをクリック→(


講師プロフィール:

●豊崎由美(とよざき・ゆみ)
1961年生まれ。ライター、書評家。主な著書に『そんなに読んで、どうするの?』、
『どれだけ読めば、気がすむの?』、『文学賞メッタ斬り!』(共著)など。

●塩塚秀一郎(しおつか・しゅういちろう)
1970年生まれ。パリ第三大学文学博士。現在早稲田大学理工学術院准教授。
主な訳書に、ジョルジュ・ペレック『さまざまな空間』、『美術愛好家の陳列室』、
レーモン・クノー『あなたまかせのお話』など。

 

ふたたびアナイス・ニン関連の情報(編集部So)

2009年 12月 15日

最近まで知らないでいたのですが、
『映画芸術』ブログにとても興味深いインタビュー記事が出ていました。
映像作家の出光真子さんが1960年代にアメリカ西海岸で出会った
アナイス・ニンやヘンリー・ミラーのことを語り、最近読んだ
『人工の冬』(パリ版)についても言及していらっしゃいます。
ご存じのかたも多いと思いますが、長年、主婦やジェンダーの視点で
ビデオアート作品を撮り続け、国際的な評価を得てきた女性の
貴重な証言です。ぜひ、ご一読ください。こちらをクリック→(

そしていよいよ今週、12月18日発売の『フィガロジャポン』に、
「いま再びまぶしい、アナイス・ニンの人生」(4P)が掲載されます。
メインの特集は、「ノルマンディとブルゴーニュの旅時間 フランスの田舎町。」
ということですが、ニン小特集も読み応え見応え充分ですので、
ぜひご覧になってみてください。次号予告はこちら→(

それから、つい紹介し忘れていましたが、
去る10月18日(日曜)付『日本経済新聞』の読書欄に、
「ニン自身の人生を投影した退廃的で美しい世界が広がる」との
簡潔で的確な『人工の冬』評が掲載されていました。
e382a2e3838ae382a4e382b9e383bbe3838be383b3e58699e79c9fb



















『水声通信』第31号(アナイス・ニン特集→)裏表紙より
(C)The Anais Nin Trust  禁無断転載

 

12月の新刊『メフィス』

2009年 12月 14日

mephis_coverフロラ・トリスタン/加藤節子訳

メフィス

四六判上製392頁/定価3800円+税
ISBN978-4-89176-758-7  C0097 12月末1月5日頃


《僕の唯一の復讐は……
プロレタリアを、女性を解放することだ……》



ユートピア思想の洗礼を受けたフェミニストにして、
ジョルジュ・サンドのライバル。ブルトンによって、
「フンラス・ロマン主義の心臓部」とまで称された女性作家の
幻の《プロレタリア小説》が世紀をこえて甦る。本邦初訳!

「ジャン・バルジャン」と「共産党宣言」に先駆する《新しい人間》メフィスと、
その恋人マレキータ。19世紀パリの華麗な貴族社会を舞台に、
漁夫の息子と歌手の娘による波乱に充ちた《恋と革命》のゆくえ。

 

12月13日付 日本経済新聞朝刊

2009年 12月 14日

nikkei2011年まで足かけ3年にわたって刊行予定の、
小社30周年記念出版《シュルレリスムの25時》全10巻。

初回配本の2冊が刊行され、各方面で話題となっていますが、
先週の東京新聞につづいて、日本経済新聞の
「フロントライン」でも紹介されました(左の画像)。
文化部ご担当者様、ありがとうございます!

lucacover第1回配本のゲラシム・ルカは、
ジル・ドゥルーズが「もっとも偉大な詩人のひとり」と呼び、
ドゥルーズ=ガタリの『アンチ=オイディプス』の
発想の原点ともなった詩人です。
堀江敏幸氏の『おぱらばん』で
その名を知ったかたも少なくないかもしれません。
本書の付録には、「吃音の詩人」と呼ばれた
彼の貴重な本邦初訳の詩篇も掲載されています。
「吃音の詩」とはどのようなものか、ぜひ本書で確認してみてください!

braunercoverいっぽう、ヴィクトル・ブローネルは、
古くから澁澤龍彦ら具眼の士の注目を浴びていながら、
日本では顧みられることの少なかった画家。
(6月には、TV東京『開運! なんでも鑑定団』で
紹介されたのでご存知のかたも多いのでは?)
彼は、ある事件によって片目を失ったことで
しばしば「予言的な画家」と称されてきましたが、
果たして本当にそうなのか?
気鋭の著者が、ブローネルの実像に肉薄します。
こちらは付録として130点以上の図版を別丁で掲載し、
ブローネルの画業を手軽に通覧できるスタンダード・ワークともなっています。

いま、来年1月末日の発売に向けて、
第2回配本『クロード・カーアン』の編集作業も
佳境入ってきました。世界的にも類を見ないこの企画、
どうかますますのご支援をお願いいたします!


鈴木雅雄

ゲラシム・ルカ ノン=オイディプスの戦略

四六判上製256頁/定価2500円+税
978-4-89176-761-7  C0398
装幀=宗利淳一+田中奈緒子



齊藤哲也

ヴィクトル・ブローネル 燐光するイメージ

四六判上製総384頁(別丁図版128頁)/定価3500円+税
978-4-89176-762-4  C0371
装幀=宗利淳一+田中奈緒子

 

パロディマンガ/マンガのパロディ小説

2009年 12月 10日

manga10dreams10月に刊行された
長谷邦夫著『マンガ家夢十夜』 をめぐって、
徳島県の北島町立図書館・創世ホールが発信している
『文化ジャーナル』12月号
に、
著者インタビューが掲載されました。
聞き手は図書館長でもある小西昌幸さん。
文字通り「夢」にあふれたこの作品集について、
おふたりがさまざな逸話や裏話を語りあっています。
→リンクはこちら(

また、マンガへの偏愛ぶりを周到な語り口で読ませる、
マンガマニアは必見——というかすでにご存じ——の
《漫棚通信 ブログ版》でも、「虚々実々」と題して、
本書のレヴュウが掲載されました。
→リンクはこちら(

小西さん、漫棚通信さん、
前著『マンガ編集者狂笑録』につづいてありがとうございます!
かくして電子メディアも席巻する
長谷邦夫の
奇想天外なマンガ・パロディ小説、
『マンガ家夢十夜』は全国の書店で絶賛発売中です。


長谷邦夫

マンガ家夢十夜

四六判272頁/定価2500円+税
978-4-89176-744-0 C0093





さて、パロディマンガというジャンルを切り開いた
長谷邦夫さんのパロディ作品の(ほぼ)すべてを1冊に集成した、
全916ページにおよぶ金字塔、
『パロディ漫画大全』もロング・ヒット中です。
本書には、おもとめやすい普及版のほかに、
長谷さんによる美麗な肉筆彩色1コマ漫画が一葉挿入された、
限定65部の超豪華特装版もあります
(1コマ漫画の絵柄はすべて異なります)。

parody左の画像のとおり、
総天然色もじつに美しく、著者の落款、限定番号、
クロス装にしてクロス函入り。

定価は30,000円と高価かもしれませんが、
マニアの心をくすぐる1点モノの
お宝となることまちがいなし。
在庫僅少ですので、ぜひともいまのうちにお求めください!




長谷邦夫

パロディ漫画大全

A5判上製916頁/定価4000円+税
978-4-89176-467-8  C0079


長谷邦夫

パロディ漫画大全(特装版)

限定65部 A5判クロス装クロス函入916頁/定価30000円+税
著者肉筆彩色1コマ漫画入
978-4-89176-474-0  C0079
造本:戸田ツトム

 

在庫僅少本フェア開催中!(啓文堂書店 吉祥寺店)

2009年 12月 9日

ts3a0381先日もお伝えした通り、
東京都武蔵野市の 啓文堂書店 吉祥寺店 で、
《水声社 在庫僅少本フェア》を開催中です!

近く創立30周年を迎える弊社刊行物のうち、
在庫が少ない87点を一挙に展示販売中。
いまでは入手困難な逸品も順次補充予定です。
近郊にお住まいの方は、ぜひ足をお運びください。
期間は来年1月31日(土)まで。お早めに!


啓文堂書店 吉祥寺店
武蔵野市吉祥寺南町2-1-25(ユザワヤ吉祥寺店B1F)
電話——0422-79-5070
営業時間——10:00〜22:30

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書店のかたが、すてきなパネルを
つくってくださいました!

 

12月6日付 東京新聞朝刊

2009年 12月 8日

image去る12月6日(日)付の東京新聞書評面で、小社
30周年記念出版《シュルレアリスムの25時》全10巻と、
10月刊のデ・フォレ『おしゃべり/子供部屋』が紹介されました。
2ページの紙面にもかかわらず、小社刊行物を複数とりあげていただき、
東京新聞ご担当者さま、ありがとうございます!

いずれの本も各書店・ネット書店で好評発売中です。

 

12月の新刊『ロラン・バルト 最後の風景』

2009年 12月 8日

barthes_coverジャン=ピエール・リシャール/芳川泰久・堀千晶訳

ロラン・バルト 最後の風景

四六判上製208頁  定価2000円+税
ISBN978-4-89176-756-3  C0098  12月20日頃発売!





バルト、この多幸的存在


波状模様(モアレ)、きらめくもの、ニュアンスといった、
バルトが愛したモチーフのあいだを軽やかに飛翔し、
「変容の思想家」の実像に迫る。
「テーマ批評」の第一人者による、ロラン・バルト入門書。

 

在庫僅少本フェア開催!(啓文堂書店 吉祥寺店)

2009年 12月 7日

あす、12月8日(火)から来年1月31日(土)まで、
東京都武蔵野市の 啓文堂書店 吉祥寺店 にて、
《水声社 在庫僅少本フェア》が開催されます!
弊社刊行物のうち、在庫が少ない87点を一挙に集めて、
展示販売いたします。なかには入手困難な逸品も!?
近郊にお住まいの方は、ぜひ足をお運びください!


啓文堂書店 吉祥寺店
武蔵野市吉祥寺南町2-1-25(ユサワヤ吉祥寺店B1F)
電話——0422-79-5070
営業時間——10:00〜22:30

 

サンヤツ

2009年 12月 7日

2009年12月04日付 読売新聞、朝刊1面
(画像をクリックすると拡大します)
sanyatsu

 

水声通信*第32号

2009年 12月 2日

no32『水声通信』第32号

A5判並製160頁/定価=2000円+税/装幀=宗利淳一+田中奈緒子
ISBN978-4-89176-752-5 C0090  12月10日頃発売!

特集=ジャン=ピエール・リシャール
リシャール「ロラン・バルト 最後の風景」
(芳川泰久+堀千晶訳)*全訳は小社より近刊予定
リシャール「幸福な身体 流れるもの」(山崎敦訳)ほか



*下の目次はクリックで拡大します。

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12月の新刊『となり町の寒山』

2009年 12月 2日

kanzan_cover菅沼荘二郎

となり町の寒山

A5判並製150頁 定価=2000円+税
ISBN 978-4-89176-746-4  C0098  12月3日頃発売!

ニューヨークから、となり町へ
原始美術から、現代アートへ


アトリエを主宰する著者が、
現代美術を禅の目で見て、禅の心で描き出す——。
寒山拾得のように何にもとらわれず、この行き場のない社会を考察し、
デュシャン、鉄斉、ヘンリー・ミラー、ニューヨーク滞在中に出会った
A・ステットナー(弊社刊『パラダイスの乞食たち』著者)ら、
さまざまなアーティストに思いをいたすエッセイ集。

*おおらかな境地の絵画作品8葉収録。

 

12月の新刊『世紀末の白い爆弾』

2009年 11月 30日

whitebomb中畑寛之

世紀末の白い爆弾

ステファヌ・マラルメの書物と演劇, そして行動

A5判上製672頁 定価=8000円+税
ISBN 978-4-89176-748-8  C0098  12月2日頃発売!




書くという行為=文学的爆弾


至高の〈書物〉を孤独に試みる言葉の錬金術師マラルメ。
19世紀末のフランス社会を騒然とさせた
アナーキストたちの爆弾テロの閃光のなかで
詩人マラルメが選んだ文学的〈行動〉の意味/戦略とは?
気鋭の研究者が新たな視点で読み解く画期的考察。

 

シュルレアリスムの25時/第1回配本

2009年 11月 19日

水声社 創立30周年記念出版

シュルレアリスムの25時

11月末日、第1回配本2冊同時刊行!





lucacover鈴木雅雄

ゲラシム・ルカ ノン=オイディプスの戦略

四六判上製256頁/定価2500円+税
978-4-89176-761-7  C0398
装幀=宗利淳一+田中奈緒子


もっとも偉大な詩人の一人 ——ジル・ドゥルーズ





つっかえ、切り裂き、撹乱する、驚異の「吃音」言語!

◎本邦初訳の理論的テクストや詩作品を収録!





braunercover齊藤哲也

ヴィクトル・ブローネル 燐光するイメージ

四六判上製総384頁(別丁図版128頁)/定価3500円+税
978-4-89176-762-4  C0371
装幀=宗利淳一+田中奈緒子


かれの絵は武装している ——アンドレ・ブルトン





深い闇の中で、鈍い光を放つ《魔術的画家》の全貌。

◎日本初のモノグラフ——掲載図版160点以上!

 

水声社 創立30周年出版第1弾《シュルレアリスムの25時》

2009年 11月 19日

水声社 創立30周年記念出版

シュルレアリスムの25時    全10巻

11月末日第1回配本、2冊同時刊行!


「私たちはシュルレアリスムについて、語るべきどれほどのテーマが眠っているか、
いま、はじめて本当に見渡すことができる。」(鈴木雅雄/早稲田大学教授)



sur006《本シリーズの特色》

◎いま、シュルレアリスムを考えるにあたって重要な、
そしてとりわけ日本ではほとんど知られていない
詩人・小説家・画家・写真家10人を選び、全10巻に収録する。

◎ 第一線で活躍する気鋭のシュルレアリスム研究者による書き下ろし。

◎ 各巻に、充実した年譜と書誌を付す。

◎付録として、各作家の本邦初訳のテクストを収録し、
画家・写真家の場合には、図版を豊富に収める。

◎ はじめてシュルレアリスムに触れる方々から、従来のシュルレアリスム像を覆したい研究者まで、
シュルレアリスムとアヴァンギャルド芸術に関心を寄せる、すべての人たちのための新たな入門書。

四六判上製9ポ1段組/各巻平均250頁/予価2500円(+消費税)
隔月に1冊刊行、2011年3月に全巻完結の予定





《全巻ラインナップ》



第1回配本『ゲラシム・ルカ』、『ヴィクトル・ブローネル』刊行迫る!


◎ジョゼフ・シマ 無音の光(谷口亜沙子)

Joseph Sima(1891-1971)  ヤロムニェシュ(ボヘミア)に生まれる。
画家。具象と抽象のあわいを浮遊する八十年の生涯。プラハ時代に始まり、
ブルトン批判を旗幟鮮明にした《大いなる賭け》の画家として、
さらに戦後の沈黙期を経て、一切が溶けあう光の表現へと到達するその歩みは、
「ただひとつの世界」をこの現世に映し出すことだったのか?
境界を生きた瞑想の画家の全貌が浮上する。



◎クロード・カーアン 鏡のなかのあなた(永井敦子)

Claude Cahun(1894-1954)  ナント(フランス)に生まれる。
写真家、作家、思想家。女でもなく男でもない、〈複数形の単数〉クロード・カーアン。
仮面や鏡を使って偽装したセルフポートレートによってジェンダー・
アイデンティティを問い、クイア的視点からもアプローチされている
特異なシュルレアリスト。一九八〇年代後半に再発見され、
一躍世界的な評価をえたその実像に迫る。



◎マクシム・アレクサンドル  夢の可能性、回心の不可能性(鈴木雅雄)

Maxime Alexandre(1899-1976)  ヴォルフィスハイム(アルザス)に生まれる。
詩人、批評家。ドイツ占領下のアルザスという出生から、
すでに宿命づけられたかのように、シュルレアリスムと神という対立する
二つの世界に引き裂かれながら、分裂するアイデンティティの乗り越えを
はかろうとした詩人の生涯を追うとともに、思想史の未来を射程に入れて、
シュルレアリスムはどのように可能なのかを考察する。



◎ルネ・クルヴェル  アンチ・オイディプス・シンプレックスの転生(鈴木大悟)

René Crevel(1900-1935)  パリ(フランス)に生まれる。
小説家。典型的なプチ・ブル、サロンの常連、同性愛者、結核患者、コミュニスト……と、
矛盾に満ちた生を駆け抜けた異端のシュルレアリストにして絶対的自由を渇望する
生粋のロマンティスト。一切の偽善と教条主義を拒んで、かつての仲間とも
敵対するに至ったその生涯と作品を、さまざまな角度から「弁証法」的に照射する。



◎ヴィクトル・ブローネル  燐光するイメージ(齊藤哲也) 第1回配本

Victor Brauner(1903-1966)  ピヤトラ・ニャムツ(ルーマニア)に生まれる。
画家。「ひとはいかにしてシュルレアリストになるのか?」
——マルクス主義の隆盛から第二次世界大戦にいたる激動の時代に、
一貫してシュルレアリスムと向き合い続けた〈魔術的画家〉。
日本でも澁澤龍彦らの賞讃を浴びながら、いまもなお深い闇のなかで
鈍い光を放ち続けるその足跡を丹念に追う果敢な試み。



◎ロジェ・ジルベール=ルコント  虚無へ誘う風(谷 昌親)

Roger Gilbert-Lecomte(1907-1943)  レンヌ(フランス)に生まれる。
詩人。生を壊し、そして死を導きいれること。「不完全な生」を
より完全なものにするため、「生誕以前の世界」=「虚無」へ向けて詩作を
続けること。アヘン中毒、東洋思想への傾倒、そしてルネ・ドーマルらと
《大いなる賭け》グループを組織し、ブルトンらと対抗するという
異端のシュルレアリスム詩人のスキャンダラスな生涯を多角的に追う。



◎ヴォルフガング・パーレン  幻視する横断者(齊藤哲也)

Wolfgang Paalen(1907-1959)  ウィーン(オーストリア)に生まれる。
画家、思想家。「当代まれに見る百科全書的知性」とブルトンによって讃えられる。
パリでシュルレアリスムに身を投じたのち、第二次世界大戦の亡命地メキシコで、
彼がまなざしを向けたのは、アメリカ・インディアンだった——。
多岐にわたるその活動を横断しながら、具象/抽象でのみとらえられる
既存の美術史を逆照射する。



◎ゲラシム・ルカ  ノン=オイディプスの戦略(鈴木雅雄) 第1回配本

Gherasim Luca(1913-1994)  ブカレスト(ルーマニア)に生まれる。
詩人。ドゥルーズに「もっとも重要な詩人のひとり」と評され、
その「ノン=オイディプス」という概念が「アンチ=オイディプス」の
原型になったとも言われる、この「吃音」の詩人が、いかにして
シュルレアリスムを作りかえたのかを読みときながら、
ヨーロッパ・アヴァンギャルドの歴史そのものを書き替える。



◎ジョルジュ・エナン  追放者の取り分(中田健太郎)

Georges Henein (1914-1973)    カイロ(エジプト)に生まれる。
詩人、批評家、ジャーナリスト。国際性と地域性、普遍性と国家、追放者と土地。
これらの間の葛藤を身をもって体験し、戦後の詩と言論の可能性を独自に示しつつ、
エジプトにおけるアヴァンギャルドとシュルレアリスムの展開に
決定的な役割を果たした彼の作品と生涯を追う。



◎ジャン=ピエール・デュプレー  黒い太陽(星埜守之)

Jean-Pierre Duprey(1930-1959)  ルーアン(フランス)に生まれる。
詩人、彫刻家。シュルレアリスムの言語操作を一挙に書き替えんとする
撹乱的で驚異的な作品を残し、二十九歳で自ら命を絶った「最後の呪われた詩人」。
1940〜50年代の、戦後シュルレアリスムの動向を概観しつつ、
わずかに残された作品と、その知られざる生涯を辿る。

 

編集部から(編集部 So)

2009年 11月 19日

最近、小社刊行物の書評がいろいろな媒体で書評/紹介されるケースが
増えてきました。担当編集者としては新刊が書店に平積みにされ、
実際に本が売れて読者の手元に届くことがいちばん嬉しいのですが、
ちゃんと書評で取り上げられたり、口コミ等で評判になったりすることにも
大きな喜びを感じます。
そういった意味で、『人工の冬』(パリ版)の刊行、『水声通信』31号での特集と、
このところアナイス・ニンに力を入れてきた私のもとに、
女性ファッション誌の《フィガロ・ジャポン》が彼女の小特集をやりたいと
取材協力を申し入れてきたことは、大変嬉しいニュースでした。
12月20日発売号に掲載される予定ですが、これを機に若い女性層にももっと
アナイス・ニンのことを知ってもらい、彼女の読者が増えることを願ってやみません。
さて、その《フィガロ・ジャポン》誌の11月20日号(11月5日発売)に、
短いながらも的を射た『人工の冬』の書評が出ましたので、紹介しておきます。

“性愛文学”の形を取り、人に潜む意識の行方を描いたアナイス・ニンの第一小説集が、
完全な形で、初めて日本でも読めることになった。


また、夕刊紙の日刊ゲンダイ(11月16日号)にも、
「女性作家による70年前の性愛小説集」として取り上げられました。


e4babae5b7a5e381aee586acアナイス・ニン/矢口裕子訳

『人工の冬』

【パリ版オリジナル】
四六判上製328頁/定価=2800円+税
ISBN978-4-89176-735-8  好評発売中!


異端の愛こそ美しい。

バイセクシュアルな三角関係を濃密に描く「ジューナ」
父と娘のインセストを赤裸々に描く「リリス」
告白する女たちと精神分析医の物語「声」

アメリカで発禁となっていた先駆的な性愛小説三篇が
原形のまま70年ぶりに復活。




『人工の冬』と同じく9月に刊行したピエール・ロチの『倦怠の華』も、
意外な媒体で取り上げられました。
早川書房の専門誌《SFマガジン》12月号(10月25日発売)の書評欄で、
SF研究家の牧眞司氏が、

「語られているエピソードは、異国の景観や奇習を綴った紀行あり、
深山に竜を望む幻想あり、ちょっと怪しげな思索あり、幼いころの瑞々しい追想あり、
『千夜一夜物語』ふうの創作ありと、じつに多彩で楽しい。……」


と絶讃され、これまた嬉しい驚きでした。
ピエール・ロチ関連の本も今後刊行していくつもりでいますので、乞うご期待!


e580a6e680a0e381aee88fafピエール・ロチ/遠藤文彦訳

『倦怠の華』

四六判上製288頁 定価=2800円+税
ISBN978-4-89176-741-9  好評発売中!



滑稽で奇抜な話の花束

19世紀から20世紀にかけて
フランス海軍士官として世界中を巡航した
異色作家ロチが変幻自在な対話形式で繰り広げる,
奇妙きてれつな回想/夢/紀行/小話の数々。
ユニークな長文解説を付した本邦初訳作品。

 

11月の新刊

2009年 11月 6日

ekkyo土屋勝彦 編

越境する文学

A5判上製312頁/定価4500円+税
978-4-89176-743-3 C0090  11月11頃発売!

現代文学は
《世界》と、
どう切り結ぶのか?


アフリカ、ロシア、南米、ヨーロッパ、そして日本。
国家の境域を突破することで《複数性》を獲得した、
移民/亡命者たちの文化表現とその実践をめぐる、
アクチュアルな共同研究の成果。

執筆者——土屋勝彦、管啓次郎、沼野充義、西成彦、
田中敬子、L・フェーダーマイアー、山本明代、谷口幸代

多和田葉子、デビット・ゾペティ、アーサー・ビナード、
毛丹青ら、多言語作家によるフォーラムの模様を完全収録!

 

10月の新刊

2009年 10月 26日

kiki_cover桑野隆

危機の時代のポリフォニー——ベンヤミン、バフチン、メイエルホリド

四六判上製325頁/定価3000円+税
978-4-89176-745-7 C0098  好評発売中!


ロシア・アヴァンギャルドの輝き




1920年〜30年代という《危機の時代》にあって,
鮮やかな光芒をはなったベンヤミン,バフチン,
メイエルホリド,そしてロシア・アヴァンギャルド運動。
ファシズムとスターリニズムに圧殺されたその営為に秘められた
可能性の核心に迫る。









realism_cover乗松亨平

リアリズムの条件——ロシア近代文学の成立と植民地表象

A5判344頁/定価4000円+税
978-4-89176-747-1 C0098  好評発売中!


《現実》という名の亡霊




19世紀ロシア・リアリズム文学の成立をその植民地表象、
とりわけカフカス地方のそれをとおして分析しつつ、
《テクスト》と《現実》との相関の現在に介入を試み、
ポストコロニアル批評の彼方をめざす気鋭の野心作。









manga10dreams長谷邦夫

マンガ家夢十夜

四六判272頁/定価2500円+税
978-4-89176-744-0 C0093  10月末日発売!


小説はマンガより奇なり!?




10人の天才マンガ家たちによる
《夢》と《妄想》の大競演!
奇想天外・抱腹絶倒・ハチャメチャ過多の
フィクティヴ・フィクション!
パロディ・マンガの先駆者によるマンガ・パロディ小説、
入魂の書き下ろし作品集。









chehov_cover中村邦生

チェーホフの夜

四六判188頁/定価1800円+税
978-4-89176-749-5 C0093  11月初旬発売!


懐かしく,おかしく——不穏な空気が動き出す。
虚実の陰影を精妙な文体で刻む短篇集。




[収録作品]
「冗談関係のメモリアル」(『文学界』新人賞受賞作)
「週末の仕事」
「チェーホフの夜」

 

書評『パラダイスの乞食たち』

2009年 9月 28日

最近相次いで、7月刊『パラダイスの乞食たち』の
書評がでましたので、まとめて紹介しておきます。(編集部:So)

→横尾忠則氏(朝日新聞、09年9月28日)
「つまり芸術という悪魔に取り付かれていない著者にいらつくのである。
確かに文章はうまく、ミラーが絶讃するように詩人の才能かもしれない……」

→山崎まどか氏(本の雑誌、09年10月号)
「パリを舞台にした私小説らしい華やかさとボヘミアン・ライフは魅力的である」

→臼田紘氏(水声通信、09年7/8月合併号)
「この作品のなかには、ステットナーの作家として、詩人としての
魂が生きているようだ。人間観察だけでなく、描写もいい」



paradice_cover2アーヴィング・ステットナー/本田康典+三保子ステットナー訳

『パラダイスの乞食たち』

四六判上製296頁/定価2500円+税
ISBN978-4-89176-734-1  C0097